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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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 公也の提案、貴族位を受けた後でも冒険者として活動できる自由性の要求に関して。これに関してはキアラートの王城にてこの国の運営を担う主要な人物、重要人物たちの間で話し合われた。自国の貴族が余所の国に出向き勝手な行いをしているとなるとその苦情、行動に対しての賠償をキアラートの国が受ける可能性がある。その一点を考えると公也を自由にはしづらい。だが自分たちが公也に対し押し付けているアンデルク山、アンデルク城の運用とその維持、その地の守り。実はこれは得になることが極めて少ない事柄である。

 理由としては山の上にあると言うこと。山の上にあるアンデルク城は生活するのに極めて大変な場所である。近くには住みやすい場所はなく、せいぜいが山を少し降りたところに森があるくらいでその場所は獣や魔物の宝庫。安全はなく、危険ばかりでその上でトルメリリンから来るかもしれないワイバーン部隊から城を奪われないように護らなければいけない。貴族の位を受け領地を得たと言ってもアンデルク城しかなくそこに領民はいない。人を連れてくるにしてもワイバーンで行かなければならず基本的には人がいない。公也に与えられる貴族位も最低位のもので名誉爵位に近い。本当の意味で正式な爵位を与えるわけではない。まあ領地を経営すると言う体裁をとる以上は一応領地経営を行える爵位ではあるだろう。最低位とはいえ、きちんとキアラートの国の貴族として列席する物であることには違いない。だからと言って問題が多いことには変わりがないが。

 そしてその役目を押し付けてアンデルク城に閉じ込める……とまではいかずともその場に留まらせる場合冒険者の仕事ができない。普通は貴族になれば悠々自適な生活が送れるようなものと思われることだろう。しかし公也が受ける貴族位では貴族に与えられる給与の類は雀の涙と言える。まああくまで貴族としては雀の涙というだけでやはり貴族らしい結構な額の給与ではある。だが普通の貴族、領地を持つ普通の貴族は領民からの税収もある。それが公也の場合はない。それはつまり貴族としては雀の涙の給与で生活しなければならないと言うこと。もう一度言うことになるがアンデルク山は住みにくい。高山地帯である。そんな場所で生活を送るのがどれほど大変か。気温、空気の薄さ、植物の育成、水の確保、食料の調達、街への移動。様々な点に難しいと思わざるを得ない点が多すぎる。

 公也に貴族位を与えてまで、冒険者を貴族にしてまでアンデルク山、アンデルク城の維持を押し付けるのはつまりそういう理由からだ。貴族の誰もが行きたがらない難所がアンデルク山だからである。そもそもアンデルク山をそう簡単に使えるのであればトルメリリンとキアラートの戦争の内容の一つにその山の奪い合いもあったことだろう。だがそうはならず、その場所に行けるのは登るのすら難しい登山を成したものか森、山を越えて移動できるワイバーンでの移動が可能なワイバーン部隊などのワイバーンを駆る者のみ。もしかしたら他にもあるかもしれないが今のところ判明しているのはそれくらいである。それほどまでにアンデルク山は登りづらい。


 ゆえに。公也の提案をキアラートの国は受け入れるしかなく。公也は貴族の位を受けながら冒険者としての活動を許容され自由な国の行き来を許されることとなった。もっとも、その代わり別の国では貴族の力を使うことは無理であるとされ、また何か問題を起こせばその分の賠償の請求は公也に行くこととなった。まあそのあたりは当然と言える事柄かもしれない。

 公也としては冒険者として活動できればいい、自由に色々見て回りあちこちで自分らしく活動でき様々な知識を得られるのであれば。別にお金は公也としては重要ではない。欲しい物を買う時に使うかもしれないくらいでそこまで重要視はしていない。そしてアンデルク城、ペティエットとその意思の宿る城魔を誰かに渡すつもりもない。なのでそのキアラート国の話を受け入れ、公也は貴族になることが決まった。Cランク冒険者で貴族である少々特殊な立場である。


「キイ様、おめでとう!」

「別にめでたくはないと思うけど……いえ、めでたいのかしら。でもキミヤ君がまさか貴族になることを了承するなんてね」

「そうかい? 別に変なことではないと思うけどね。キミヤ君は様々な方面の知識を求めてたから。貴族になるのも一つの経験だ、ということでなることを望んでいたんじゃないかな?」

