表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
1353/1638

37




 結局公也とセージたちは外に出て様子見をしている。なんだかんだ皆ずっと宿に缶詰めというのもなかなか辛いものである。そういうことで公也の保護の下、外に出ることとなったわけである。まあ公也の見た目が魔法使いっぽくない点で魔女以上に絡まれやすそうなのがまた問題なのだが……公也は公也で魔法を使うのに杖よりもミンディアーター、剣を使った方が都合がいい。基本的にこの世界における杖は魔法の補助具、詠唱や呪文の魔法式の補助、あるいはそれそのものが魔法式の類ということで便利に使える道具であるが公也の場合はミンディアーターがまともな杖以上の性能を誇る。なので剣の方がいい……となるのだが、やっぱり剣を持っているとどうしても魔法使いに見えづらい。魔法使いとしてわかりやすくするには魔法を使うしかないわけであるが王都では魔法を使いづらい。まあそれは相手も同じ、魔法使いとしての強さを示すだけなら魔法以外の手段もないわけではない……まあこれもできる人物できない人物もいるだろうが。


「……雰囲気が悪いな」

「ところどころで魔法使いが問題を起こしているみたいですからね。問題が起きて店を閉めた、怪我をした……いろいろあるみたいです」


 セージたちも魔女と一緒にいろいろと王都の中を見ていた。そんな中でそこかしこで問題が起きている。毎日、魔法使いによる問題が。もちろん常に同じ人物ではない。場合によっては同じ人物が連日起こしていることもあるが、そこまでは流石にわからない。


「……数が多いからな。しかし、このまま魔法使いたちを放置していても問題はないんだろうか」

「それは僕らに聞かれてもわかりませんよ……僕らだってどちらかというと絡まれる側ですし。抵抗はいくらでもできますけど、キミヤさんがいないと面倒にはなるでしょう」

「そうだな。あれくらいの魔法使いならセージたちでも問題はないだろうが……この国では面倒になるだろう」

「こうして外に出て気晴らし……という気分にもなりませんよね、この状況じゃ」


 空気の悪い王都の中を見て回ったところで気晴らしにはならない。より鬱屈とした感じになるだけである。一応気晴らしは目的の一つではあるものの、本題はどちらかというと様子見である。まあ見て回らなくても色々良くない空気雰囲気の状況にある王都であるとわかる状況なわけだが。


「……ん? あれは」


 王都の中を歩いていると人の集まっている様子が見て取れる。ざわざわと騒がしいというか、悲痛な雰囲気というか。


「人が集まってますね」

「行く?」

「何があるかちょっと見てみたい」

「気になるかなー」

「気に……なる!」

「ええ……いや、いきなり決められることでもないでしょ」

「いや、行こうか」

「ええ……あっさり……いや、まあ僕は別にキミヤさんが決めたなら従いますけどね……」


 ノリがいいというか、軽い気分で何かあるのかと見に行きたがるセージの仲間たち。そもそもセージが一番彼らの中ではお堅い人物である。まあそんな彼も公也についてきている以上はその意見に従うしかない。仮に嫌だと思っても離れるわけにもいかないし結局ついて行くしかないわけであるし。




「……これは」

「嫌な光景ですね」

「これ大丈夫?」

「……ほんと、こういうのは嫌だね」

「あれ、大丈夫かな?」

「あー……とりあえず今のところは大丈夫だろうけど」

「磔……処刑? 見せしめ? だが理由は……? バレているわけではないだろうし……見たことはない。つまり別のもの……」

「あそこにいる魔法使いが何か準備しています。それが何か関係するんじゃないですか?」

「……みたいだな」


 人々が集まっている状況、それが何によるものかというと人が磔にされている状況、そしてそれを魔法使いが何やらするつもりで準備をしている状況である。はりつけにされていると言っても別になにか酷い状況ではない……いや、酷いと言えば酷いか。雑に柱を立ててそこに括りつけているような状況である。何というかきちんとした体裁をとったものではない辺り、国や軍とかそういう組織が行っているわけではないというものなのだろう。


「さあ! これから魔法の実験を始める! 標的はあいつらだ!」


「……碌でもない」

「……そうですね」


 魔法使いが魔法を行う、その実験という名目の行動らしい。公也からすればそんな行為をすること自体意味を感じられない。まあ彼らからすれば意味はあるのだろう。魔法使いとして実験、人減を相手に実際に魔法の威力を調べるとかそういう目的である。まあそんなことを本当に目的としている魔法使いはいないだろう。最大の目的はストレス発散、憂さ晴らし、人を傷つけて楽しみたい、そんな本当に碌でもない人間の屑のような精神のものである。なお、魔法の実験だろうと何だろうと魔法を使うには許可がいる。それはつまり上が許可を出したということだが、上の目的は別にある。許可を出した上、国の方では魔法使いに逆らうとこうなる、という脅しのつもりがある。

 とはいえ、ここまで行くと流石にやりすぎだろう。公也のように普通の感性をした魔法使いがこの光景を見れば同じようなことを想ったりするだろうし、この国から出て行く、関係を持ちたくないと思うだろう。逆に碌でもない考え、やりたい放題好き放題に生きたいと思っているような魔法使いであればこの光景を見て自分も、と言ってくるだろう。そういう点で考えれば悪いことばかりではないだろうが……どちらかというと悪いことの方が多いだろうか。


「これ、止めに入っていいですよね?」

「……いや、ダメだ」

「……止めても行きますよ?」


 セージもだが他の仲間、サフラもセイメイもセージの意見と同じ様子である。モミジは割とどうでもよさそうだが仲間の行動に合わせる感じ、リリエルはよくわかっていないが一緒に行動するつもり、つまりは全員が行動するつもりであるということだ。


「ああ、言葉が足らないか。セージたちが動く必要はないから行かなくてもいい、ってことだ」

「え? それは……どういう……」

「俺がなんとかする」


 公也はセージにそう告げた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