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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十四章 冒険者業
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『…………近くで行われる国での宴に参加してほしい? そう頼まれた? えっと……それは報酬でってことかしら?』

「いや。今回の件での報酬とは別に……いや、ある意味では追加報酬みたいなものなのか? ちょっと本来向こうが頼みたい分よりは過分な仕事をした感じだから」


 現在公也は魔法によりアンデールへと連絡を入れてハルティーアと会話中である。基本的にアンデールに来た依頼における報酬はある程度は事前に提示されていることが多く、かりにそういった提示があった場合でも現場で直接関係者、代表者、責任者と公也が話し合いその内容を決めている。規模が規模であるしどうしてもその報酬は簡単に決められるものではなく、場合によっては年単位での支払いになるとか、あるいは形での支払いではなく交易的なものになったりとかその時その時で違ってくる。しかしほとんどすべての場合でアンデールに連絡を入れてハルティーアと協議して決める、なんてことはない。最近では公也も交渉事はまあまあできる。割とどうでもいいと報酬を適当に決めることは公也もさすがにしない。もっとも得意というわけではなく、相手から得られるだけ得る、最大利益を求めるみたいなことはできないが。公也の場合はむしろそれくらいの方がいいだろう。


『とりあえず詳しく教えてもらえる? どういう事情でそうなったのかしら?』

「三つの依頼、先に緊急性の高い二つを終えた。こっちはまだそちらに連絡が入ってない……よな?」

『流石にそちらで解決された問題をこちらですぐに把握、というのは無理ね。冒険者ギルドの方で連絡を取ることはあってもそれは問題事、緊急性の高いものに関してで……冒険者ギルド側の関与するものごとの方が多い。今回の件はこちら、アンデールに来たものだから冒険者ギルドを通じての連絡は微妙ね。それに依頼として頼む方は急ぐ必要があっても終わったことはすぐに連絡する必要もない。だから使わないほうが多いわね。使者を出すにも報告のために使者を出すのは次に報酬の支払いのために人を送る必要がある点からあまりいいとは言えない。もちろん報酬に関する協議の問題もあるけど……そいうえばそちらは? 今回キミヤは二つ緊急性の高い依頼をしているわけでしょう? そっちの方で報酬の交渉に関しては?』

「簡単にだったな……正直話し合いをするにも大変だし、そちらに連絡……誰か来て話し合う必要があったならその時に頼みたい」

『面倒くさい話ね。まあ一番面倒くさいのはそっちの国なんでしょうけど。依頼を出し解決してもらった側で立場は低いし、また依頼を出す可能性がある場合報酬を渋れば断られる危険がある。そもそもそちらとこちらは距離が遠すぎるもの。行き来するだけでも大変だし、話し合いは正直面倒に過ぎる……報酬は正当な分が出るか、多少高めになるかもしれないわね。その方が手間も少ないし心証もいいでしょうから』

「そう上手くいくかな。まあこちらとしてはそこまで気にすることでもないが」


 以来の報酬に関して、今回は公也が色々と移動が忙しい、仕事に忙しい問題があったという事情であまり話ができていない。ただ、事前に一応は簡単に報酬の提示があるしそもそも仕事に関しては規模が規模であるため冒険者ギルドも絡む。そういった点で報酬自体はある程度問題なく決められる。またアンデールへの依頼という点で次から依頼を出せなくなるようなことにもなれば国の危機に頼れない、という問題が出てくる。まあそう何度も起きてもらっては困るが、この世界ではいつそういったことが起きてもおかしくはないのである。それに今回の事件を解決したのは公也である……つまり公也は今回の事件、国が乗り出しても解決できないような出来事を解決できる、それだけの力を持つということ……機嫌を損ねた場合、その力を自分たちに向けてくるかもしれない。そう考えればあまり報酬を渋り敵に回したいとは思えない。もっとも世の中にはそういった考えに及ばない者も多いし、距離という点で公也が自分たちのところまで出向いてくるかもわからない。あまり過度に考えても……という心持はあるだろう。

 まあ結局のところそういった話は後で話せばいい、今全てを決める必要のないことである。重要な話……いや、重要ではないが、公也の持ちだした話はその後のこと、つまりは緊急性の低い月の花の依頼に関わるものである。


