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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十三章 遺産
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「……なんというか、物語で見るような……近未来的な」

「古代の施設なんだけど……近未来?」

「公也の感覚、知識での話。少なくとも現在の技術力ではこういった施設を作るのは難しいはず」

「ここまでまともなのは流石に初めて見るな。冒険者ならこんな感じの構造の遺跡とか……大昔の施設とか見ないわけじゃない」

「そうなのか。ある場所にはそういう遺跡もある感じか……」

「古代の人物が遺すことができていればあるかもしれない。でも老朽化で崩れたり魔物が荒らしたりでまともな状態じゃないほうが多いと思う。公也のいる場所だとどれくらいあるかもわからない。こちらよりはむしろ多い可能性の方が……人の安全が大きいから未探索は少ないかもしれない」


 公也たちが封印された扉から入り施設の中に入る。公也からすれば近未来的……サイエンスフィクションなどの映画、漫画でイメージされるような感じの施設だ。機械的というか、そんな感じの。実際には機械のような物理法則側、科学的な者とは別の魔法的な超常現象が仕組まれている施設であり、その構造は現代では作れないような素材を用いられてはいるがそれくらいである。しかしそんな公也の感覚はあくまで公也の世界の技術とその知識ゆえ。この世界においてはこういった施設は過去の遺物、古代の代物。そのあたりはどうしても感覚が違う。

 こういった施設は現在も起動しているものというのは流石にここのような極めて特殊な成り立ちをしたものくらいだが、遺跡として既に機能していない構造物としての代物はそれなりに残っている。冒険者にとっては探索し調査する、内部の物を回収し報酬を得るような稼ぎのいいものということでそれなりに認知はされている。ただ、どうしても危険は付きまとう。施設の老朽化で入って内部で行動して構造物そのものが崩壊するとか、中に魔物が住み着き狭い空間で戦うような羽目になるとか。そもそも無事な構造物が見つかること自体稀でたまに発掘されることの方が多い。それも一部で既に構造物の多くが土に還ったりバラバラになって散ったりと残らないほうが多く、場合によっては魔物が構造物を食らったりして完全になくなることもある。

 夢見花はそもそもこちらの大陸、海の向こうの大陸出身でありアンデールのある大陸の者ではない。マギリアとルストもこちらの住人であり、こういった施設の存在に関してはある程度知っている。公也が知らないのはそもそもこういった施設に遭遇しなかったからであるが、公也のいた大陸にもこういった構造物が存在してはいるはずだ。ただ、そもそも構造物の時代によっては構造自体が別物、素材も技術も別である可能性が高く同じものとしては見られないかもしれないし、あちらではこちらよりも魔物が弱く人々が安全で冒険者も活動しやすい……こういった施設が遺跡として残っているケースが多くなる分、調査や探索、発見もしやすいという点で既にほとんど残ったそういった遺跡がない可能性が高い。一方でこちら側では危険も多く探索しきれない場所も多いため発見できる可能性は上がる。もっとも魔物が強いため既に破壊されている、ということも多くなるかもしれない。


「しかし……こういった施設だと防衛ロボみたいなのがいると思うだが」

「あの封印を解いてはいるのが正規の手順だから防御機構が作動していない可能性がある。そもそも自分たちが使う施設に入ったら襲ってくるような防御機構を設置する方がおかしい」

「……そういわれると確かにそうだが」

「何か仕掛けるにしても要所だけでしょう。入口さえ完全に塞げば誰も入ってこれないのだから入口に重点を置いて配置するんじゃないかしら」

「そもそも封印されている。誰かが入ってくること自体あまり想定はされていない。まともに入ってこれるなら逆に歓迎したいはず。そのためのわかりやすい封印」

「罠とかに遭遇したことはないなあ。あ、でもたまに穴に引っかかることはあるか。狭いやつ」

「空気口排気口……あるいは建設時に使われていた通路、施設の修理とかに使う通路、そういったものを塞ぐ扉や板見たいのが老朽化した結果そうなることもあると思う。普通は自分たちが使う施設に落とし穴を設置しない。仮に自分たちが引っかかったら間抜け以外の何物でもない」


 公也としてはこういった施設、遺跡に関して……小説や漫画、アニメなどから知識を得すぎて侵入者認定されて襲ってくる、みたいなことを考えすぎである。実際そういった仕組みを作れないことはない。施設の利用者を登録しそれ以外の人物に対して攻撃する自動人形、機械人形などを配置するなど。しかしこの施設はそもそもの前提としてわざわざ外から入れないように封印されている。その封印を解かなければ入れず、その封印は前提として解かせるためのもの……解ける者を中に招きたい意図があるものである。自分たちが招いたのにその招いた相手を攻撃するのは意味がないと言わざるを得ない。試す、というものにしてももっとやり方はあるだろう。

 そもそも外からのそんなものを作るなら中に存在するものに対しての対応手段を作っておくべきだろう。それでどうにかなるならそもそも封印はしないが、その相手の見回り機構くらいは作るべきだろう。


「……しかし、未知がわかりやすい。あまりグネグネしていないというか、分かれ道も少ないな」

「施設だから」

「侵入者を迷わせるようなものじゃないでしょう……」

「住む場所がそんなところだったら嫌だしな」

「…………し、思考がちょっとフィクションに支配されすぎかなあ」


 ゲームなどにおける迷宮、迷路、ダンジョン…………そういったもので考えればまるで入った人間を迷わせるものがこういった施設にあると思ってしまう。しかし実際は普通の建造物……一般的な研究施設みたいなものである。多少内部の複雑さはあるかもしれないが、人が迷うようなものではない。広く複雑で迷うことはあっても意図的に迷わせるものではない。もちろん施設によっては侵入者対策はないとは言えない。テロリストなどに襲われた場合に奪われるとよくない場所などはそういうふうにされているかもしれない。まあ、それはこの施設には当てはまらないようだ。


「恐らく研究施設のような何か……資料は見当たらない。今のところ宿泊施設など」

「住居みたいね。そこまでしっかりしたものではないみたいだけど」

「居住施設というわけじゃない。研究する中寝るときに使えればいい、料理ができる、休憩することができる、そういうところが今まで見てきた範囲」

「じゃあ研究施設はもっと奥……いえ、下なのかしら? 階段を見たけど」

「多分地下施設になる。わざわざ山の中に掘られた場所だし」


 地下の研究施設……今のところなぜ封印されたかわからないような状況である。内部は特に荒れている、ということはない。時間の経過による劣化などはあるがそれもこの施設自体を維持する機能が地脈の利用で残っていることもありそこまでボロボロということもない。しかし人の痕跡……魔物が暴れた、などそういうものもない。ウイルス的な危険はないとは言えないがそれも今も残っているものだろうか、という疑問は出る。そもそもそれで封印するほどだろうかとも思ってしまうものだ。ただ、あくまで今見たのは研究施設内の居住スペース的な場所。階段があり、さらに地下がある……もし何か研究していた重大なものがあるとするならば、それが外に出ないように入口よりも遠くで研究するだろう。ならばそのさらに地下の場所に何かがあると考えるべきだろう。




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