表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十四章 冒険者業
1447/1638

1




「キミヤ。色々と依頼が来ているから……」

「別にそれは構わないが……色々ってことは複数か?」

「そうね。三つ……大きな問題が二つ、一つは別に受けなくてもいいわ」

「……受けなくてもいい?」

「ええ。こればかりは緊急、早急に解決しなければいけないことでもないでしょうし」

「内容は?」

「……とりあえず大きな問題、急いで解決するべきだろう問題から行くわね」


 アンデールの王である公也には他国から問題解決の依頼が来る。もともとそのためにアンデールは作られたものであり、公也も他国に出向くいい理由になるし国としてもあまり発展するような物のない国でもお金を稼げるので悪くはない。もっとも現状公也の資産、公也が稼いだ金に依存するような国家体制であるのは問題があるだろう。一応辛うじて自活できる程度には成長しているが、もともとの国の大きさ、開拓の余地はあるが人の少なさ、山の上でどうしても生活は厳しいなど、まだまだ難しいところである。

 さて、そんな依頼は三つ……緊急性の高い問題のある物が二つ、特に問題のない本当にただの依頼が一つ。公也としては恐らく国の危機なのだろう二つよりもなぜか頼んできた緊急性のない本当にただの依頼の方が気にかかるようだ。おもしろそうである、という感じ……まあ、普通なら公也にわざわざ頼むのもおかしいだろうという点では面白いだろうというのは分からなくもない。ただ、ハルティーアとしてはそちらよりも緊急性の高い二つの方を優先してやってほしいと思っている……まあ、国の危機だから飛んできた依頼である。少し長めに放っておけば国が滅ぶ、そこまでいかずとも騒動、問題が起きてかなり経済的に悪い状況になるとかいろいろな問題がおき得るものだろう。流石に国が滅ぶとかそういう事態は駄目だ、ということでそちらを優先してほしいところである。


「一つは……巨大種の氾濫」

「巨大種……」

「魔物の中でも巨大な魔物、普通の魔物よりも巨大なやつね」

「ああ。放浪魔だろうけど……みたことがあるな」


 アスモネジル探索中に放浪魔として存在していた巨大な魔物。あそこまで巨大なものは元々大きいのが巨大種になったケースだが普通の魔物でも別段珍しくもないものである。もっとも一般的に巨大種になる魔物は動物系統が多い。ゴブリンなどの人型種が巨大種になることはほぼなく、ワイバーンやゴーレムなどの魔物らしいファンタジーの魔物はなることもあるがどちらかというとほぼない、なっているのを見かけるとすごく珍しいと感じるものだ。もっともその分脅威度は動物系統がなるよりも跳ね上がるが。


「普通巨大種が発生しても一体……単体で発生するのがほとんどなんけど、今回はなぜか大量に発生したみたいね」

「なるほど」

「幸い……というほとでもないけど、魔物よりの普通の動物系の生き物が巨大種になっただけだから対処自体は不可能ではないみたいだけど……氾濫と言えるほどに数が多すぎる。まともに応対すれば犠牲が多くなる、ということでこちらに依頼が来たみたい。自国で対応した場合の犠牲の損失とこちらに依頼達成時に払う報酬を秤にかけて報酬の方がましだから依頼したんでしょうね……まあ、内容からすれば小国なら滅ぶ危険もある物だろうし、仕方ないんでしょうけど」

「数は?」

「数百はあるらしいわ。たぶん……千はいかない、というところかしら?」

「なんだ……」

「ちょっと? なんだじゃないんだけど? 巨大種が数百っていう時点で相当なのよ? 普通の魔物や動物でも数百もいたらやばいでしょう?」

「……それは確かにそうだな」

「巨大種となったのは……熊らしいわね」


 今回の事態に関してはこの依頼を出した国では大熊嵐と呼ばれている。その被害は甚大で、発生した地域では食料となる森の恵み、動植物がひたすら大荒れな状態になっている。嵐でも通過したかのような……というにはまだ嵐が通過した時の方がまし、と言えるほどである。


