表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十三章 遺産
1437/1638

22






「ん? なんだ侵入者か?」

「ここは……正面? 馬鹿か? いくら夜だからって見張りがいるってのに」

「でも争いの気配は……っておい!?」

「侵入者!? 一人二人じゃないぞ!」

「しかも各方向から……おいおい、数がやばい!」

「寝てるやつを叩き起こして侵入者を探すぞ! 流石にこれはやばい!」

「城の守りは十分なはずだが数が多すぎる! 急いでちゃんと対処しなけりゃ!」


 アスモネジル王都、城の周りに存在する結界はちゃんと機能し、侵入者を探知する。侵入者自体は今までも何度かあり、毎回それにきちんと対応してきた。流石に全部始末した、というわけでもないが……侵入に容易に気付き対応できるのは大きな利である。もっともこの結界は外部からの侵入以外にも内部からの移動にも反応する場合もあり、鳥などの動物にも反応する時期もあった。今は調整を終えてある程度対応できるようになったものの、それでもまだまだ完全なものではなく、反応するものは多数存在する。侵入者以外にも外部からの攻撃にも反応するためそういう点では本当に侵入者のみに対応するということにもならない……投石などは大きさ次第では反応しなかったり、攻撃と言ってもやはり反応するしないもある。魔法もそこまで便利、完全なものではなく、いろいろと困る部分もまだまだ残っている。







「……さて。人の動きが出てきたな。騒々しい……と、まあうまく引っかかってくれている分にはありがたい」


 アスモネジルの王城にて侵入者に対応するために兵士が動いている……しかし彼らの行く先に侵入者はいない。そのことを知っているのは公也だけだ。すぐにわかることになるが、現状では公也だけ……結界は侵入者、入り込んだ人間だけではなく攻撃、あるいは魔法に反応する。魔法は様々な現象を引き起こすことができ……例えば人型の魔力の塊を動かして結界に触れさせる、みたいなこともできる。攻撃性のある魔法ではないがそういった魔法にも結界は反応するだろう。それを利用して公也は侵入者の反応を偽装した。

 そうして人がその偽侵入者の方向に向かっているときに公也自身は結界に反応しないよう、結界への反応偽装を魔法で行い侵入者の反応を作った方向から逆方向から城へと入り込んだ。結界などの魔法に対する反応の偽装は夢見花が事前に教えた魔法であり、結構様々な結界などの探知系の魔法に対する対応手段である。もっともその魔法は消費魔力が大きく、本来なら結界などの探知の魔法に関して理解、把握、構造を知るなどの様々な前提を要求するものだが、公也の場合は魔力によって無理やり対応しているためさらに消費が大きい。公也の高い魔力ならではと言える。


「しかし……この魔力の持ち主には俺の侵入は分かってるはずだが」


 城に満ちる魔力はその中に異物が入ればそのことがわかる。魔力の持ち主はそれを感覚で感じているはずだ。だが特に反応はない……まだ反応していないだけか、それとも異物に興味を持たないか。意図的に魔力を満たしているならばその理由があるはずだが、別の目的、意図があるという可能性もないわけではない。あるいはそもそも侵入してくる存在が多いためそういったものを気にしないようにしている、という可能性もないとは言えないだろう。そこは現状ではわからない。


「……流れがある。魔力の行き先があるな。弱いが。少し……調べてみるか」




 城に満ちる魔力、その魔力の一部は一定の方向に進んでいる。公也は最初の侵入に探知系に反応しない隠蔽魔法を使い、さらに自分の姿を消す魔法も使い、気配を消す魔法も使い……全部に魔法を感知しない隠蔽も行い、見つからないように城の中を進んでいる。流石にぶつかればわかるし、城に満ちる魔力みたいな入り込んだものを把握できるタイプ……色水の中に入った虫を感知する、みたいな探知であればわかるがそれさえ警戒すれば基本的に問題なく探索ができた。結界は城の周り以外には存在しない様子である。


「……王の部屋か。流れは王に、王妃に……他の幾つかもあるが、もしかして王族に向かっているのか? たぶん……王族は魔法使いだろうな。この魔力の一部を自分に集めて魔法を使う、本来なら自分に使えない高い魔力を必要とする魔法を外部の魔力を利用して使う……? にしては……なんというか、かなり微妙なやり方だな。そもそも城を魔力で満たす必要はあるのか?」


 魔力を城で満たし、その魔力の一部を自分たちに集める……はっきり言って相当迂遠なやり方である。魔力を外部から得る、というのは地脈の力を得る方法だったり公也と夢見花みたいな契約という手段もある。決してそれ自体は悪くないが、魔力で満たした空間から一部の魔力を自分に集める、というのは正直言って無駄が多い。そもそもそれだけの魔力を満たせるような魔力の持ち主がいるならその人物が魔法を使う方がよっぽど利便性が高いというか、手間がないし無駄もない。


「……しかし、王やその関係者、王族に魔法の力を集める……魔法使い至上主義を推し進める理由は自分たちが魔法使いでこの魔力を利用して魔法使いとして高い実力を発揮できるから、か。でもそこまで大したものでもなさそうだな……むしろこの魔力の持ち主の方がよっぽど……」


 魔力の集め方からもわかるが魔法使いとしては本当に大したことがないだろうと公也は感じている。ただ、王族が魔法使いであるという事実は魔法使い至上主義を推し進める理由にはなるだろう。魔法使いである自分たちの権威をより強いものにできるのだから。そのため外部から魔力を集め強い力を……そういうことができているからこそより推し進める方針、というのはあるだろう。


「……魔力の持ち主を調べるのが一番か。しかし、これだけの魔力を持っていて何もしないできない? それは流石に……ルストだって技を使えるわけなんだが……いや、あれは例外というか、そもそも技を使えること自体相当な努力がいるしな。ただ、ルストみたいな例でもないなら……これだけの魔力があれば自然に魔法を使えるようになっていると思うんだが」


 魔法は一般的に詠唱と呪文を使い発動する。しかし本質的に魔法は魔力さえあれば発動できる。詠唱も呪文もなしに魔力だけで魔法を発動させることは大量の魔力が必要となるが不可能ではなく……これだけの魔力の持ち主であれば意図せず発動させることは不可能ではないはずだ。もちろんルストみたいな魔法を使えない体質であれば発動しないのだが、ルストみたいな例がそう多く存在するとも思えない。仮にそうだったとしてもこれだけの魔力を持っている存在だ。もっと別の特殊な事例が起きてもおかしくはない。それすらなく、ただ魔力が満たされている状況……そもそもそれを良しとすること自体普通ではない。だからこそ、このよくわからない状況に公也は興味が出てくるのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