『それで? 先の二つ……緊急性の高い依頼ではないってことなんでしょう? 月の花の依頼に関して?』

「ああ。そっちでの話だな」

『普通にお金で済むような依頼よね、これ。冒険者ギルドに出されるような、そういうの。もちろん受ける冒険者はほぼいないし、いても成功したという話がそもそもないから報酬でいくらが適切かというのは難しいものだけど。それで追加報酬? なんでそういう話になったの?』

「依頼で月の花を持っていったんだが……」

『見つかったんだ』

「探したからな。それで持っていったら、もう一つあればって言ってたから二つ目を出したんだ」

『……二つも見つかるような者だったのね。正直一つも見つかるものかしら、って話でしょう。ああ、でもそういえば依頼に別に一つしか持ってくるな、求めているのは一つって話ではなかったわね。依頼の時点で要求しているのは月の花、数は指定していない。なら一つ出しても二つ出しても本質的に依頼の内容は変わらない……』

「そういった意図はなさそうだった。もともと一つしか頼むつもりはなかった様子だったぞ? 一つ出したでも大喜びだったしな。ただ、もう一つあれば……って感じで口から漏れたような感じだった。向こうの母と息子、二人が病気で後継ぎの関係で息子の治療をしたかったようだが、当然母の方もしたい……だが月の花は御伽噺のような代物で一つでも見つかればいいだろう、という感じだから息子の方だけを治療する目的で一つだけ、ってこと……だったんじゃないか?」

『見てきたように言うわね。まあ、そんなものだからこそ数の指定はせずに出したんでしょう。想定していたのがそもそも一つだけ持ってくることだった。二つ持ってきたのは想定以上、あり得ないくらいうれしかったでしょうね。母……えっと、依頼者の母? それとも奥方?』

「妻らしい。妻と息子が病気、遺伝かそれとも親子での伝染かは知らないが……」

『ならなおさらでしょうね。立場がある以上他所から迎えるのもありでしょうけど、そうはできない事情やそうしたくない事情もあるでしょう。ただお家の事情柄息子を優先し血をつなぐ、家をつなぐしかなく奥方の方はあきらめざるを得なかった。でもキミヤが二つ目を持ってきたからそちらにも月の花を使えた、ということなのでしょうね。だから……追加報酬、ということね。依頼的には内容の都合上本来提示していた報酬でも十分だけど……不誠実と感じたか、あるいは望外の結果ゆえの嬉しさか。でもそれが……国の宴に参加?』

「他国で行われる国の宴に自国から客人として俺やその関係者を招くつもり……らしい。個人的にはメリットはあまり感じないが」

『普通はそうは思わないでしょうね。関係のない国の宴、招きに行けるなら王なら前向きに考える内容よ? 上手くいけばそちらの国の人間と縁を結べるし、国の宴ともなれば色々と得られる代物もある。食事、酒、土産……まあ、キミヤはあまり興味なさそうだけど』

「まあな」

『でも……受けない、というのももったいないし、そちらの国で月の花の報酬を二つ分、というのもどうなの? 額がどうなるか怪しいんだけど』

「そっちの理由で考えたものではなさそうだけど……考慮に入れていない、ということはないかもしれないな」


 月の花を二つ、もしこの二つに正当に報酬を支払うのであれば……結構厳しい額になるだろう。正直今回依頼を出して得るにしても一つ分で息子を直すだけで良かっただろうし、妻である女性に関しても他所から、側室を迎え死んでも問題ない様に……みたいな意見もあるかもしれない。まあそういったこともあったからこそ追加報酬を機会、他国の宴に参加するのに同行させるという形になるのだろう。こればかりは一般的に金銭では換えられないものであるからこその価値がある。


「じゃあどうする?」

『いや、キミヤが決めるべきでしょうに……でも無理にお金で要求するのもね。お金ばっかりあってもあまり利点もないし。どうせなら他国との誼を結ぶのもありなのかしら』

「場所が場所だが」

『……遠いわね、確かに。でもたまの機会だし、いいんじゃないかしら?』

「……それは、そうかもな」


 今回みたいな他国とのつながりを作れる機会は少ない、だからそれを……ということだが、どちらかというと他国に遊びに行く、旅行みたいな感じの機会で考えている。まあ、問題があるとすれば誰がどう行くか、となるが。




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