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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十二章 終末の獣
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「ふうむ。なあ、あれをどう思う?」

「どう思うとは?」

「あれだよあれ。あの戦いだ。あの魔物は強さで言えばそこまででもない」

「そうですね。Bランクの冒険者たちでも勝てないことはないでしょう……決定打となる一撃が必要なのでCランクはつらいかもしれませんが数をそろえしっかり準備し相対すればCランクでも勝ち目があります。放浪魔の中でよほど危険で巨大な魔物を相手にするよりははるかに戦いやすい。倒せるかといえば確実ではなさそうですが」

「それにあの戦いぶりはちょっとAランクにしては弱くないか?」


 ガルジェイスが公也の戦いを見ての感想がこれである。実際公也とリーンが戦った相手は決して強くはない……Aランクの冒険者基準での話ではあるが。実際にBランクやCランクの冒険者が相手をするならなかなか厳しい……特にCランクは厳しいだろう。技など強力な一撃を持っていないとどうしても倒しづらい相手である。人海戦術を使いうまく相手の踏み付けからの接地を防げばCランクでもなんとか戦い勝つことは不可能ではない……もっともその際の犠牲者はひどいことになりそうだ。

 数を用意すれば勝てると、準備をすれば勝てると言っているが、それはあくまで相手を倒せるということでしかない。その際の犠牲、こちら側の被害を一切考えずただ勝つことを考えるなら、の話である。今回の魔物は無限ともいえる回復性能を持っている。それを防ぐか、それを実行する前に攻撃できる、相手の回復を不可能にしなければ勝つことはできない。Cランクの冒険者は基本的に技を持つことが少ない。Bランク以上は持っていることが多く、技があるならば協力ない一撃を振るえる可能性は高く、それで足を切断できれば勝ちを拾うことはできるだろう。ゆえにCランクはリーンのやったような相手が回復する前、回復できない状況下で足を何とか切断しなければいけない。そのための犠牲、被害はかなりのものとなるだろう。これはCランクは甚大な被害になるがBランクでもそこそこな被害は出る。とはいえ、Cランクに比べれば大したことはないだろう。

 まあ、そういった話であるのだが、それゆえにAランクであれば問題なく楽に勝てる相手……という話になる。実際公也はあっさりと倒している。ただ、ガルジェイスからすればそれはAランクの冒険者らしい強力な攻撃を振るう戦い方ではないという意見になるようだ。とはいえ、リーンも公也もほぼ単独で戦い勝ちを拾えるところまで行っている点、さほど時間をかけずに決着をつけている点では決してAランクに見劣りするというレベルではないだろう。リーンも単独Bランクの冒険者でチームでAランクになれる冒険者に劣らないレベル、十分な結果を出しているものである。


「そんなことはないと思いますよ。そもそも彼は魔法使い。それなのに剣で戦っているわけです。魔法であればあれより強力な一撃を手早く放てたでしょう。それなのに剣で、しかもそこまで時間をかけずに比較的あっさりと。それは十分すぎると思いますが」

「そうか?」

「もう一方で戦っていた彼女はBランクの冒険者ですが単独でそのランクに上り詰めた人物です。その冒険者でも結構な苦労をする相手に至極あっさり勝っているわけです。そしてさらに奥の手隠し玉、もっと強い戦闘手段を有している……Aランクに十分相応しいくらいの実力ですよ」

「単独Bランクか。確かにそれならAランクと同等くらいでもおかしくはない……にしては、そこまで目立ったものでもなかったな。いや、あの様子は相当あれな感じだが……っていうかあれ、踏みつぶされてなかったか? あれたぶん普通は死んでるよな?」

「恐らくはあれは確かに死んでもおかしくはなかったかと……ですが実際には生きています」

「おかしいよな」

「Bランクにもなっている冒険者です。隠し玉の一つや二つあるでしょう。それが何かは分かりませんが、その推測の一端にはなるのが今回の戦いの様子ではありませんか?」

「……まあ、深く追求するものでもないのは確かか。本気で戦っている姿を見てみたかったが」

「これで十分でしょう。少なくともこれ以上の実力を持っているというのは確実……人数の少なさは欠点ですが、少なくとも強さはしっかりとしている。であればそこまで大きな問題はない」

「先に行かせる方がいいか?」

「先陣を任せる形ですか……確かに先行させる方がいいかもしれませんね。人数的には私たちが後方の方が?」

「うーむ……いざというとき俺たちが加勢すれば人数的には多くなる。お前たちの方ではどうなる?」

「全員は厳しい、でしょう。もともとあまり私たちは分けて戦うのには向いていない部分もあります。私たちは私たちだけで戦うのが一番強い。そう考えると……」

「真ん中よりも後ろの方がいいか。俺たちが真ん中、あいつらが先、お前たちが後だな」

「そちらが先でもいいかもしれませんが」

「性格的に確かにその方が俺たち向きかもしれない……ま、そのあたりは俺もわからん。あいつらの意見も聞いてみる方がいいか」

「ええ、そうしましょう。こちらだけで勝手に決めても仕方がありませんね」


 公也とリーンの実力に関してはとりあえずガルジェイスとルーウィックは問題なし、という判断の様だ。メルシーネの強さは判断しきれないが別段動き自体は二人に劣るものでもない。そちらは今はおいておくとして、ともかく二人の強さがわかったこともあり先頭に問題は無し、ということでどうそれぞれの位置を決めるか、配置するかを考える……いろいろ疑問はあるが、Aランク冒険者ともなれば隠し玉の一つや二つや三つはある。奥の手も複数あることが多い。

 さて、誰が先を行くか、誰が後ろにつくか。先に行く冒険者は一番危険が多い。もちろん前から来る相手ばかりではないため後ろから襲われるということもある。後ろも危ないが、やはり前を進む方が魔物と当たる可能性は高い。戦闘において、公也たち、ガルジェイスたち、ルーウィックたちはそれぞれ戦い方にいろいろと制限がある。これはそれぞれの武器や基本的な戦闘スタイルの問題……ガルジェイスたちは縁故り攻撃ができない、という点で後ろの方は任せづらいだろう。まあ後方の冒険者は前の戦いに加勢するよりは後ろに控えバックアタックを防ぐ方が性質としては強いだろう。そしてルーウィックたちは人数が多く、その多さは自分たちだけで戦う場面でしか活かしづらい。他の冒険者と協力するのはなかなか難しいものなのだから。そして彼らの強みは自分たちだけでいる時にあるというのもあった。ゆえに分けることはできない。もし加勢するならガルジェイスたちに公也が、公也たちにガルジェイスが、という形になるだろう。ゆえに前を行くのは二人のどちらかがいいとみることはできる。遠距離攻撃をできることを考えれば……どちらかというと公也たちが真ん中にいる方がいいかもしれない。まあ、そのあたりは彼らが話し合って決めるべきだろう。戦い終わった公也と合流し、そのあたりのことを話して決めることになる様子である。




「…………」


 そんな話を残っていたヴィローサが聞き耳を立てて聞いていた。ちょっとイラっときている様子だが……とりあえず今回は爆発することはなかったようだ。




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