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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十三章 遺産
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8




「ここか。本当に周りの環境が……生き物の気配がないというか」

「地脈の力が別所に流れている影響」

「そういうものか……その流れは感じられないが」

「それは私も。引っ張るのは簡単だけどその力の流れ自体は……感じることができないわけではないけど、広い範囲だとなかなか把握はしきれないかもしれない」

「簡単って……あなたたちはそういうけど、私たちみたいな普通の魔法使いではそんなことできないんだけど?」

「俺もそのあたりのやり方は知らないけどな。必要じゃないし」


 地脈に関する力はその大きな流れを感じることができる人物でも操ることができるわけではない。このあたりは魔法による干渉、引き出し……力の操作に長けること、技術力の方が重要である。ただ、そもそもその力の流れを魔法使いですら多くの場合感じることはできない。特殊な生まれの存在、メルシーネや夢見花のような特殊な力を持つ存在であれば割とそういった力に関して把握しやすく、大きな力を持つ存在であれば対等とは言わないがその力を把握しやすい。大地を見ても星の形を人は見ることができないが、大地ほどに巨大な存在であれば星の形は見れる、大きな力はおなじ大きな力……対等でなければならないというわけではないがそれなりに大きな力を持っていれば感じることができるものだろう。

 まあそのあたりの話は重要ではない、というか今回はあまり関係ない。重要なのはこの場所……扉の方である。


「ここか……人工的だな」

「奥に行けば扉がある」


「……扉だな」

「そう」

「魔法陣……魔法、話にあった封印か。まあ俺は見てもそういうのはよくわからないが」

「調べれば公也でも恐らくわかる……調査は複雑で難しそうだけど」


 扉のところまで来て公也も魔法陣を見る。しかし公也はある程度の魔法構築を可能とはしているものの、魔法を見ただけでその構築、内容を把握するということは無理だ。ユーナイトであれば見ただけでわかるがそれは本当に異常であり、夢見花でもある程度把握には時間をかける……まあ夢見花もありえないレベルではあるが。公也に関しては魔法を使い魔法の把握に努めればようやくわかる、というところだろう。魔法使いでもある程度以上に腕があればある程度はその内容を把握できる可能性はある。もっとも現代の魔法技術では難しい面が多い。過去の魔法技術は高い……というか、今の魔法技術が低いのが現状である。この魔法に関する流れ……だけではなく、大陸の状況や人々の生活状況、冒険者事情などは割と似通った流れで流転することが多く、この時代に夢見花やユーナイトが生まれているように時代時代で様々な技術を生み出す可能性のある存在が生まれる。そのあたりはその時々次第である。


「それで……この封印は夢見花なら解けるんだな?」

「そう」

「俺もこれ自体を排除することはできるが……」

「それはやめてほしい。この封印自体が鍵の一種である可能性もある」

「鍵?」

「魔法陣自体に警報の仕組み、この魔法陣自体が他の魔法の構築に使われている可能性、この魔法陣を解くことで他の魔法に連絡が行くこと、その他いろいろな役目があることが考えられる。わざわざ露出してわかりやすく封印を見せる必要が普通はない。つまりこの封印は意図的に見せるためにわざわざここに表示されている」

「…………」

「ふむ」

「魔法の連携、みたいなものかしら?」

「魔法以外でも作動すれば別の罠が作動する、みたいなものもあるしそういうものか」


 一つの魔法が他の魔法を構築する素材となる……複数の魔法を組み合わせて魔法を構築することはできる。もしそうである場合この魔法陣を無理やり破壊すればその魔法構築が滅茶苦茶になる、崩壊する可能性がある。そうでなくとも扉自体が他の安全にかかわっている可能性もあるし、魔法陣が破壊された場合の警告、破壊、その他いろいろな警報装置などが起動する可能性など。ともかく無理やり破壊してもいいことがあるかどうか、という感じだろう。

 そもそもわざわざ封印がある、とその封印を露出させ見せることが少し奇妙である。もちろん見せることで危険な場所であることなど示せるし、封印を読み解けるのであればそこが危険であることは明確にわかる。わからなくとも何か手を出したら危ないかもしれないと思わせるだけで十分、手出しする可能性が低くなるし出したとしても魔法陣がその手出しに反応し反撃する……外向きの封印、外からの来訪者を防ぐという点でただ防ぐだけでなく多少の攻撃反応の仕組みもないわけではない。

 正規の手順で解く……というのも変な話だが、魔法がわざわざ解けるようにある程度仕組みをつけられているというか、この魔法陣構築が誰かに解かれる前提であるというのが大きい。もちろん魔法陣の構築、魔法に関する仕組み、術式構築……極めて魔法という技術に精通していなければ無理なものであるため誰でもできるものではない。そもそもがユーナイト五人で作るような封印であるという話の時点で並の相手に解かせるつもりもないだろう。簡単に解けるようなものを置いても意味がない。中にあるのはそれだけ危険なもののはずなのだから。


「とりあえず……解くけど」

「ああ……というか今解くのか。前に来た時に解いたりは?」

「何が起こるかわからない以上公也みたいな強力な存在がいてくれた方がいい。当時はマギリアとルストだけだった」

「決して弱いわけじゃないはずだが……」

「別に私はそこまでだけど。ルストは十分強い……けれど、ユミカの話を聞く限りではねえ」

「あのユーナイトが五人いて封印するようなもの、なんだろ? 流石にちょっとな」

「……確かにそれは危険が過ぎるな。俺がいても……まあ、なんとかはなるだろうけど」


 夢見花自身でも公也の魔力を用いることができるならもっとなんでもできただろう。ただ距離が開いている状況だったため契約の繋がりがあってもなかなか引っ張るのが難しいため今回みたいに近くにいてもらった方がいい。そしてその公也自身も魔法に関する能力も下手な魔法使いよりも高いし特殊能力の<暴食>もある。むしろどうしようもない相手であればそちらの方が重要となるだろう。まあまず調査してみないとわからないが。

 とりあえず、夢見花は扉に欠けられている封印を解いていく。時間も技術も魔力も、結構使う大変な仕事であるが……なんだかんだ<月>という世界の魔法の根源的な存在の力を得ているゆえに……すんなりと問題なく封印を解くことができたのであった。



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