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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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「以上です」

「ありがとう。また何かあったら連絡をお願いね」

「はい」


 マギリアの元に先に行動していた組織の人員が連絡に来た。現在公也たちは魔法使いの国の王都へと向かっている。本来なら今回の動きをいろいろ悟られる前に急いで向かうべきだが、それはそれで逆に動きが大きすぎてバレかねないためそれなりにゆっくりと移動している。まあこれに関しては移動手段の問題もある。馬車などの交通機関を用いると動きがバレやすい。また合流する場合においてもできれば人目のないところ、街の外などで合流した方がいいだろうなどと考え、ともかくいろいろ動きやすいようにとそれぞれ別に、各自で動いている。逆に交通機関などバレやすいものを利用して下の構成員が動き、そちらで公也たちやマギリアたちの存在、他の魔法使いの動きをわかり辛くするなどのかく乱を行っている。

 今回のそれはそういう話とは別で先にいろいろ動いてもらっていた人材が集めた情報、知り得た情報をマギリアの方へと伝達してきたものである。いろいろ別行動であるとはいえ彼女は組織のリーダー、知っておくべき情報はあるしもし何かあればすぐに支持の変更を行う必要がある。現状はそこまで大きな問題のある連絡はなかったため指示の変更はない。まあ指揮の変更も彼女が組織の人員から離れていることもあって難しい。本当に重大なものごとでもなければそんなことはしない。


「……何かあったか?」

「半分ほどは定期連絡。とはいえ、今回はそれなりに大きな出来事もあったみたいね」

「……大きな出来事か」

「事件みたいなものではないわ。ただ、王都の方で魔法使いの招集……いいえ、呼び戻しかしら。それが行われたという話ね」

「なんだ」

「なんだ、じゃないわ。通常魔法使いたちを動かすことはあまりないの。それぞれがそれぞれのやりたいように好き勝手しているというのもあるけど、もともと魔法使いは戦力なのよ。この国だって軍事組織は存在する。基本的に魔法使いたちはそこに登録されている。だから何かあれば呼び戻したりして動かすことはある……でも何もない時にそんなことはしない」

「……つまり何かがあった」

「と、考えるのが普通でしょう。でも何か起きた、という話はない。大抵は魔法使いを動かすなら魔法使いが戦うような舞台、戦争になるのでしょうけど……そちらの方の動きは見られていない。定期連絡と言ったでしょう? 何か起きれば緊急の連絡になったはずだけど定期的な連絡機会でしかなかった。ただ、そこで少し妙な動きとして魔法使いの招集が行われていた。ではなぜそれが行われたか、という話になるの。何の理由もなしに召集が行われるはずがない。理由は何か、などと私たちが考えるのもおかしいわね」

「……俺たち、今回の組織の動きか」

「それが可能性としては最も高い。もちろん他の可能性もないとは言えないけど、それが一番可能性として高いものでしょう」


 公也たち、マギリア達の動きが察知された……まあもともとはある程度は承知していた面もある。組織の構成員である結構な人数を散らせていた各地から呼び戻し、またそれらの人員を今回のユーナイトを倒すための事前調整のために送り出した。どうしてもそれだけ人数を一度に動かしていればその動きが知られないはずはない。自分たちの動きがバレてはいないだろうという推測はある。公也、マギリア、ユーナイトを倒すための重要人物に関しては動きが遅めで個人で動いているため現状はおそらくバレていない。しかし大々的な動きがバレれば相応に相手側も動きを見せる、準備を行う……今回のことはそういうことだとマギリアは推測している。


「あの人が軍の指揮を執っている以上……確実に今回の件はバレているとみていいでしょうね」

「あの人?」

「ファリア・アルツハエム。この国ではもともと魔法使いは相応に立場があったのよ。今は魔法使い至上主義が蔓延っているけど、それ以前から魔法使いは存在し国に貢献し活躍してきていた。その一族、血筋、そういう魔法使いは多いわ。ただ、それでも基本的には男性の方が立場としては強い。貴族においても女性よりは男性の方が立場的には強いことが多く、軍の組織や官僚、そういった上位者の立場は基本的には男性が就くものとなっているわ」

「それはどこでも特に変わりないものだな」

「でも女性が就く場合もある。私も一応貴族の家の娘で次期当主みたいなものだけど、そういった立場になく軍の指揮官に彼女は就いたわ。魔法使い至上主義とはいえ、魔法の実力だけですべてが決まるわけではない。当然魔法使いとしての能力は至上主義において重要であるとはいえ、軍の組織のトップなど相応の立場に就くにはそれ相応の能力が求められる。当然軍を指揮できるだけの実力を彼女は有しているということになるわ」

「……それだけ頭がいいと」


 マギリアはそれなりの立場にあるが故にこの国における様々な事情を知っている。現在の軍の組織のトップであるファリアについても彼女は知っている。もっとも彼女の知るファリアの才の一部はファリアが取り立てて側に置いているロズイールのおかげな部分もないわけではない。ただ、それに関してはどうしても魔法使い至上主義の中では知られにくいというか、魔法使いでない者の力を認めたくない者によりファリアの手柄とされている部分もある。とはいえ、ロズイールという魔法使いではない者を取り立てているという点で彼女は悪目立ちをしている部分がないわけではない。そういう意味でも知られてはいるだろう。


「まあ、何にしても……警戒はしておいた方がいいでしょう」

「そうだな。まあ……そんなこと気にしない仲間の方が多いが」


 そう言って公也はゼーメストやリーンの方に視線を向ける。今この場には魔女やセージたちなど一部の仲間がいないが他の仲間はいる。橙は制御の難しい好き勝手するような人員である。そういった人員はどうしても公也が諫めなければ難しいこともある。なので仕方がない。アクが強いというか我が強いというか。彼らは恐らく魔法使いが招集されていることを気にしない。むしろ逆に少しは楽しめる、と思ってしまうかもしれない。そういう点では面倒くさいだろう。




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