表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十四章 冒険者業
1462/1638

16





「リルフィにハティ……シーヴェ、フィリア、ノエル……五人か。ちょっと少なすぎないか?」

「そもそもアンデールだと護衛は難しいでしょう? まあ冒険者やってる子たちに任せてもいいでしょうけど……」

「フーマルさんにセージさんたち、リーンさんですね。でも確か……」

「リーンとフラムは護衛向きではないわ。フーマルは単独だし、セージたちになるけど……護衛としては悪くないけど、微妙なところはあるわね。もっともセージたち五人は今はいないから」

「城にも一応護衛ができる人員がいるはずだけど」

「そうね。城にいる護衛役の騎士とかもいるにはいるけど……そこまで動員するのも。いえ、別に悪い人たちってわけでもないけど、使いづらいのよねえ」


 アンデールにはハルティーアやペルシアについてきた護衛役の騎士などが存在している。とはいえ、その人員自体を活用できるほどアンデールには彼らの居場所はなく、アンデルク城の守りは城自体が魔物、城魔でありペティエットに任せて置ける……まあこれは監視に限る話であるが、それ以外にもヴィローサの検知、雪奈やメルシーネなど存在的な強者の察知力、存在をほぼ把握されていないイースの監視、警戒烏も周囲にたくさんいる状況になっており、あまり守りの人員が必要ない。それでもいないわけではないが、その総数は多くない……アンデールに軍や騎士隊みたいなものはない。一応魔法使いを育ててはいるがそれも城の戦闘要員としておいているわけではなく、村や町の守りのための戦闘力である。

 アンデールに置ける、アンデルク城に置かれている戦力はほぼ城に関係するもの、公也たち側の様々な秘密を知っている人員である。そしてその数が少ないため必要に応じて連れ出すにしても全員一斉にというわけにはいかない。もっともそもそも城から出られない、出るつもりのない人員も多いためあまり心配も必要はないと思われるのだが。どちらにしてもあまり戦力がなく連れ出すわけにはいかないことに変わりない。騎士たちも普通の場ならともかく今回みたいな場の場合……単純にこの戦力で見れば弱いのである。向こうも流石に公也を敵に回すようなことをしたいとは思わないが、どういう動きをするかわからない。だからこそ守りは少なくする。


「メル、こちらに回してもらっても?」

「……誘いに乗って宴に行くのは俺とリルフィ、シーヴェとフィリアがいるということはそちらはメルとノエル、メルが守りか」

「そう。人数が少ないのもそれが理由……秘密の件もあるし、あまり知られたくない事情もあるでしょう、メルには」

「まあ、一応対外的には情報制限はしているが……」

「もう公然の秘密と言ってもいいでしょうけどね。それでも隠している体裁はいるっていうのは面倒だわ。戦力、特に守りに関してはメルは良いという話だから借りて私とノエルの守りを頼みたいの。移動も私とノエルだけなら楽よ。今回の件で話し合い、交渉を終えたらアンデールに戻るためにもメルでなければ困るということになるの」

「夢見花に頼むのは?」

「行きは城にいるから話を通せるけど、ここからだとキミヤなしだと連絡できないでしょう。自前で戻るならメルみたいな移動手段でないと無理よ」

「……こちらに来る気は」

「誘われていないのに宴の方に行けるわけないでしょう。そちらの国で待つにも私たちだけではね。それならさっさと戻った方が精神的に楽よ」

「それでも数日はかかるが」

「そちらの国の宴もどれだけかかるのかしら? 一日二日? 誘われたはいいけど、別に宴にすぐに行けるわけでもないでしょう。メルに乗っていくわけにもいかないわよね? 自分たちがもともと誘われたわけではなく、この国の王族が誘われたのに同伴するわけだし。向こうで宴が開かれるのを待つ期間もある。何日ほどになるかしら」

「…………詳しくはちょっと」

「なら戻った方がいいわ。私がいなくなるわけだし国の運営もね。ある程度任せられるけど、それでも上の決定がなければできないこともあるし。キミヤも書類溜まってるわよ? 別に仕事が嫌いなわけじゃないんだからさっさと戻って確認してよね」

