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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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6



「久々に! 魔物、退治、っすね!」

「ああ。久々で悪かったな」

「いえ、まあ、別に問題ないっすよ……っと! 師匠も色々と忙しい様子だったっすし」


 アンデルク城、そこから山を下りると途中から森になる。山頂に近くなると森の木々が環境的に生育できなくなる……気温か栄養か空気の薄さか、理由はともかく途中からは森ではなくなる。アンデルク城の周囲には森が存在できる余地がない。木々も恐らく植えても成長しないかある程度以上には成長しないのだろう。そういうこともあり森に入るには城からある程度下りなければならない。以外に手間がかかると言う面倒くささだ。

 しかし森に入らないと言うわけにもいかない。アンデルク城は領地をほぼ持たない領民もいない場所。その食糧自給率はゼロ、現在畑を作り耕作を試し食料供給ができるかを確かめているところである。基本的に公也が購入しに出向きそれを空間魔法に入れて持ち込まなければいけない。だがそうしなくともとれる食料がある。このアンデルク山というのは魔物や獣が豊富な場所だ。その獣や魔物を狩り肉を持ち帰ればいい。また森には木々が豊富にある。野草も多い。その中には木の実や食べられる草花もあるだろう。それらを持ってこればいい。

 だがそれも簡単な話ではない。このアンデルク山に存在する獣や魔物はかなり強力で数も多く相手をするのが大変な場所だ。山を登ること自体がかなり難易度が高い場所である。そこにいる魔物や獣の脅威がどれほどのものか。わざわざワイバーンを使わなければいけないほどだ。相応の実力を求められる場所である。そして下りることもまた容易ではない。森を抜けるのにどれだけの実力を必要とするか。公也やヴィローサがいなければ登ったり下りたりするのはかなり厳しい。

 流石にアンデルク城の様々な点で公也の存在を少し頼りすぎな所がある。一応ヴィローサがいれば彼女の手を借りてワイバーンを使い下りることはできると思われるがそれはそれでヴィローサに対する負担は大きくなるし公也がいない時残らざるを得ず不満も増える。せめてもう一人ワイバーンを従えられるものが欲しい。そこでフーマルの実力を高める目的で森に入り魔物や獣を相手に戦わせ鍛えていると言ったところだ。もちろん肉を得るため、森の恵みを回収するためという理由もないわけではないが。

 一応公也は師匠である。そもそもフーマル一人で森に行かせたら流石に生きて帰ってくることはできないだろう。今後のことを考えれば公也でなくヴィローサでもいいのだが、今後公也がいないときにヴィローサに任せることになるのでまだ公也がいる時点でその負担を、というのは少しヴィローサにもフーマルにもよろしくない。まあ慣れさせると言う点では悪くないと思われるが。


「……よし」

「はあ……結構戦ったっすね」


 それなりに時間をかけ公也とフーマルは肉を確保し結構な数の魔物や獣を相手に戦闘能力を鍛えた。もっともこの場にいる魔物や獣を相手に鍛えたとしてもそれが今後に役に立つかはわからないところである。いや、全く役に立たないと言うわけではないと思うが獣や魔物相手の戦いに慣れたとしてもそれが別の魔物や獣を相手に有効かと言われればわからないしこの間のような戦争では対人能力を鍛えなければいけない。集団戦での戦い方も違うし森での戦いと山野での戦い、洞窟での戦いなど場所が違う場合はまたやり方が違ってくるだろう。

 しかし鍛えることは相応に意味がある。筋肉がつく、体力がつく、武器を使うのに慣れる、それだけでも十分と言える。フーマルに実力をつけることが目的であり常勝の戦闘能力を持たせることが目的ではない。


「………………フーマル」

「なんすか?」

「今後俺が外に出て行った際、魔物を相手に戦って肉を得たり、場合によってはワイバーンに乗って街に向かって貰ったりする。かなり負担をかけることになると思うから先に謝っておく」

「あー……まあ、いいっすよ。師匠には世話になってるっすし、十分稼がせてもらってるっすし……」


 なんだかんだでフーマルは公也の恩恵を受けている。鍛えられている点でもそうだしお金という点でも稼ぎは十分なほどにもらっている。普通では経験できないようなことも経験しているし冒険者としてはなんだかんだで結構恵まれている……と思ってもいいだろう。その分いろいろな形で苦労は絶えないが。


「いや、俺がいない場合はヴィラにフーマルの手伝いを任せることになるからな。ヴィラはフーマルに対して当たりが厳しいだろう?」

「あー、確かにそれはあるっすね。でもヴィローサさん、前よりは大分優しくはなったっすよ」

「……まあ、大分落ち着いてはいるな」


 かつてのヴィローサから比べれば現在のヴィローサはかなり性格的に落ち着いている。一応それ自体は以前から、ロムニルやリーリェと出会う頃からそれなりに多少落ち着いていたが、ここアンデルク城に来てからはそれまで以上に落ち着いている。やはりなにが切っ掛けかと言えば、ヴィローサと公也の関係がはっきりしたと言うのもあるだろう。そもそもヴィローサがフーマルを敵視している要因はヴィローサと公也の関係がしっかりとしたものでないときに外部から二人の間に入ってきた異物だから……というのもあるだろう。師匠と弟子という関係もあって少し縁の深い関係になっていると言うの一因だろう。今ではそういった関係を気にせずしっかりと公也とヴィローサの間に結ばれている絆があるので多少近くに関係のない他人がいたところで気にしない、気にならない……まあ、ヴィローサ自身が変わったわけではない。毒を持つ、毒を吐く、毒の妖精であると言う事実には変わりがないため割と辛辣なところは今まで通り。ただ今まで程の敵視をしないと言うだけに過ぎない。

 まあそれでもそれだけでもフーマルにはありがたい話である。一番ヴィローサの当たりが強かったのは彼なのだから。


「なら二人でも大丈夫か?」

「不安は大きいっすけど……まあ、前よりは。それにやるべきことなんすよね?」

「ああ」

「ならやるっすよ」

「……頼む」


 フーマルに頼らざるを得ない、これからもフーマルに掛ける負担は大きくなる。公也としては少しフーマルに対して申し訳なく思う点である。しかし公也自身色々とやりたいこともあるし行きたいところおもある。そのため弟子として従えているフーマルを使ってでも、ヴィローサを残すようなことをしてでもやっていけるようにしなければならない。いずれはもっとアンデルク城に人員を追加しフーマルにも自由を与えたいところではあるが……それは今の所まだ先の話になるだろう。



※フーマルは大分健気なタイプな気がする。女性だったらヒロイン候補では? ヴィローサが辛辣だったのはそういうところが原因……?

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