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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十五章 傾国の魔
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「つまりあなた方は王に呼び出された、と」

「そうなります」

「しかし彼らは……」

「そんなことは言っていない、とでも言っていたか?」

「いえ。そもそも今は話を聞けていない状況で……」

「流石に気絶からは回復していると思うが? 起こしてもいないのか?」

「ああ、えっと、彼らは管轄が違うというか……こちらの権限では手を出せないというか……」

「…………どういうことだ?」

「その、彼らは王に近い貴い方の部下と言いますか、そういう立場なのでこちらから聞き取りができないと……」

「なるほど」


 彼ら兵士が公也たちを連れて行き、話を聞いている……とはいえ、公也はアリルフィーラが王に呼び出されたということしか知らず、アリルフィーラたちも案内されついて行っただけ。そして流石に一人では問題があるからと戻ろうとしたら襲われ、それに対し抵抗したということ……それ以上の物がない。そして公也たちを連れて行った彼らはその兵士たちから話を聞くことができない。通常城の中で起きた事件であるということで両方に対して聞き取りができるのが普通だ。仮に公也たちの意見を押しつぶして責任を押し付けるにしても、彼らから話を聞くことができないということをわざわざ言うことはないだろう。彼らがそんなことをしていないと言った、一方的に襲い掛かってきた、そういう可能性の方が高いのではないか。

 だが彼らが語ったのは自分たちでは手出しできない相手、上位の立場にある物の部下であるという事実である。彼らにとって有利でもない話であるがゆえに事実であるだろうと考えられる内容である。


「……そんな人物が王の命令で妻を呼び出したと?」

「そ、それは……王であれば命じることは不可能ではありませんが……」


 兵士たちもそれ自体に関してはわからない……彼らからすれば王がそんなことをする理由がないし、王がそんなことをするのは現状あり得ないと思っている。なぜなら王は一人の女性に首ったけだからである。他の妃もいない、この国の貴族から妻を娶るようなことも現状しておらず子供がいないままで後継に不安のある状況で動く様子もない、本当に側にいる一人のみを愛しているような状況。それなのに自国でもない他国の、しかも宴に呼び出してきてもらった相手……その同伴者であるとはいえ、他国の人間の関係者相手にいきなり呼び出すようなことは普通は考えられない。アリルフィーラは美人であるが決してあらゆるすべての者を魅了するような絶対的な美人ではない。まあそれでも結構な美人であることは間違いなく、普通なら王や貴族が求めてもおかしくはないかもしれないが……彼女では決してこの国にいる最大の美人を超えることはない。


「……ふむ」


 公也は少し考えている。現時点で公也はこの国の城の中、ある程度情報を把握している。兵士たちに関してもなんとなくだが察している者がある。


「とりあえず……俺たちの扱いはどうなる?」

「どう……なるのでしょう。私にはわかりません。少なくともいきなり投獄、処刑みたいな話はないでしょうが」

「いや、それは普通ない……そうでもないか。仮にも自国の王の住む城での狼藉事だろうからな。もっとも、宴の真っ最中他国から呼んだ王族などの同伴者を相手にそういった大事を行うのは難しいとは思うが。そういえばこちらを誘った王の方に話は?」

「ま、まだです。流石に下手に問題が広がれば国同士の関係に影響が……」

「そうか」


 公也たちを罰することは流石に難しい。いや、そもそも公也たちが問題を起こした側ならばともかく証言は取れていないが公也たちの発言からすればこちらの国が引き金となった問題事である。今回の件で公也たちが知られずに王城の奥の方に入ったとは考えづらい。いくら宴の場がある程度開かれているとはいえ、監視の目はある。その監視を掻い潜り城の奥深く、それもあまり意味のないところに入るのは公也たち側からはメリットがないだろう。まあそんな場所に公也は兵に見つかり止められる前に素早く来ているため、そのあたりに関しては微妙に怪しいところである。

 とはいえ、目撃証言で言えば宴の場にいた王族などからも話は聞くことは不可能ではない。アリルフィーラは目を惹くため彼女が兵士について行ったという証言は聞くことができそうだ。それに公也がその場にいたことに関しては公也を誘った王と最後に公也が話していることもあり証言はできる。やはりアリルフィーラたちだけが連れていかれた、というのは確かなものとして示すことができる。ゆえに罰する、投獄や処刑はあり得ない……だろう、普通は。

 まあ、それでも公也たちが兵士に手を出した、というのは間違っていない。そういう点では公也たちの立場は微妙なところにあるかもしれない。







 そうして公也たちは……なぜか王の前へと連れていかれることとなった。そこにいるのは負うだけではなく兵士や城にいる他の要職、関係者なども。兵士に手を出した公也たちがいるのだからその危険から守るための人員は当然、公也たちの立場上王だけでは話せないことも多い。というか下手をすれば国際問題に発展しかねないこともあるし、リシェイラ辺りが仕入れた情報もあるが公也・アンデールの立場、その存在の意味合い、強さなどもこの地でも知っている人間が他にいるだろうという点。そもそも公也が公也であることを把握しているかはわからないが、公也自体の問題もあれば公也を誘った王とその国との関係もある。近場の国の幾つかを救った事実も含めそのほかの国も動く可能性がある。まあそこまで把握していないかもしれないが、ともかく公也たちに安易な責めを負わすこと、攻撃的な対応をすることは決していいことではない。一応城での問題事を起こしたこともあるが、それはそもそも兵士を気絶させた程度。程度と言っていいか疑問はあるが、そこまで大きなことではない……というと酷いが、例えば要職の人物に手を出したとか、兵士を壊滅させたとかではない。殺すこともしておらず傷もほとんどない状況、どこまで問題としていいのか、責任があるとみるべきなのか。そういう話になってくる。結構色々と面倒くさい状況である。



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