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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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「ちょっと? 大人しくしててほしかったのだけど?」


 マギリアと公也が隠れて会っている。現在公也は魔法使いたちと交戦したこともあって安全な状況にない。魔法使いたちが倒された事実に関してはその場で見ている者が多かったものの、魔法使いたちは公也たちに挑み返り討ち、そんな事実を伝えるのも彼ら一般市民は難しいし魔法使いに対する嫌悪や敵意もある。流石に倒れているところを殺すとかそういうことはしないが、介抱せずに放っておくとかそういう感じではある。ぶっちゃけていえば下手に介抱するとそちらの方が危ない。八つ当たりで何をされるか分かった物ではないのだから。

 そういうこともあって現状公也のことは伝わってはいない。しかしそれも時間の問題であり、伝わってしまえば魔法使いたちが大挙して公也たちを襲うことだろう……その前にマギリアは公也と話さなければならなかった。いろいろ予定通りにはいかなくなる、大騒動確定の問題事なのだから。


「……そうしていた場合、いつそちらは動くつもりだった?」

「……それは」

「ずっと動かなかったからこっちで動きを見せた……まあ、厳密に言えば動くつもりで動いたわけでもなかったけどな」


 公也たちが動いたのは結局のところセージの意思……ではなく、街で起きていた騒動が故である。セージが騒動に介入することを主導した事実はあるが、根本的には街で騒動が起きていたからこそ。その騒動が魔法使いが原因で起きていたからこそ。


「街で起きていた魔法使いが起こした問題……騒動、それが原因だ。見過ごした方がよかったか?」

「……それは、その」

「現在ここ、この国の王都で起きている問題、騒動、それはどれほどある? このまま放置していていいのか?」

「…………いえ」

「魔法使いが問題を起こし、一般人の方で魔法使いに対してのヘイトが溜まる、敵意が増える。このまま放置していけば魔法使いたちと一般人の間に大きな溝ができる。そうなれば後々良くないことになるだろう」

「そうね……」

「そっちの組織が放っておいたことで治安の悪化、魔法使いとの一般人の関係悪化、仮に魔法使い至上主義をどうにかできても魔法使いとの関係が悪いままだったら意味はない……それにそっちの組織も魔法使いの起こしている騒動を放っておいたまま、助けるようなことをせずにいる。そんな状態で魔法使い至上主義をどうにかしても信用は得られるのか? 今まで何もしないでいきなり上をどうにかしたとして」

「………………」


 街で起きている騒動を放っておいたままいきなり魔法使い至上主義をどうにかしても果たしてどれだけ受け入れられるか。それまで街で起きている問題を解決していない、人の助けになっていないそんな組織が。下の方から見れば上にいる者同士の勝手な争い、自分たちのことも考えないで好き勝手しているとしか思えない。そもそもマギリアは魔法使い、それもこの国に根差している魔法使いの家柄。ただの権力争いにしか見えないし魔法使い至上主義を排したとしても結局上に立つのは魔法使い。下から見れば同じ魔法使いである。ただ頭が変わって至上主義とかいう暴虐が多少緩和しただけ、そうにしか見えないのではないか。

 しかし問題を解決すれば、人助けをすれば、少しは印象は変わる。もちろんこれまでの被害が消えるわけではなく、これまで動いていなかったことは事実としてあるが、それでもまだ公也たちではあるが彼らの組織に関わる人間が魔法使いから一般人を助けたということになるとマギリアの組織は自分たちを助けてくれる組織なのだと認識してくれる可能性はある。

 まあ、公也は今回の騒動を起こすうえでそういったいろいろな物事を考えたりはしていない。あくまで今回のことを起こした後、なんかそんな感じでいいんじゃない、的に思っただけである。実際のところ公也にとってはそういう事に関してはどうでもいい。あの場においてただ見捨てるのはちょっと、という気分だったとか別に魔法使いが襲ってきて戦うようなことになっても問題はないとか、むしろそうなった方がいろいろと手っ取り早くて楽、とか思っていた感じだろう。


「まあ、そのあたりの話はどうでもいいんだ」

「いや、よくないわよ?」

「今回の件、俺が動いたことで確実に状況は変わる。そうだろう?」

「……そうね。集められた魔法使いに動きがみられるでしょう」

「そうなるとそちらはどう動く? 俺としては別に俺たちの方で全部どうにかするのでもいいんだが」

「それは流石に……あなたたちが全部解決してしまうとこちらも立つ瀬がないわ」


 公也にとっては自分たちだけでも十分問題なく今回の件の解決……まあ厳密には公也は魔法使い至上主義をどうにかする目的よりもテレナの救出が本題なのでそれさえ終わればいい話、その後この国で何が起きようが関係はない……というと少しあれだが、そうなっても別にいい、どうなってもいいと放置する可能性はないわけではない。まあここまで来た以上はある程度ちゃんとやるつもりはあるだろう。だからこそマギリアにも今のように宣言している。

 しかしマギリアたちの側も公也が好き勝手することを許容することはできない。成果の問題ではなく、また勝手をされることの問題ではない。自分たちが関わらないで物事が進んでしまうことの問題だ。マギリアたちが関わらず公也たちがどうにかした後、マギリアたちがその成果を奪ったように見えてしまうのはいろいろ問題がある。


「……すぐに動かすしかないわね。流石に既にことが動いた後で暢気に話し合いはできないでしょうし」


 ただ傍観しているだけ、何もせずに話し合いだけしてすべてが終わるのを待つ……ということでは何にもならない。マギリアたちも公也に合わせ動かざるを得ない。彼女らにとっては色々と公也たちには面倒を起こしてくれたな、と思うところではあるが…………今回の勝手な動きがなければもしかしたらもっと先、最悪本当に何もできずに終わった可能性もある。無理やりにでも突き動かさなければ動くことはなかった、そういう点ではある意味公也たちには感謝するところもある……もっとももう少し何とかいい手段でやってほしかった、という気持ちはあるかもしれない。まあそんな手段はおそらくないだろうが。



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