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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十三章 遺産
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「キミヤ。報酬のことに関して話をしたいのだけど……」

「報酬、と言われると……そこまで何かを貰うほどのことをしたとは思えないが」

「内容だけを考えればそれだけのことはしている。エルデンブルグだけに請求するのはどこか違う気はするけど、そもそもが調査目的で頼まれたことだからその延長と考えればマギリアが報酬を支払う立場なのはおかしくない……またハルティーアがうるさいからちゃんともらった方がいい」

「……はい」


 大体いつもそういう部分は雑に対応している公也。ハルティーアもそういう公也の雑さというか適当さ加減には苦労している感じである。まあ貰う分はちゃんと貰うようにはしている。ただ、今回はどうにもそれだけ大層なことをした実感が公也にはない。<暴食>を使い食らった魔物は確かに世界を食らいつくす危険のあるスライムではあったのは事前の映像情報とくらい得た相手の情報からわかるのだが、実感がない。知識と知っていてもその脅威を体感したわけではないからだ。そしてそれは公也だけではなくマギリアも夢見花もルストもである。もちろん巨大なスライム自体がまあまあ脅威であるためそれ自体に対しての対応だけでも十分と言えば十分かもしれないが。ただ、やはり公也が一瞬で始末をつけたのも実感の薄さに繋がっている。


「しかし……実際どれほどの物が適正だ?」

「そこなのよ……あの魔物はあの施設の元である国、そこの所属の魔法使いが言うには世界を滅ぼしかねないきょいうだという話だけど……」

「あの時点でそれを判別するのは難しい。私たちが見たのはあくまでただ浮かされているだけのスライムの魔物。巨大であるけどそれだけ。倒そうと思えば倒せたかもしれない……試すのは色々な事情で難しかったけど」

「脅威がどれほどかわからない、被害もない、倒すのも一瞬で消え去って証拠もない……目撃したのが俺と夢見花、マギリアにルストで証言しようにも証拠が薄いな」

「そこは私としては別に嘘をつくつもりはないわ。こればかりはお互いの信用にかかわるもの。ただ、あの映像……はまたみようと思えば見れるでしょうけど、仮にそこで言われたことを聞いたとしてもその対象が消え去り脅威であるかがわからない、本当にそれほどまで恐ろしいのかがわからないからその通りに考えるのが難しいわ」

「真実がどうかを話してもらちが明かない。そちらは報酬をどうするつもり?」

「……支払うのは良いのよ。ただ、実際にやったことと言えば……調査に一緒に出向いた、そこにいた魔物を倒した、それだけ。国において脅威を排除した、まああの魔物が脅威ではあったかもしれないけど今のところ何かをしているわけでもなく、事前に対処して被害もない状況……そのままでも問題はなかったかもしれない、色々な点を考えて払える報酬がそれほど高く見積もれない、仮に高額報酬にするにしてもお金を動かすのが難しい、という感じかしら」


 結局のところ報酬を支払うために外部に対する理由をしっかり示さないと厳しい、という話である。理由もなくお金を動かすのは難しいからだ。


「……それで。マギリアの報酬の話はわかったが、そちらは?」

「初めまして。私はファリア・アルツハエム。この国の軍に所属しています……最高位とは言いませんが一応軍のトップに近い位置にはいます。諸事情ありまして軍で比較的動きやすいのは私だけの状況で、色々と活動させてもらっています」

「……軍か。それで、その軍の人物が一体なぜここに?」

「マギリアが予算を動かすのは立場上難しいということで、予算を動かす理由づけをこちらでしようかと……こちらの頼みごとを引き受けるつもりはありませんか?」

「………………」


 公也はファリアを少しだけ見定めるように見つめる。マギリアは公也に対して頼む、友好的にお願いするという形であり……結果的に利用はしているが強い意図でそうしているわけではない。どちらかというと本人が申し訳ないと思っているくらいには……まあ、公也の立場とか冒険者のランクを知っているからであるが、知り合いで有効的な立場であるからとそれを利用し使おうとはしていない感じである。だがファリアは明らかに公也を利用しよう、使おうという魂胆で来ている。それが悪いとは言わないが、あまり好意的には取れない対応である……とはいえ、国としてはマギリアよりはファリアの方がらしいと公也としては感じているかもしれない。


「頼みごととは?」

「以前、ユーナイトがこの国を牛耳っていた時に友好国だった国があります。それが今はユーナイトがいなくなり魔法使い至上主義が靴が得た結果、敵となりました。彼の国は魔法使い至上主義を掲げており……これはユーナイトがこの国に魔法使い至上主義を広げたことが原因にありますが、そのこともありこの国にとってはあまりいい関係を築けなくなった国です。そしてこの国における魔法使い至上主義の恩恵を受けていた魔法使いがこの国を離れ向かった先として主となった国でもあります」

「……敵対国、か。潰して来いと?」

「そういうわけではありません。流石にそこまで要求するのは……いくら高ランクの冒険者でも、無理が過ぎるでしょう。目的は調査……密偵としての役割、あるいは工作も含めるかもしれません。彼の国が魔法使い至上主義を今も掲げられている理由、この国に対して積極的に敵対しようとする理由が現時点でわからない問題があります。この国において魔法使い至上主義が罷り通ったのはユーナイトが存在したから。他のあらゆるすべてを隔絶した強さを持つ、そんな存在がいたからです。彼の国にそのような存在がいるとは聞いていませんが、実際彼の国では魔法使い至上主義を通すことができています。それがなぜなのか、それを調査してもらいたい……ということになります」

「この国の人間は動かせないのか?」

「動かせますが、所属の問題が出てきます……この国の人間であるとばれる可能性が高く、そもそも向こうも注意を払っているでしょう。動かしても詳しく調べるのが難しい、という問題があります。あなたは立場上旅人であり、またその魔法使いの実力も高い……それが理由で魔法使い至上主義を目的に彼の国に向かった、ということであれば納得され受け入れられる可能性も高いでしょう。最初はこの国に向かったがユーナイトという人物が倒され魔法使い至上主義が既になくなっていたからあちらに向かう、ということであれば理由にはなると思います」

「……それでそこまで調べられるとは思えないが」

「こちらの人間よりも調べられればそれでいいです。あるいは普通に向こうに一時的に所属し情報収集するだけでもいい。あちらを離れる際に重要施設の一つや二つ破壊してもらえればそれで構いません」

「それはそれで結構な要求だな」

「……まあ、こちらもあなたに過分な要求をしているかもしれません。ですがこれだけの成果を出す、役割を務めていただけるのであれば……ユーナイトを倒した事実、禁域指定を受ける可能性のあった施設の調査とそこにいた魔物の撃滅、そして今回の依頼を含め……多少色を付けるという形で十分な報酬をマギリアと私の連名で出せると思います」

「………………」


 どこまで本気で言っているか微妙にわからない。ただ、報酬をもらいやすくなる……うえにユーナイトに関してとこの以来の分も含めての結構な分の報酬となる。まあ向こうはこの依頼を受けてもらう必要性もないと思っている。算出が難しいだけで今回の報酬の支払い自体は問題ない。なので公也がどうするか、ということになる。



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