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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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26


 今日、部屋が明るくなった。窓もないこの部屋が明るくなるなんて変な話。

 この部屋が最後に明るかったのって私に触った人間が入ってきたときくらい?

 城の中に何がいて何があるかそういうのはわかるけれど、これはちょっと新鮮。

 でも今は夜なのになんで明るいの? 何かちょっと干渉を受けているみたい?

 一応私の力でこの光をどうにかできなくもないけど、別に私には関係のない話。

 私の主となったあの人間はここには来ない。

 掃除しなくても勝手に綺麗になる便利なお城程度にしか思っていない。

 私の所に来るわけでもない。何を考えているかは知らない。

 言っていることを聞くことくらいはできるけど。

 誰かが来て、いろいろとやっているらしい。人間同士の殺し合い? そう。私には関係ない。

 もしかしたらここまで来て私も殺すかもしれない。私はそれもいいかなと思っている。

 ずっとここに囚われたまま、城が朽ちるその時までこの状態で生きるよりはいい。

 この体勢もちょっと辛いし。せめて座らせてほしい。疲れは感じないけど。

 それにしても…………ああ、動く人たちがいなくなった。もしかして死んだの?

 あ、主である人間との関わりが途切れてる……? どうやらこちらは死んだみたい。

 他の人間はまだ少し戦っているのもいるけど、大体は動けなくさせられている……死んではいないみたい。

 何が目的? まあ私にはあまり関係のない話……どうせまた人間の誰かが主になるだけ。

 私はここから動けないのだから今までと特に変わりはない。

 …………ここに来る? まっすぐ向かってきている。それがはっきりわかる。

 扉が開いた。


「誰?」


 誰でもいい。どうせ、誰であってもこれまでと変わりがないのだから。






「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおっす!」

「……フーマルは喧しいな。まあ押し付けた感じだからしかたがないな。いったん応援に向かうか」


 フーマルの叫びを聞き公也がフーマルの元へと向かう。音の元となった場所へ向かえば特に問題がない。目的とする部屋があるが、そちらに向かう前にフーマルとフーマルが相手をしている兵士たちに対応する。それが公也の行動となる。


「そういえば捕まえたやつらはどうなっているんだろうな。後で一部屋に固めておいた方がいいか? 逃げられないように窓も扉も蓋をして閉じる……問題はこの城自身だな。撤去させられてしまう可能性もある。まあ、それはやってから判断するしかないか……」


 兵士たちの生存に関して殺さなくてもいいと許可をしたのは公也である。ならばその後の面倒も見るべきだ。そういうことでフーマルが気絶させただろう兵士、束縛されている兵士などを回収しつつ、フーマルの元へと向かう。


「おりゃあああああ! っす!」

「ぐはあっ!」

「その最後のっすはいるのか?」

「あ、師匠……はあ、これで最後っすかね?」

「正確な所はわからないが、少なくとも来る途中には居なかったな。入口から外に逃げているわけでなければとりあえず問題はないはずだ……城の構造的に大丈夫だとは思うがな」


 もしかしたらワイバーンの厩舎に向かった兵士もいるかもしれない。もっともそういった兵士がいればヴィローサが対応しているだろう。可能性がないわけではないがその可能性はとても低いというものになるが城の外に出て山を下りる選択をした兵士もいるかもしれない。もっとも仮にそうした場合恐らくはその兵士は生きて帰ることはできず山で行方不明になるだろう。ただでさえ下りることができないような魔物や獣の大量にいる山であり、さらに言えば今の時間、夜に下りるとなると余計に難易度が上がる。夜の方が山は危険だ。

 まあ、公也たちが入ってきてその状態から逃げる選択をした兵士は恐らくいない。一応入口にいた見張りを殺し、その知識を食らい自分の者として内部にいる兵士たちの数の情報は得ている。そのおおよその数値で公也が相手をした兵士やフーマルが何とかしたらしい兵士の数、それらを考慮すればほとんどその数値に近い。厳密に相手をしなくてもいいだろう。もしかしたらまだ隠れている兵士などもいるかもしれないが。そこまで気にするとそれこそこの城のすべてを探し尽くさなければいけないので流石に面倒くさい。


