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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十五章 傾国の魔
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7





「結構厄介ですね」

「公也様が傍にいるのに話しかけてくる方が多いですからね……」

「流石に既に結婚しているということになると手を出しては来ないが……」

「キミヤ様を煽ってくる相手もいるのは正直」

「わたしは手を出せないので大人しくしてます……」

「シーヴェはそれで構いません。正直私も手を出せるわけではありませんし」

「公也様に頼らないといけないのは少々心苦しいですね」


 公也たちは宴に出ている。誘ってくれた国の王とは別れてアリルフィーラとシーヴェとフィリアの四人で基本的には活動している。普段はアリルフィーラ付きのシーヴェも今回は公也の世話役に回っていたりする。そんな四人だが、従者として明確にわかる二人はともかく参加者である二人、公也とアリルフィーラは対外的にはそこまで恋人、夫婦にはあまり見えない。まあこの場に二人で参加している時点である程度親密な関係であるというのは確実なのだが、それをわからない人物やそれを分かったうえで公也のことを無視してアリルフィーラに声をかけてくる人物がいたりする。

 アリルフィーラは見た目で言えば結構な美人である。本気を出せば出せる雰囲気、気配で近寄りがたくもできるが流石に宴、パーティーの類であるこの場でそれはできない。なのでアリルフィーラは大人しくしなければならないためそういった相手を追い返すのは公也の役割となる。だがこの点において公也の場合はその見た目とこちらではほとんど知られていない立場的な問題が出てくる。公也自身の気配、強さに関してもこの場で見せつけるのはふさわしくないこともあり、追い返すのは微妙にうまくいかないことが多い状況だった。公也の立場であるアンデールの王はこちらではなかなか知られていないし見た目の雰囲気では公也が他国からの依頼を受けて仕事を果たす冒険者には見えない。そもそも年齢的に言えば公也は多くの王族的な立場から見れば若造にしか見えないだろう。これで三十は超えているというのは流石にわからない。アリルフィーラも三十くらいの年齢ではあるだろうというのもわからない。見た目ではいろいろわからない二人である。そもそも公也の話し方、対応もなんというか王としての感じがないというのも問題点としてある。

 とはいえ、公也とアリルフィーラが正式に結婚している事実である程度は退いてくれる。ただ、それでも退かない面倒な相手の対処はなかなか大変で公也たちは苦労している様子であった。


「それにしても、わかっていたこととはいえかなり豪華だな」

「食事には事欠きません。えっと、別に普段食べているのがまずいというわけでもないですけど」

「本来従者がこの場で食事するのは問題なのですけど? シーヴェ?」

「あ……えっと、ごめんなさい」

「ふふ。公也様が気軽に食べさせているだけですからあまり叱らないで上げてください」

「それはそれでどうかと思いますが……」

「ほら、フィリアも食べましょう? こういった食事は私も珍しいものですからね」

「アンデールだとあまり豪華な食事はないからな。味は十分うまいが……」

「食費自体は節約気味と言えますからね」


 宴の食事は当然ながら豪華、高級や最高級の食材に城でその腕を振るっている料理人の手によるもの。迎える相手が他国の王族である以上当然その料理の味は最上級。それを美味しいと思うのは当然のこと……公也たちからすればそれぞれで舌の感覚、味に対する感じ方は違い、公也は美味いものは美味いがそこまで味に関して細かく気にすることはなく、シーヴェは食事事情の関係で一定以上の味であれば問題なく美味いものは美味いでそう感じる程度、アリルフィーラは皇女であるためそういった高級品に離れていたがアンデールで普通の食事に離れているし、あまりそこまで気にするタイプでもない。フィリアは従者なのでそもそもそこまで気にしない。質が良くても豪華で美味しい高級な食材を用いて作ったいいものである、ということくらいしかわからずその細かいいろいろな味の内容はわからない……まあ、そこはどうでもいいことかもしれない。

 アンデールの食事事情はそもそも自活して食事を確保することが微妙で公也があちこち出向き購入して持ってきている部分もある。費用節約というか、そもそも高級とかそういうのを気にせず大量に買うこともあり、その質は良くない……まあ、普通かそこそこ良品くらいで味はそこまでだ。公也の感覚からすれば料理として出される食事は美味しいが、少なくとも一般的な王族が食べ満足するものではないだろう。そんなこともありこの場で公也たちは美味しいとは感じているがなんというか普通である。もっとも他の王族も満足はしているがそこまで賞賛するような者とは思っていないだろう。そもそも宴とはそういう場、そういうものなのだから。


「これだけの宴を開くのは相当だな」

「しかし何故宴なんて行っているのでしょう。国力を見せつけるため……にしても、ここまでするものでしょうか」

「この国の事情は分かりませんが……」

「理由は色々あるが……聞いてはなかった、そういえば」

「誘ってくれた方……王からですね。宴に誘われた、というくらいしか話はなかったと思います」

「理由があってしかるべきだと思うが……婚姻、婚約、生誕祭、建国記念……理由は色々と考えられるが」

「何かアナウンスがあるかもしれません。もっともそもそも誘われていたのはこちらではありませんのでキミヤ様やアリルフィーラ様がやることはないと思われますが」

「挨拶……はどうなんだろうな」

「あくまで同伴である私たちがすることではないと思います。でも必要ならやっておいたほうがいいかもしれませんね」


 現状公也とアリルフィーラ、従者二人はあくまで客人に過ぎない。何か必要ならば挨拶などに参加しなければいけないかもしれないが……今のところそういった雰囲気、話はない。なので基本的に食事をしつつ大人しくしている二人である。王族であれば本来なら他国の王都話をして交流をすることくらいはあるかもしれないが、公也はこの近くの国の王でもないためあまりそうした交流を行う意味はない。なので特にやれることはない。大人しくするだけである。





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