「それを相当すればいいのか」

「みたいね。キミヤなら問題はないでしょうけど」

「そうだな」

「……もう一つは、なにかとんでもないやばい魔物が現れたみたい」

「具体的には?」

「通過した場所を汚染する、とてつもなく汚い魔物……らしいわ」

「……なんかそれはそれでやだなあ」

「わかるけど。でも汚いと言っても……なんというか、普通の汚さじゃないらしいわ。何もかも生物を完全に拒絶するような途轍もない汚らわしい汚染を引き起こすみたいなの。動物はまずその通過点に近づかないし無理やり行かせようとしても絶対に抵抗する……人も動物たちほどではないにしても、近づきたくない、嫌悪と恐怖を感じるらしいわ。そして……無理やりその場所に触れさせた犯罪者がいたらしいんだけど、触れた時点で狂気に陥ってその場で狂死したらしいわ」

「……それはちょっと壮絶すぎないか?」

「そうね。はっきり言って対処できるかもわからないわ……ちなみにその犯罪者、ずっと腐らずその場に死体が残っていたらしいわよ?」

「腐敗菌すらその場に近づかない、か……」


 恐ろしいまでの汚染を引き起こす魔物……仮称、穢れの王は危険すぎる魔物である。一応これに関しては対処法があり、生命体は近づけないが物質は問題ない。もちろん触れれば汚染されるが、魔法の類であれば現象でその汚染に対抗が可能である。別に魔法でなくともいいが魔法は引き起こした現象自体が消えるので都合がいい。一応物理的に燃やしても問題はないものの、汚染が残ったり汚染が付着したものが熱で飛んでいく危険を考えると魔法が一番だろう。まあ、現時点で明確な対処手段は不明となっている。近づくのは危険すぎるがゆえに仕方がない。


「最後は?」

「これは緊急性がないから」

「後回しでも別にいい。依頼は依頼だろう?」

「……もう。先に今言った二つを解決してもらうわよ? 特に巨大種の方が先がいいでしょうね。後の方も危ないけど、移動が遅いという話で汚染も通った範囲のみ、まっすぐ進んでいるらしいから今のところそこまで焦らなくてもいいみたい……もっともそこまでのんびりもしていてられないみたいだけど」

「わかった……で、最後のは?」

「星の土の上に生える月の花の採取……らしいわ」

「……それは普通に冒険者に依頼した方がいいんじゃないか?」

「それは無理」

「夢見花?」

「月と聞いてきた」

「…………ええ?」


 唐突に現れる夢見花……近くにいたところ、月の花という名前を聞いてきたようだ。<月>の持ち主である彼女にとって月に関わるものは自分の領域、自分の手の及ぶ範疇なのだろう。


「星の土は高く高く高い山の山頂に存在する。もっとも星に近き山の土」

「……ふむ」

「月の花はその土にのみ生える。もっとも星に近い土に夜に映る月が光を照らし、そこに光の花を作る」

「聞いているだけだと幻想的な話ね……」

「ある意味ではこの花は普通の植物よりも魔物に近い。そしてこの花は万病に効く……比喩ではなく」

「つまり病気の治療が目的、ということか……でも普通の冒険者に依頼すればいいんじゃないのか?」

「私も知っている月の花だけど……これ、御伽話のレベルなのよ。夢見花は詳しいみたいだけど」

「……御伽噺か」


 それほどまでに現実に存在するとは思われていない代物である。夢見花が詳しく話さなければハルティーアもどう公也に説明した物かと迷う代物であった。実に夢のある話、代物だが……話を聞く限りではかなり非現実的、採取できるかが怪しい代物である。


「まあ、一応探してみる……最も高い山、っていうのはわかるか?」

「そうね……今回の依頼の巨大種の発生した地域のさらに向こう、ここアンデールからそこの国に向かったさらにその先に途轍もなく大きな山があるという話だから……そこならどうかしら? 私もそこまで遠くのことを知っているわけではないし……」


 今回の依頼はどれも遠い地域からの依頼である。大分早く届くように緊急の伝達手段をとられたものであるが、普通に依頼を出そうとすればかなり遠い……以前も割と遠い国から来たがそれ以上に遠い地域からの物だ。だからこそ緊急性が高いというか、急いで向かって解決してもらわなければいけないという話でもある。もともとアンデールの役割はこの近隣の国で決められていた物なのだが……いつの間にか大陸中にその話は広がり、依頼が来るようになったようである。公也としては遠出の都合がつくので悪くはない、という感じではあるが面倒ではある……依頼自体は。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