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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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 ゼーメストとリーンが暴れた後片づけをセージたちが行っている。その一方で別に動いている者もいる。


「全員麻痺させればいいわよね。魔法使いとかいちいち把握しなくてもいいよね」

「流石にそれはダメなのです……」

「なんで?」

「殺す気のない麻痺でも死ぬ危険はあるのです。子供、赤子は動けなくなるだけでも大問題ですしその世話をする人間が行動できないのも問題なのです。また料理をしている状況下で麻痺させられれば火の問題があるのですよ。他にもいろいろ、ともかく無関係な人物を麻痺させるのはダメなのです」

「めんどくさい……」


 ヴィローサとメルシーネである。こちらは基本的にあまり戦場付近、危険があり得る場所にはあまり行かない感じである。ただ、それでもヴィローサは己の役目を果たそうとする。毒による麻痺、魔法使いたちを行動不能にするための活動……はっきり言ってヴィローサであればメルシーネが一気に街中を駆け抜けるのに合わせて力を使うだけであっさり全滅……いや、全員の麻痺、行動不可能状態を作り出すことはできる。ただ、その際の被害は絶大なものとなる。

 麻痺による死はない、ヴィローサが毒を完全に制御してその性質を操作しているため本当にただ動けなくなる、一時的な麻痺で済ませることはできる。ただ、麻痺することによる行動不可能になることによる弊害はないわけではない。例えば赤子や寝たきりの老人みたいな現時点で生命力の高くない人物。これらを麻痺させてしまえばそれによって結果的に死ぬ危険はある。例えば現在火を使っている人物。火をそのまま放置してしまえば最悪火事を起こす。そしてその火事は燃え広がり消す者もおらず、結果として被害が大きくなりすぎてしまうだろう。例えば現在階段を昇っている人物。麻痺してしまえばそのまま落下、受け身すら取れず当たり所が悪ければ死んでしまう。そういった様々な人物、これらの例に限らず様々なパターンで麻痺してしまうことによる死亡の危険があり得る。その危険がある以上はヴィローサにその力を乱暴なやり方で使わせるわけにはいかない。

 とはいえ、ヴィローサの言う通り面倒くさい……という方向性だけではなく、そもそも危険なところに連れて行き辛いという面でメルシーネはどうしてもヴィローサを連れて魔法使いの方に行くのは難しいだろう。もっともならばどうするのか、という話になってくるのだが。


「それなら私はどうするわけ? キイ様に頼まれた通り、行動するしかないんだけど?」

「こちらもヴィローサを守るように頼まれているのです。近づいて……魔法使いだけに限定するわけですけど、麻痺させて倒す……いえ、倒すというか動けなくする、ですけど」

「じゃあさっさとしましょうよ」

「あの二人の戦いに介入するのもどうかなのですし、あの二人がどうにかした魔法使いはセージたちが対応しているのです。そこにわたしとヴィローサが介入するのはどうなのか、と思うのです」


 ゼーメストとリーンが戦っている場に介入するのは危険度合いという点でもあれだし、二人の邪魔をするのも場合によっては敵認定されかねなくて危険、そもそもメルシーネとヴィローサが手を出す必要もない。二人だけで十分やっていける。


「ならどうするのよ?」

「そうですね……裏、魔法使いたちが戦っている場以外の対応でもするですか」

「どこよそれ?」

「この国には魔法使いの一族、これまでの魔法使いたちの血族が存在するのです。あのマギリアとかいう反抗組織のリーダーがその一族の一つなのですね。もちろんその親や別のこもいるですけど。そういった魔法使いは今回の件で動いている可能性は低いのです。ゼーメストやリーンが暴れている件はそもそもこの国を訪れたならず者の手によるもの、というのが向こうの考え方なのです。今回二人が大暴れすることでこの都市に待機していた魔法使いたちを引っ張り出すことができているわけですけど、結局のところ引き出せているのは重要人物でも何でもない雑兵なのです。でもそうでない魔法使いもいるのですよ」


 今回参加している魔法使いがこの国の全戦力というわけではない。この地、この都市にいない魔法使いは除外してもいいがこの都市にいても別に軍の招集に応える必要のない魔法使いはいる。わかりやすい例で言えばユーナイトがそういう例だ。そしてユーナイトがその下に置いている部下は当然魔法使い、魔法使いであれば全員が戦えるというわけではないが……この国では基本的には研究者よりも戦える魔法使いの方が圧倒的に多い。つまり招集に応じていない魔法使いでもいつでも戦い動くことができる、ということだ。さらに言えばそれらは多くの場合は重鎮に取り立てられるほどの存在、つまりは実力者。魔女とユーナイトが戦った時に一緒についてきた人員たちのような、実力ある魔法使いである。テレナの家であるマーキエルもまた同じようなものとして見ることができるだろう。そういった人員の参加はおそらくない。

 そしてそういった人員がもし動く可能性があるとすれば、それはユーナイトが戦うような状況……あるいはそのユーナイトに挑みかかる途中となる。つまりは公也たちを遮るように彼らが壁となる、ということになるだろう。


「そういった相手をどうにかするのです」

「ふーん? まあ別にいいけど。それで、そいつらはどこにいるの?」

「可能性として最も高いのはおおよそ重要施設と思われる場所なのですね。力ある魔法使いはこの国では相応の立場になるのです。マギリアの組織の人員が制圧するべき場所もそういった場所になるでしょうし、そちらの手助けになるように動けばいいのですよ」

「あっそう。私はあまり気にしない……いえ、どうでもいいことなんだけど」

「ご主人様の役にも立つですよ? 一番上と戦うとき邪魔ものが入らないほうがご主人様には都合がいいと思われるですし」

「よし、ならすぐやりましょう、殺しましょう!」

「殺したらだめって言われてるのですよ。きっちり麻痺して動けなくさせるのです……もちろん相手が死なないように安全を確保したうえで、となるですが」

「別に麻痺させてからすればいいじゃないの。さあ、さっさと行きましょ。お前が連れて行かないと私行けないじゃない。守るのキイ様に言われたんでしょ」

「…………なんとも我儘な姫様なのですね」


 メルシーネに無理を押し付けるヴィローサ。結構な面倒事ではあるが、それもまた彼女の仕事である。多少は仕方のないことだ。



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