表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十二章 終末の獣
1395/1638

14



「ふっ!」


 公也が右の足……公也から見て右側、向かって右側の足なので左足の怪物相手に切りかかる。相手の足の肉質自体は強固なものではないらしくあっさり斬り裂けている。


「決して強そうには見えないの、です!」

「っと……ん?」

「……傷がないのです?」


 メルシーネも追随するが一撃を与えるにはメルシーネでは攻撃力はともかく射程距離が厳しい。なので近づいた時点で相手が踏みつけようとしてきたところでそれ以上は行動できなかった。避けるしかなく、また近くにいた公也も避けるしかない。足がその身を上げた時点で距離的に公也も攻撃するには厳しい。ミンディアーターは多少遠距離でも攻撃が届くようにできるからある程度離れても問題はないが……それを使う必要があるかは疑問、それに避けなければ踏みつけられてしまうため避ける必要はある。

 そして踏みつけを避けた……はいいが、その足に傷はなかった。確かな手ごたえを公也は感じていたし、公也自身もメルシーネも傷がついた状態を確認している。確かにそこに傷はあったが、踏みつけを避けた後に足を見るとそこに既に傷はなかった。


「回復? それにしては異常な速度……」

「回復したというには速すぎるどころの話じゃないのです。治る瞬間が見えなかったのです。一瞬でいつの間にか傷が消えていた、と見るべきじゃないのです?」

「確かに……っと!」

「また来たのですね! 避ける分には問題ない速度なのでいいですけど」


 治った、というにはあまりにも速すぎる治癒速度である。一瞬で元に戻った、と表現する方がまだ的確ではないかと思われる。


「とりあえず……確認だ!」


 斬撃を飛ばし左足を傷つける公也。無数の傷がついて行く。流石に一刀両断するほどではない。できなくもないが、一撃の準備と力の消費とを考えれば……また他者に見せつけることも考えれば多少控えめにしておいた方がいいという考えである。そもそも魔法使いとして見られているのだから魔法を使った方がいいだろうという話なのだが、なんとなくリーンと合わせるかのように斬撃、武器による近接攻撃で戦っている公也である。特別な意図はないがなんとなくそういう感じになってしまった。


「……踏みつけと同時に、足が接地すると一瞬で傷が消えるか」

「治るというよりは直るか戻るという方が正しいのですね」

「…………見た目だけでも相当異質だけどその特性もかなり特殊だな」


 足だけという見た目も異質ならその持っている特殊能力もまた異質……いや、この回復が特殊能力とも限らないが、その可能性が高いと言わざるを得ない現象ではあるだろう。少なくともいくら治癒能力が高くとも一瞬でつけた傷が完全に治る理由がわからない。少なくとも治る過程が見えているわけではないのだから。その傷は公也の言う通り足が地面についた時点で消え去っている。理屈や理由は不明だが要因さえ分かっていればあとはどう対策をとるか。問題は地面がどこまで含まれるかと接地したとみなされる条件だろう。


「試してみるか…………はあっ!」


 足は一般的な人間の足に等しい。もちろん大きさや下半身の足以外の部分がない点、他の場所がないし繋がっていない点など異常な部分はあるが、足自体の形状は人間の足と変わらない。ならばその足が地面を踏むには、足……足そのもの、太ももやふくらはぎ部分ではない先の部分、つまりは足なわけである。より正確に言えば足の裏、あるいは足底などと呼ばれる部分。仮に……足を失いふくらはぎと太ももしかない状態、その先の部分で接地した時、それは足で踏んだと言えるのか。あるいは仮にそうだとしてもこの足だけの魔物がそれで元に戻るのか、足を一瞬で復活させる可能性があるのか。


「おっと……ふむ、これだと戻らないか」

「足で踏む、という事実によって元に戻るみたいなのですね。最適な状態への変化……正しい状態へ戻るようになっている、のです?」

「それはわからないが……これで攻撃性能は落ちる、かな!」

「攻撃の凶悪さは上がったのですね! でもこれ以上の回復はしないのです!」

「なら後は足を攻撃し続けるだけか」


 いくらこの足の魔物が耐久性が高くとも、傷つけば倒れる……通常の魔物とはるかに違うものではあるが、殺せば死ぬのは生物である以上変わらない。問題はどうやれば殺せるか、殺しきれるかわからない点である。仮にいくら傷つけても死なない可能性はあり得ないとは言えない。とはいえ、ここまで行けば後は傷つけて行きどう変化するかを確認するくらいである。


「……これリーンの方は大丈夫か?」





「っと! 重い!」


 公也に心配されたリーンは踏みつけの攻撃を避けることをせずに真っ向から受けていた。リーンは斧で足を受け止め、それにより足の裏は傷つく。しかし接地しているとみなされないためかその傷は回復しない。繰り返せば足の裏を傷つけまくることはできる。しかし地は流すがそれで致命傷になるかは怪しい。


「くぅっ! また重くなった!」


 そして足の踏み付けの攻撃は何度も何度も何度も、攻撃すればするほど……踏みつける力自体が強くなるらしい。リーンはそれを受け止める自分自身で体感している。


「まだまだ!」


 何度も何度も受け止めるリーン。既に最初の時よりもかなり踏みつけの力が上がっている。しかしリーンもそれに負けていない。押され気味ではあるがどんどん強くなる力に適応していく。彼女の<不屈>は自分が押されれば押されるほど、それに対抗するように自分の力を底上げする。屈しないという気持ちが負けない力になっていく。しかしお互いに力がどんどん上がっていくのであれば……どうしてもどちらかに限界が訪れるだろう。


「うう…………ダメだー!」


 そして最終的に負けたのはリーンのほうである。踏まれ潰されてしまうリーン。<不屈>の底上げはどうしても限度があるし上昇もそこまで極端に上がるわけではない。それに対し足の踏み付けは一定の上昇を続けていた。ゆえに先にリーンの方が力負けしたのである。

 彼女を踏みつけた足は彼女を潰した事実に満足した、あるいは勝利に酔っているのか……踏みつぶしたまま動きを見せず足を上げない。まだ公也もいるが、そちらのことは気にしていない様子である。もっとも……これでリーンが死んだわけではないのだが。


「おりゃーっ!」


 足を斧で切り裂き、その中に入り、食い破るように足の甲から出てくるリーン。血で真っ赤、肉片もくっつき少々恐ろしい姿となっている。そしてそのままリーンはまるで木を切り倒すかのように足に斬りかかっている。そのまま足が切り落とされ……結果として公也たちの方と同じようになった。後は残った部位をどうにかするだけだが、リーンでは若干射程距離が微妙なところである。まあ、公也が加勢してきたため特に問題なく決着はついた……リーンの見た目のあれなところの問題がある以外は。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