「フーマル、こいつらとりあえず近場の部屋に突っ込むぞ。窓を封鎖して扉も封鎖する。逃げられないようにしておく」

「……そうっすね。死んでないのは放ってはおけないっすよね」


 放っておいて意識が戻ればまた公也とフーマルが戦わなければならないかもしれない。それでは城を奪取したことにはならない。捕縛し彼らの行動を封じなければ倒した意味がない。公也からすれば殺して終わらせた方が手っ取り早いがフーマルが無駄な殺しはしないほうがいいと公也に殺さなくてもいいのではと提案、その提案を受けそれなりに殺さないように相手をした。性質上殺さなければならない相手もいたのでそれは殺したがある程度可能な限りは生かして残した。そしてそれを置いておくわけにはいかないので閉じ込める。でなければまた気絶させるか、あるいは殺さなければいけない。

 そうして公也とフーマルが兵士たちを運び、捕縛されていない者はきちんと縛り動けなくして運び、とりあえずわかる限りで生きている兵士は同じ部屋に運んで閉じ込めた。そしてフーマルに後の様子見を任せ公也は目的の部屋へと向かう。この城の主、城魔の意思の存在する部屋へと。




「ここか」


 この城の主のいる場所、ワイバーン部隊の部隊長が来てその主たる意思と会った場所。もっとも彼女とここにいた部隊長はそれ以降ほぼ会うことはなかった。そもそもここにいる彼女は魔物、城魔は一応性質としては魔物である。そんな存在を易々と信じ使うことは難しいだろう。魔物に対する偏見があれば会いたいとは思わないだろう。まあワイバーン部隊はワイバーンを使っている以上魔物に対する偏見はないものと思われる。ただ、意思のある魔物なのだからそれに対しての不安、懸念はあってもおかしくはない。

 ともかく公也は部屋の中に入る。


「誰?」


 部屋の中は窓もないのに明るい。公也の使った魔法によりこの周囲のエリア全てが昼天、真昼の明るさを保っている。それゆえに窓がなくとも明るい。その明かりに照らされ見える人の姿、金髪碧眼ツインの縦ロールでもっさりとしたドレス姿の天井から延びる鎖に囚われた女性の姿。それに関して何も知らずに見れば囚われの貴族令嬢か何かかと思うくらいだが、この城にいるその女性は人の形を保っていると言うだけで魔物である。この城が生まれた時からずっと囚われ続け、まともな手段では解放することのできない城そのものの意思、城魔の頭脳、意思体ともいえる存在。


「俺は冒険者だ。この城にいたワイバーン部隊を倒しワイバーンを使用不可能にするために来た」

「そう」

「……お前はこの城、城魔の意思の存在だよな?」

「そう」

「………………」


 公也としてはどう対応したものか、と思うところである。城魔については公也もよく知らない。この場所にいた部隊長も城魔という存在に関してはそれほど知り得ていない。ただ魔物として時折生まれる城そのものの魔物、別にそれがいるところで特に問題はない、城が建築されると言うだけの意味合いしかない魔物である。大抵の場合邪魔になるので破壊されることがあるか、あるいは城を使うということになるがその場合でも意思体は邪魔者扱いで殺されることも多い……という話があったりする。詳しくは知らない。


「……私を殺しに来たの?」

「いや……どうしたものかと思っている。そもそも俺は城魔について知らないし」

「魔物。殺さないの?」

「話せる相手を積極的に殺す趣味はないかな。敵対するならば殺す可能性はある。でも……何かする気はあるのか? たぶんその様子だと何もできないだろうけど」

「……確かにそう」


 鎖で繋がれている彼女には何もできない。そもそも何かできるのであればこの城にいたワイバーン部隊の人間相手に何か対応していたと思われる。そうでない以上彼女は安全なのだろう。



※城魔の意思の体勢は腕を鎖に囚われてその鎖が天井に伸びて若干引っ張られている体勢。

※ヒロインその二。妖精に続き城魔の意思、人型だが魔物な存在がヒロイン二人目。この作品人間ヒロインの方が少ない。まあ基本人型なので人間かそうでないかは気にしなくていいが。

※城魔は戦闘能力は一切ない。城としての機能、環境を維持する能力は持つがそれくらい。なぜ魔物として生まれてくるのか。謎である。

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