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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十三章 遺産
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「はあ……本当はあなたに話すようなことでもないけど、こちらは問題が山積みよ」

「別に私や公也の責任じゃない」

「わかってるわ。この国の問題だもの……」


 魔法使いの国……いつまでも名前を呼ばれないのもあれなのでエルデンブルグでは夢見花がマギリアのところを訪れていた。現状ある程度国情は安定しているものの、ユーナイトが色々と国にもたらしたこと、その影響、ユーナイトがいなくなったため国でも大きくいろいろと変わることが多く、国情は以前よりましになり安定したが問題は山積みな状況となっている。

 マギリアは国の王にはなっていない。反抗組織のリーダーとしてユーナイトを始末し国を基に戻すという目的がありそのための活動はした。しかし国政を取りたかったわけでもなく、そもそもユーナイトは王のように振舞っていたが厳密な王でもなく、国には別に王族が残っている。それを差し置いて自分が国の頂点に立つことはしない。あくまでアーテルハイムの家の家長としてやってくいくつもりだ。王は王族が担うべきである。

 しかしそれで多くの者が納得するわけでもなく。王族がいる以上王になるべきではないかもしれないがだからといって自分の行いの責任を他者に放り投げるのはどうか、という意見もあるしユーナイトを討った人員なわけであるからその点でもユーナイトに、魔法使いに不満を持っていた国民からの指示もあった。マギリアも魔法使いであるがそこは魔法使いではない者に対して救済的な活動をしていたというか、魔法使い至上主義をぶち壊して元に戻すために奮闘していたことが知られまあまあの支持はある。ゆえに頂点に立つことはしないが国政に大きく携わることとなってしまった。

 そんないろいろ忙しい中に夢見花が訪ねてきてくれているのはある意味では気晴らしにはなる。公也は一応別の大陸とは言え国王なので頼りたい面もあるし逆に王相手に頼るのも、という点でやりづらい。魔法に関する話ができる点で色々話せる夢見花の来訪はありがたくもある。そして他国、それも海を越えた向こうの人物でもあるため国のことに関して話すのも結構いろいろ気にせず話せる。とはいえ、夢見花に解決責任はないし解決能力はない。多少は夢見花から知識は出せるがそれが役に立つかはまた別の問題である。


「……ああ、でも。ちょっと気にかかっている問題が一つあるのよ。いえ、二つかしら?」

「こちらには関係ない」

「そうね。ただ……一つは国との問題だからあれだけど、もう一つは魔法関連かもしれないから興味は持つかもしれないわよ?」

「……そういう話なら少し興味はある。もともとこの国には変わった仕組みが根差しているし」

「変わった仕組み?」

「地脈に少し変な仕組みがある……ユーナイトが地脈関連に手を出せたのはこの仕組みを知ったことが理由かもしれない。わからないけど」

「ユーナイト……ああ、その点でも少し気になる部分なのよね。この件に関しては」


 地脈とユーナイトの関係はユーナイトが国……厳密には王都に巡らせていた魔法関連の監視網に関して。いくらユーナイトが凄腕の魔法使いで高い魔力を持っていても大規模な範囲にそれだけの仕組みを常時設置するとなると消費魔力は甚大だ。ましてや高い魔力を持っていると言っても公也のような異常な魔力量ではない。当然他所から力を持ってこないといけない。それが地脈である。

 一応地脈は街の付近には少ないというか、あまり地脈の力の流れが大きい場所だったら魔物が発生しやすくなるため街などを設置しにくい。ただ、地脈の力の調整やその力の漏れを逆に利用するなどの仕組みがあれば地脈の近くでも問題がない……もっともユーナイトはこれを利用した形だが、そもそも地脈の近くに街があったとすればそれはユーナイトの手腕によるものではなく、過去の魔法使いの国の手によるもの。つまりその仕組み自体は別に存在し過去に作られていた、ということだろう。それをユーナイトが見てその術式を利用した。ユーナイトが自分で完全に地脈利用の魔法を開発した……可能性はないとは言わないが、別に誰かの作った仕組みを知り流用した、という方が可能性としては高いかもしれない。

 まあ、マギリアが気にかかっているのはそこではない。夢見花の言った内容が関わる点もないわけではないが、別の件だ。


「あの魔法使いが手を出さなかったことがあるらしいわ」

「別におかしな話ではない。魔法使いでもできることできないことがある」

「それが魔法に関することでも?」

「……ユーナイトも完全じゃない。私が使った魔法もユーナイトではできないし、そういう分野なら手を出さないわけではなく手を出せないことの場合もある」

「……そう。そういうのもあるのね」

「手を出さなかったことが魔法に関すること……どういうもの?」

「扉」

「……扉」

「魔法による封がされている扉よ。中に何があるかも全然わからないんだけど」

「………………凄く気になる」

「でしょう? 気になるわよね?」


 魔法使いの国、エルデンブルグに存在する魔法による封印が為された扉。ユーナイト・ランティスも手を出していない謎の扉。夢見花とマギリアはその調査を色々と問題が山積みのこの国の事情から目を背けて気晴らし代わりに行うことにした……一応謎の扉に関して調べておかないとそれはそれで別の問題が起きるかもしれない、と思うところがあるのも理由の一因ではある。もっとやるべきことはあるだろうが。



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