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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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「まったく……魔法使いと戦いたいなら、そうしてやる。ウォーターボール・レイン!」

「おっと……おわっ!?」


 公也が魔法を使ってこないことを相手側が気にしていたため公也も自身が魔法使いである……魔法を使える事実を示すため魔法を使う。別にそうする必要性はない。このまま戦っても一応公也の実力証明にはなる。ルストを倒せば魔法使いであるかどうかに関わらず彼より強いということでユーナイト・ランティスと戦えるだけの実力はあるだろうということにはなるだろう。しかしそれでも魔法を使ってこないのはそれはそれでどうなのか、と彼らも思うところだう。

 そうして公也が使ってきた魔法は呪文だけの魔法。いちいち詠唱していては長いし公也自身そこまで詠唱を必要としないためそんな簡素な魔法を使うことにはなる。とはいえ、一般的な魔法使いからすれば簡素な魔法ではない。そもそも魔法使いとも言えない魔法を使えるだけの人間、多くの冒険者の下の方に含まれる魔法使いたちは簡素な魔法でも詠唱と呪文を必要とする。まあこれに限って言えばそうしなければいけないというわけではないがそうした方が魔法として使いやすい、威力が高いとかあるのだが。ともかくあっさり公也が呪文を唱え使った魔法はその簡素な発動に対して大規模なもの……まあそこそこ広い範囲を攻撃するものではあった。とはいえ、相手を殺さずに終わらせる必要があるため威力としてはそこそこでしかない。もっと戦い威力や攻撃性の高い別種の魔法で同じことはできるがそれをしないのはやはりルストを殺さないため……彼も弱くはないだろうが、死亡の危険がある、事故の可能性がある要素は減らした方がいい。そう思ってのものである。


「っと……危ねえな」

「そうか? これで危ない、か?」

「……いや。正直当たってもそこまで危険はなさそうだよな。もちろん当たったらダメージあっただろうけど、それでどうにかなるってものでもない。全く、手加減されてる気分で好きになれないな」

「お互い相手は殺さないように、だろう?」

「……こっちは殺す気で戦ってるっていうのに、な!」

「っと!」


 手を抜かれている事実に若干いら立ちを見せつつも、多少は仕方がないとあきらめているルスト。もともと殺し合いではないので仕方がないが、それでもここまで手を抜かれるのは気に入らない……といきなり腕を振るいエネルギーの斬撃を飛ばしてくる。公也もそれに対処するが……一回だけ、ではない。


「行くぞ行くぞ行くぞっ!」

「風よ壁となり降り注ぐ攻撃を防ぐ盾となれ!」


 連続して腕を振るわれ何度も飛んでくる斬撃、それを公也は詠唱し盾を作り防ぐ。とはいえルストの攻撃も決して弱いものではなく、一時的な風の盾はすぐに破壊される。だが公也もずっとその場にいるわけではない。攻撃を防いですぐにその場から移動し、ルストの方へと近づく。


「はっ!」

「とおっ! おいおい、魔法使いだろう!」

「別に魔法使いだから剣を振るったらだめなわけじゃない……そもそも俺は魔法使いではあるけどどちらかというと冒険者の方が強い。そもそも魔法使いだからって魔法を撃ちまくればいいってわけでもないだろう」

「それもそうだな!」


「近接防御は当然の課題」

「……まあ、そうね。多少は装備などで守るのも視野に入れてるけど、戦うまではいかないわ。でも別に近接に入られても魔法で迎撃はできる。もちろん相手の攻撃を防げる前提はいるけどね」

「近ければ魔法も遠くを撃つより威力は高い。利がないわけでもない」

「取り回しの難しさ……魔法による二次以外、範囲の問題でこちらに攻撃が及ぶ危険もあるから利が高いとは言えないわ」


 魔法の近接戦は決してできないわけではない。公也も良く使っていることの多い……というほど使っているかは不明だが剣に風をまとわせる、みたいな近接補助の魔法もある。風に限らず火、雷、様々なものがあり技に近いものであるがそれらを上手く使えるなら近接戦も……できなくはないだろう。もっとも根本的に近接戦ができなければ意味はない。夢見花と魔女が話しているように相手の攻撃を防ぐ手段、一時的にでも防ぎ抑えられるのであれば近づく相手に有効打を与えることは不可能ではないだろう。基本的に魔法は遠距離を攻撃できるいわゆる飛び道具みたいなものであるが、別に近くを攻撃できない遠距離専用というわけではない。とはいえ簡単に使えるわけでもない。火の球を撃ちだす魔法でも間近にいればその魔法の影響を受けるみたいな感じで魔法次第ではあまり近接攻撃はできない。そのあたりは自分で必要な魔法を開発する、あるいは既存の魔法でも使いやすいものはあるだろうからそちらを使うようにすればいい。


「土よ掴め!」

「おおっ!? っと!」

「っ!」

「変な魔法だな!」

「すぐに対応してくるとは……っと!」


 地面を魔法で操作し足を掴む……とした魔法もあっさりとその腕に纏うエネルギーを叩きつけ対処する。そしてそのまま次の攻撃へ。それなりに戦いなれているというか、何かされた場合の対処が手早い。公也も反応はしているがこちらは単純に自身の身体能力の高さ故、普通の人間よりも早く動けるからこそ対応できるというだけだ。


「速い……いや、早いか? っと! 次の行動までの、手が早い!」

「そりゃあ魔法使い相手に対応できるように、どれだけ戦ったと! 正直魔法を使ってこないから戦いづらいくらいだ!」

「……魔法使いとの戦いか。相手が相手らしいから確かにその経験は必要なんだろうな」


 ルストの戦うべき相手はこの国最強の魔法使い……ある意味ではそれを相手にするのを押し付けられているようなものだが、彼からすればそれはそれで構わないのだろう。しかし相手の強さが強さ、下手な強さでは勝てない。多少強くともまず魔法使い相手に勝てるかどうか、魔法使い相手にどれほど善く戦えるか。勝つためにも経験は必須、それゆえにこの組織の魔法使い相手との戦いの経験を積んでいる。魔法使いの魔法による攻撃は様々だ。それぞれ得意分野も違うし同じ魔法でも微妙に違う、それぞれで発動の速度や威力も微妙に違う。そういった様々な違いがあるが故にいろいろな攻撃に対する反応、対処ができるようになる……とはいってもそこまで極端に技術が高まるわけでもない。その技も含めて本人の資質による部分も大きいだろう。むしろ公也みたいな魔法を積極的に使ってこない近接戦を仕掛けてくる方が最近は相手することが少なく慣れていないかもしれない。


「だけど相手次第ではこういう戦い方もあるだろう。例の魔法使いがどういう魔法使いか知らないが、近づけば魔法を使えなくできるとも限らない……魔法使いとして俺より上かどうかもわからないんだがな」

「それも……確かに、あるな!」


 魔法使いとしての能力はそれぞれで違うがこの国最強の魔法使いが果たして近接戦ができず遠距離でしか戦えないか。そもそも仮に遠距離戦しかできないにしても、当人が防御に気を割いていないとも限らないだろう。夢見花と魔女が言っているように自分の防御を高めている、魔法による防御を準備している可能性はある。そうなった場合近くにいても魔法を撃たれる可能性はある。そもそも魔女との戦いのことを考えれば一言発言させるだけで魔法が使われる。それにより距離を話すも攻撃するも相手は自由自在……僅かな隙も与えられないし、油断もできない、できれば不意打ちで何もさせず一瞬で殺し終わらせる方がいいだろう。とはいえ、ルストがそれをできるかといえば難しいとも思われる。




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