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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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 いろいろと警戒していた公也たちであるが特に夢見花に対して魔法使いの国の側が動きを見せることはなかった。それが逆に公也たち……より正確に言えばこの国に所属するがゆえにこの国の事情、動きに対して知識のあるマギリアが一番困惑していた。何もないならそれに越したことはないが、逆にいつ何が置きるか、どういう動きを見せるかわからない。そういう点で警戒は常に必須である。


「今のところ特に動く必要はないんですね」

「ああ。ただ、好きに行動して良いわけでもないからな……夢見花の件があるし」

「流石に今は魔法を使っていないですが、本人の守りがその分甘くなるのでガードは必須なのです」

「こちらが怪しまれている状況じゃ確かに動きにくくはありますね。僕らとしてもあまり動かずに済むのはいまいるこの場所の都合を考えるとありがたくはありますけど」


 現在公也たちはセージたちと合流している。都合上魔女たちと一緒に行動していた彼らであるが彼らは魔法使いではないためいろいろと魔法使いの側から問題のある絡み方をされる。これは別にセージたちに限った話ではなくこの国における魔法使いではない人物全員に対して行われるものだ。まあ幸いというわけではないが魔女がいるからまだよかったわけだが。いや、こういう問題のために魔女と一緒に行動させたと言ってもいい。

 もっとも今は魔女は別行動中……マギリアと一緒にいる。夢見花に対して魔法使いの国側の動きがあった時、一時的とはいえ敵対関係にありその姿を見られている魔女がいた場合、魔法使いの国側の動きはあまりいいものにはならないだろう。そういった存在と会うかは不明だがこの国のトップであるユーナイトに逢う可能性もあることを考えるとあまり接触する危険のある状況に置きたくない。そういうことで夢見花とは離れる形である。

 なおその夢見花は現在魔法の使用を控えている。ユーナイトが魔法の使用を感知するという事実がある以上下手に魔法を使ってその位置、存在がバレるのは良くない。把握されたとはいえずっとその位置を感知されているわけではないため使わなければとりあえず隠れてはいられる。まあ向こうも魔法使いを探し出す手段くらいはあるかもしれないが。


「すっげー面倒くさいぜ。変な奴が絡んでくるんだからな」

「魔女さんがいたからよかったけどね。魔法使いの人と一緒ならまだ安心できる……かな?」

「特にリリエルに対しての絡みは酷いよね」

「ほんとほんと。私やサフラもいるのにね」


 セージたちの場合はリリエルが元王女ということもあってその見た目がいい、ということで有象無象の魔法使いが良く絡んでくることが多かった。魔女がいたためそちらが追い払ってはいたが外に出て活動すればそういった絡みの面倒がある。一応今も公也や夢見花がいるので絡まれても対応はできるが……そもそも絡んでくる相手に対応するということ自体が面倒である。できればあまり対応はしたくない。


「ちょっと絡まれる程度ならいいんですけど、何度も絡んでこられるのは……」

「今はここに魔法使いが多いみたいだからな。魔法使いを集める動きが国の方で行われたみたいだから」

「…………それはそれで厄介な話ですね。こっちの動きへの対策ですよね?」

「恐らくは。まあ、大したことのない魔法使いが相手ならセージあたりは余裕だろう」

「確かに楽ではありますけど……」

「まああまり殺さずに済ませたいところではある。正直殺しておいた方が後腐れがない気もするが……魔法使いはこの国の戦力として重要な存在らしいからな。至上主義のせいで問題が多いだけでこの国は魔法使いが多くずっとその力を頼ってきたらしい」

「……特権を貰っていたのにそれを解消されるとなると彼らも文句を言ってきませんか?」

「文句を言うだけで済めばいいんだがな。最悪徒党を組んで国を奪った反抗組織、魔法使い至上主義を取り払おうと動いている相手を潰して取り返しに来るかもな。まあ、魔法使い至上主義というもの自体本来はあまり強く推し進められるものでもないんだが。ただ魔法を使えるだけなら下手な冒険者よりも弱いということもある。だから問題ないとは言わないが……そこまで行けばもうこの国の問題だ。俺たちが考える必要はないだろう」

「気になるところではありますけど……まあ、確かにそうですね。僕らがやることではありませんか」


 現状この都市、王都には魔法使いが多い。マギリアたちの組織の動きに対して魔法使いの国側、軍の指揮官であるファリアが魔法使いを呼び戻した。そのためこの都市に多くの魔法使いが集まっている状態である。ある程度良識を備えた魔法使いなどではない有象無象の使い捨ててもいい魔法使い、そして同時に各地で好き勝手していた魔法使いでもある。ある程度立場のある魔法使いはそこまで好き勝手問題を起こしたりはしない。起こすにしても立場を考えて都合をつけたりといろいろな動きをしてからである。ただ問題を起こすだけという今の魔法使い至上主義の問題の原因である魔法使いはそんな有象無象の魔法使いである。

 セージたちに絡んでくるような相手もそんな魔法使いたちである。まあだからこそ魔女でもなんとかできるし公也や夢見花がいれば特に問題のない相手でもあるわけだが。


「とりあえず、暫くは様子見で動くしかない……マギリアたちももう少し動きを見せてほしいところだが」

「裏ではいろいろ動いている……みたいな状況ですかね?」

「わからん。とはいえ、こちらにも伝令は来るし何かしているんだろう。すぐに動けるように外に出るべきか、いざというとき連絡を受けてすぐに指示通り活動できるようにこもっているべきか」

「外に出たいー」

「絡まれるのは面倒だから残ってたいでーす」

「同じくー」

「えっと……外見てみたーい」

「………………どうします?」

「正直外に出るのは得策とは思えないですが……」

「まあ、確かにそうなんだがな……俺としては最悪マギリアたちを放っておいて活動するべきかと思ってる。魔法使いが集まって彼女らの組織に対抗する動きを見せているから彼女らも動きづらい状況にあるのかもしれない。そんな状態で機を伺って……なんてしていると何時動き出すか」

「自分で動くつもりですか?」

「最悪そういうことも考慮している。そもそも……現状ここで起きている問題は増えているだろう? 俺たちだけじゃなくて」

「……そうですね。ここの宿の人も愚痴を言ってました」


 魔法使いが集まってきた、その集まった魔法使いたちは問題を起こす魔法使いである、そんなこともあって現在この王都ではいろいろと問題が起きている。それはそこまで大きな問題ではないとはいえ、数が多くこの王都ではかなり大きな問題となってきている様子だ。国の側はそれらに対して動きを見せない。魔法使いのやることは基本的に許容される、魔法使い至上主義であるがゆえに。反抗組織が動きやすくなるほどに不満がたまれば彼女らも動き出す可能性はある。しかしそれを待つにも時間がかかりすぎる。またそれでいいのか、という思いもなくはない。


「被害が増えるのもな……問題を解決するのは早い方がいいだろう」

「それは……でも好き勝手動いていいわけでもないですよ」

「そうだな。だから俺の方でも外に出て様子を見る、動くような機を伺っているようなものだ……そういう意味では彼女らと変わりはないのか」


 そう自嘲するように公也は言葉を紡ぐ。本気でどうにかするつもりがあるなら公也はすでに行動している。その時点で公也はあまり動くつもりはないということでもある。だからこそ理由を求める。動ける理由、動く理由……自分からやりたい、望んでいることではないがゆえに動きが悪い、そんな言い訳を公也は作ってしまっている。まあ実際そこまで乗り気ではない事実はあるが、結局それでは人のことを言えるほどでもないだろう。そういう点を公也は少し自覚してしまっているのであった。




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