「師匠流石っす! っていいたいっすけど……貴族になって冒険者としてはどうなんすか?」

「冒険者はCランクに上げられることになってる」

「一人前の冒険者ね……まあ、実績としては妥当な所かしら」

「Cランクっすか……冒険者の中でも本当の意味で冒険者として認められるランクっすね」


 基本的に冒険者はFランクでもAランクでも冒険者であることには変わりない。だが、冒険者になっただけでは立派な冒険者、一人前の冒険者としては扱われない。功績があり、立派に仕事をし、冒険者として正しく仕事ができそれだけの能力があると認められてこそ初めて一人前。職人と同じ。鍛冶師になった人間が鉄を打ち武器を作ったとしても、その武器が歪んでいたり粗雑であったりすれば武器として使えてもそれを作った鍛冶師が一人前であるとは言えないだろう。冒険者も同じ、きちんと仕事ができその能力があると認められて初めて一人前ということだ。公也の場合は少々特殊な扱いになるが。公也は一応ギルドの仕事はしているが実績としてはギルドに対する貢献はそこまで高くなく、国に関する仕事や街の防衛などの大仕事ばかりで大きな功績を残しているからこそ、である。


「しかし、これから大変になるねえ。ワイバーンの所有を許可されたとはいえ、僕らの分も含めて五体。そもそも僕らは乗っていくことが難しいんだけど」

「食料の購入もいちいち下りて行かなきゃいけないから大変よね」

「……二人は残るつもりなのか?」

「ええ。一応私たちは魔法使いであなたの知り合い、それゆえに与しやすいと監視要員にね」

「どうやって報告すればいいんだろうね? キミヤ君ならともかく僕らはワイバーン使えないのに」


 ロムニルとリーリェもアンデルク城に残るようだ。それは一応そういった指示を出されたと言うのもあるだろう。一応二人はキアラートの所属の魔法使いであるため国からの指示は優先的に受けざるを得ない。研究者の魔法使いであるのになんとも大変な話である。


「まあ、私たちとしてはキミヤ君といる利点もあるわ」

「魔法に関してはかなりの知識を持っているし、発想も僕らにない観点を持っている。この城を手に入れた時の魔法とかもね」

「……そうか」


 彼らには彼らで公也を利用する……という言い方をすると悪く思えるが公也の魔法に関する事柄に関しての発想力、知識を自分たちの糧にしたいと考えている。公也も友人と考えている二人が残るのは人付き合いの観点からもありがたい。公也が無理に担当せずとも場合によっては二人に任せて置ける。また冒険者として外に出ているときに残る人員としても置いておける所がいいだろう。公也としても二人は利用できる……というと言い方が悪いが協力関係を結べる相手である。


「そういうことなら、よろしく頼む」

「ええ、よろしく」

「よろしく頼むよ」

「……いい雰囲気っすけど、俺はどういう扱いっすかね?」

「キミヤ君のパーティーメンバーかな?」

「一冒険者でここにいるだけの人間よね?」

「フーマルは大人しくキイ様についていけばいいのよ。それ以外には何も求めないわ」

「…………俺は師匠として、フーマルを鍛えるだけだな。ちょうどこの山には魔物も獣も多いし」

「ええっ!? ちょっとここは俺には厳しいんじゃないっすかねえ!?」

「ワイバーンに乗って山を下りられるくらいの実力はつけてもらわないと困るな。じゃないと一人じゃ下りられないぞ?」

「うっ!? ううう……そ、それは」

「それって私たちはどうしたらいいかしら……」

「僕らも下りるのは大変だしなあ……」


 色々とここに残る理由はあり、ここで過ごすのは別に彼らにとっては悪いことでもない。問題があるとすれば、どうやって山を下りるかその一つにつきることだろう。公也以外ではワイバーンを御すのは難しい。


「一応私が協力してあげる。キイ様と離れるのはいやだけど……キイ様もキイ様で色々と忙しくなるだろうし、私がそれについてくのは場合によっては難しいものね」

「……確かにヴィラならワイバーンを抑えられるか。必要があったら頼むよ」

「ええ! キイ様の頼みなら私は精一杯頑張るわ!」


 ヴィローサの存在、そのおかげで問題として挙げられていることは解決しそうである。今すぐそれを実演すると言うわけにはいかないが、必要となれば実際にヴィローサが手を貸し移動することになるだろう。もっとも公也から離れるのは本当に必要なとき以外は嫌がりそうではあるが。



※主人公に与えられる貴族位はほぼ最低位。領地系はできる程度ではある。そもそもいくら功があるからといって冒険者を簡単に貴族にするなんてことはありえない。今回の場合城の守りの問題と城魔の主になっていることなど様々な点の問題解決のためのもの。極めて例外的な事案。

※多分今回の一番いい解決方法は城を解体すること。城が発生するという異常でもなければ魔物や獣が数多く住まう山に城を作るのはかなりの難事。今回と同じように城を利用することができなければ問題は解決する。主人公が所有者となったためそうするのに問題が発生したのでできなかったが。

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