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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十二章 終末の獣
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 公也たちとガルジェイスが裁きの魔物と戦い、ルーウィックたちとガルジェイスの仲間が裁きの魔物が生み出した魔物たちと戦う。基本的にルーウィックとその仲間は連携が取れるので問題ないがガルジェイスの仲間はいきなり連携を取ろうとしても上手くはいかない。一番の強者、リーダーであるガルジェイスがいないものの、彼らも一端のAランク冒険者のチームの一員。Bランクの強さは間違いなくあるのだから指示するものがいなくても戦える。もともと個で戦うことが多いが仲間内の連携が取れないわけでもない。なのでルーウィックはそちらはそちらに任せるということで彼らに戦ってもらうこととした。オルフグの件があるため慎重にはなるものの、問題なく、思いっきり彼らは裁きの魔物が呼び寄せた魔物たちと戦っている。


「さて……こちらはこちらで対処しなければ。私たちの方がメンバーが多いのですから彼ら以上に数を受け持たなければ。しかし、戦い続けるというわけにもいきません。相手の数も増えるでしょうからそのまま戦い続ければ戦線崩壊することでしょう。さっさと始末をつけないといけませんね」


 ルーウィックたちの方が数が多い。しかしその分個々の戦力はガルジェイスの仲間よりも落ちる。そもそも全員前衛と言えるガルジェイスとその仲間と比べ、ルーウィックたちはそれぞれの役割がしっかり分担されている。そのためどうしても直接戦えない、というメンバーもいる。連携して初めて強い、ということもあるため人数が多くても一度に戦える数はそこまで差はないだろう。

 そして今戦う相手の数は何とかなる数になっているが、この暗黒の森にいる魔物はこれだけしかいないということもないだろう。これからも向かってきて数を増やす。流石にこれ以上増えて来れば押し切られこちらがやられてしまう。そうなってしまうのは問題である。だから先にこちらが相手の数を減らす、魔物たちを倒すということになる。

 もちろんこの魔物たちはそれぞれが特殊能力持ちで厄介である。ただ、オルフグがやられた時の魔物や、公也に頼んだ魔物のように一撃死したり倒すのが無理に近い、という感じの魔物は今のところ見えない。もちろんその特殊能力次第でどうなるかもわからないが、まず特殊能力を発動する前に始末すれば問題はない。そういう点でも急ぎ即効殺すべきである。


「……クージェンのところの魔物が手ごろですね。行きましょうか」




 ルーウィックとその仲間たちは冒険者としてそこまで特筆した能力を持ち得ているようには見えない。もちろん身体能力に関してはルーウィックが飛びぬけていて他は同じくらい、AランクとBランクの冒険者としては平均的一般的な身体能力を持っている……と思えることだろう。しかし、そういった高ランクになるにはどうしても特筆した能力は必要不可欠。ルーウィックに関してはその特殊な行動能力……相手が動く前に既に動き行動に入っている、攻撃に移っているという意識の隙をすり抜けるような戦い方はあるが、それを含めてもそこまで特別高ランクになれるほどかと言われると微妙なところがあるだろう。実際公也が対応したようにその行動に対応できる存在はいる。より感覚で動くタイプの魔物であれば割とすんなり対応できるだろう。

 当然それがルーウィックたちの高ランクになる要件ではない。いや、仮になるにしてもそれはルーウィックだけの強さである。ルーウィックたちの強さはそのチームの強さ、その連携能力の高さである。これに関して言えばルーウィックの能力ゆえである。指揮能力、監督能力、そういったものではなく特殊能力……ルーウィックの持つ特殊能力ゆえ。ルーウィックの特殊能力はチームであるからこそ強さを発揮する能力である。


「こんなものですね」

「ルーウィックさん!」

「次の相手を。できる限り分散し相手をせず数を減らしこちらの優勢を保つように」

「わかりました」

「ケーカの方に応援を。私はカルティーの方に行きます」

「はい」

「ケーカはあちらです」


 ルーウィックはこの場にいる仲間の位置を全て把握している。それは仮に誰かが移動しても、どこに行ったとしてもわかる。ルーウィックは彼らと繋がっているからだ。ルーウィックの能力は伝達系統の能力……意思の伝達、意識の伝達、感覚の伝達……さらにそこに多少の強化、ブーストを加えることもできるもの。また相手の意思や思考などの能力の一部を借り受けることもできるものである。言うなればルーウィックのチームはそれぞれがそれぞれとして存在しているが完全な個ではなく群体、総体という感じであるものとなっている。

 ゆえにルーウィックの強さは個では完全に発揮できない。チーム出なければ彼は強くなれないという問題点がある。まあ一応個の強さもある。能力なしでも強いし能力で自身の強化もしているため単独でもまあまあ強い。とはいえAランクになれるほどではないだろう。チームであるからこそAランク冒険者としての強さを出せるという点でがある。そしてその能力でチームの仲間の強さも底上げできるし、その能力で指示なしでも戦えるし連携も極めて優秀なものとなる。ルーウィックたちのAランクの指定はほぼそのチームの強さがあっての物だったりする。冒険者ギルド側もどこまで把握しているかは知らないが……まあ、チームだからこそ強いということくらいは分かっているだろう。




「まだまだ来ます。上手く抑えていてください。行ける時に私が始末をつけますし、他の場所の仲間が魔物を倒せば加勢に行きますから」

「はい」


 他者の思考能力を借りているため自身の動きをどうすればいいのか、どうすれば最適な行動ができるのか。また相手の行動のどのタイミングに攻撃を仕掛ければ意識の隙をつけるのか。そういった部分の予測、先読み、観察、己の行動想定、そのほか様々なものを可能としている。その能力は強くはあるが、ゆえに他のチームとの連携を不可能にする問題点もある。メンバーの数をが多ければ多いほど強くなるが、その能力を迂闊に知らせられない、場合によっては思考を呼んでしまう、記憶を除いてしまうようなこともありプライバシー的な問題もある能力であるため増やしにくくもある。結構彼は彼で色々大変で面倒な立場だったりする。




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