「…………………」


 今回来たのは五人、人数的には少ないが、別にそれ自体は悪くない。ただ、それぞれ分かれる形で戦闘能力のある護衛役が必要となる。アリルフィーラと従者二人は公也がいるので十分だがハルティーアとノエルは流石に戦力的に問題がある。そこにメルシーネが守りに入る形になる。メルシーネも公也について行けないのは不満があるが、二人を護ること自体は承知できる。またメルシーネは二人の移動手段としての意味合いもある。今公也たちがいる国から二人が移動するのにいちいち馬車を使うのはお金も時間もかかるし安全面の問題もある。やはりそこはメルシーネに乗っていくのが一番だ。そしてアンデールに戻るのもまた同様。夢見花がいれば魔法で楽に戻れるが、来ていないので残念ながらそれは無理。連絡を入れて相互移動用の魔法で戻るのも連絡手段を持っているのが公也だけな時点で不可能。ゆえにメルシーネに乗っていくしかない、そういう話である。

 仕事をが終わった後公也に合流……というわけにはいかない。公也が誘われているなら後で合流は可能だが今回公也は誘われた王族に同伴する形で向かう。なのでどうしても一緒に行くアリルフィーラと従者二人以外を後から、というのは都合が悪い。一応頼めば受け入れてくれるだろうがそれはそれで借りになる。もちろん今回の報酬の件で一緒に含めて貸し借りをない状態で済ませられるが、それでも精神的にどこかむっとする感じがあるため基本的にはそういう方向に話を進めるつもりはない。


「そういうことだから。メル、頼めるかしら?」

「わたし的にはご主人様に頼まれれば素直に頷けるのですけどね……まあ、ハルティーアがここまで強く言うならご主人様も断りはしないですし、いいですよ。ご主人様について回れないのはちょっと不安があるですけど……」

「キミヤなら大丈夫でしょう。まあどこか抜けているというか、甘いというか適当な部分もあるから不安があるのは分かるけどね」

「いつもハルティーアさんに叱られてますもんね」

「ノエル?」

「あ、はい」

「外だからそういう発言はしないように。後、交渉関連のもちゃんと見て色々覚えるのよ? あなたは本当に教え込めば使える人材なんだから、ここで全部叩き込んでいくつもりよ。ついてこなかったら容赦しないから」

「ええっ!? そ、それ、厳しっ! ええー!」

「交渉以外にも側仕事も頼むから。給料はしっかりちゃんと追加しておくわ。今回みたいに外に出る機会も増えるでしょうしね」

「反対ー! 反対でーす! 獣人使い秘書使いが荒いですよー!!」


 メルシーネ、ハルティーア、ノエルはこちらに残り報酬交渉となる。なんだかんだハルティーアがいれば不安は少ない。


「とりあえず……出発までは待つことになるか」

「公也様と馬車でどこかに向かうというのも久々になりますね」

「移動する場合は竜での移動が多かったですね。しかし……その前に、こちらで正式に挨拶をしなければ」

「そうですね。それに私たちも行くことを話さないとダメじゃないですか?」

「ああ……それもそうか。しかし、なんだか不安が……」

「何がですか?」

「自分たちで行くならともかく人任せにするのはどうにも」

「王であるキミヤ様が世話になることに慣れていないのは問題でしょう……」

「キミヤさん」

「様」

「キミヤ様いろいろ仕事多いですからね……どこに行くにもメ……竜に乗って移動です。馬車で移動する機会ってそう多くないし、どうしても自分で色々やる機会が多いですから、慣れてないのは仕方ないんじゃないですか?」

「城では世話を受けているので慣れていないのはおかしなはずですけど……」

「城で受ける世話とはまた別の内容に関しては、ということじゃないですか? ふふ、馬車での移動は私もあまり慣れていませんし。最近は機会が少ないですからね」

「それでも公也様よりは多いですね」

「まあ、まずは挨拶、正式な紹介からだな。ハルティーアたちは……」


「すぐに出るからいいわ」


「そうか。なら……正式に挨拶するのはリルフィだけか」

「正妃としての仕事です……本当ならここに来る際に挨拶するのが普通ですが」

「正式な訪問という形ではなかったので仕方ありません。改めて、ということになります」


 公也、アリルフィーラ、フィリア、シーヴェは暫くはこの地に残り他国の宴に向かう国の王族たちとともに移動することとなる。その間も色々と仕事はある。とりあえず今はそちらの色々とやるべきこと、あいさつ回りやアリルフィーラの紹介などを先にやることとなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