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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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「……あなたたちは私たちのことを手伝ってくれるつもりはある、ということでいいのかしら?」

「そちらの活動内容次第……と言いたいところね」

「一応俺と夢見花は魔女から頼まれて助手の女性の救出に来ているわけだが。あまりのんびりやっている余裕はないが、その点は大丈夫か?」

「……ここの活動次第だけど」

「攫われた女性についての話ね。別に命の心配はないと思うわ」

「それは心配していないけど……女である以上は心配な点が一つあるでしょう」

「……そちらもあまり心配する必要はないと私が知る限りでは保証するわ」

「……その理由は?」

「あいつの元にいろいろな女性が貢物扱いで贈られているのは私も知っているの。だけどあいつは全くそれらの女性に手を出してはいない……理由は知らないけど、今はそのつもりがないということらしいわね。少なくとも聞く限りでは、だけど。だから確実に絶対に安全、手を出されないとは言えないけど、身も心も無事である可能性は高いはず」


 リーダーの女性はテレナを攫った人物とはある程度面識がある。リーダーである女性の立場はこの国において結構なもの……テレナのようなこの国の魔法使いの貴族、それもかなり大きな家、上の方の家系の娘である。立場的には家を継ぐような立場であることもあってテレナのような余所に嫁に出されるようなことはない。まあそんな彼女はこの国に反攻する組織を立ち上げそこのリーダーに収まっていたりするわけだが。


「なるほど……今すぐ助けずとも現状手を出されることはないと」

「そうなるわ」

「でも時間の余裕がそこまであるわけでもないでそう。気が変わればすぐにでも手を出すかもしれない」

「……そうね」

「いつまでもこちらにいるわけにもいかない。もともと住んでいる場所、所属する場所もある。暢気に組織運営の手伝いもしてはいられない」

「…………今すぐどうにかしろと?」

「悠長にしている余裕はあるのか? そもそもいつ、どうやって、そちらがこの国の魔法使い至上主義に対抗するつもりだった? 魔女を倒したという人物を倒す手段は考えられているのか?」

「………………」


 現状彼女たちの組織でも魔女と戦った強大な魔法使い相手に勝つ手段は考えられていない。いや、一応対抗する手段はなくはないが……確実に勝利できる確証があるわけではない。そもそも魔法使い至上主義をどうにかしようという考えはこの国に存在する多くの魔法使い、魔法使い至上主義に迎合する魔法使いたちを敵に回すものだ。リーダーである女性の実家も敵に回るだろうし、テレナの実家であるマーキエルの家も当然、この国において上位に存在する多くの魔法使いもほぼ確実に敵に回る。仮に魔法使い至上主義に思うところがあったとしても国そのものを敵に回してまでこの組織の手伝いをしようと思う人物自体少ないだろう。


「こちらが手を貸せば……そちらは組織を動かしてどうにかできる、ということは?」

「あなたたちの実力がわからないわ。確かにすごい魔法使いなのかもしれないけど、だからといってどれだけのことができると?」

「……ふむ、こちらがそちらのことを知らないのと同じでそっちもこっちのことを知らない、と。確かにそうだな。俺や夢見花、魔女が手を貸しただけではどうにかできるとは限らない……まあこちらが出す戦力はもっと多いが、だからと言ってじゃあやろうと言えるほど信用できるわけでもないか。戦力的な部分だけではなく為人の問題もそちらに対してだけではなくこっちに対してのものもあるだろうし……」


 公也たちが相手の実情を知らず信じられるかどうかわからないのと同じ。相手方も公也たちのことを信用できない。まあ相手方からすればいきなり魔法で連絡を入れて直接侵入してきた相手、何も知らない危険な存在。それを信用しろ、などと言ってもまず無理だろう。ましてやその実力に関しても……一応仲間の魔法使いが受けた被害を考えれば全く強さに対しての信用ができないわけではないが、かといって目的の相手、この国最強の魔法使い相手にどうにかできるかどうかはわからない。この組織には一応最強の魔法使い相手に立ち向かえる存在、強さを有する実力者を抱えてはいるが、それでも勝てるかは怪しい……そもそも戦うことになった場合確実に他の魔法使いも参戦する。国を相手にするのである。この組織もそれなりに大きいが、国を相手にできるかといえばまず無理、まあ彼女らにとっての最大目標さえ何とか出来るのであればある程度は譲歩できる。ただそれすら確実に可能かどうかは公也達の実力を見なければわからないところだ。


「そうね。あなたたちの強さに対する信用も、あなたたち自身の為人に対する信用も今のところはない。まあ私たちの仲間を殺さずに逃がしてくれた点ではある程度こちらのことを考慮してくれるだけの思考、この国の魔法使い至上主義に対してよくは思わない思想があるみたいだけど。だからと言って簡単に信用して仲間に入れられるわけがない。手を借りるにしても。そして何より強さの問題がある。あれを相手にするならあの魔法使いが使う魔法に対抗できるだけの力は確実に必須……それだけの実力はあるのかしら」

「ある……といえばある。とはいえ、言葉で言ったところで信じられるものでもないな」

「この場に来た魔法使いとしての実力だけを見れば確かに魔法使いとして極めて高い実力を持っているのは分かります。だけどそれが魔法合戦、直接的な戦闘に繋がる実力かどうかはまた別よ。戦いに優れなくとも高い魔法の実力を持ち様々な魔法を使い国に、人々に貢献する魔法使いもいる」

「……実力の証明は何をすればいい?」

「私たち……私の抱える最大戦力と戦ってもらうわ。少なくともまともに戦える、拮抗できる程度の実力がないのであれば手を貸してもらったところで……と言わざるを得ません。そちらはそれでいいかしら?」

「……殺したらいけないんだろうし、そういう点では面倒だが。俺としては別に構わないな。魔女と夢見花は……」

「私はどうでもいい。公也が力を見せればそれだけで十分なはず」

「一応私はあの魔法使いに勝てない実力ではあるけどね。とはいえ、負けるけど一時的に抑える、対抗する程度の戦いはできる。ま、あなたに任せるわ。さっきの発現を聞く限り手を貸すならあなただけの力を貸すわけでもないのだろうし?」


 公也がその実力を戦いによって証明する……それによって手を貸してもらうべき相手かどうかを判断するらしい。魔女も夢見花も公也がやるのならそれでいいらしい。まあ彼女らにとっては手を貸すにしてもそこまでではない。もっとも強い相手と戦うのは公也の仕事であり、それ以外は魔女でも夢見花でもそこまで大きな問題にはならないだろうと推測できている。特に魔女は直接戦った相手と供として就いてきた相手のことを知っているからこその判断である。そして公也が手を貸すことになればアンデールの戦力を連れてくることも可能である。大きく事を起こすのであれば戦力を動かすこともできる。またこれは二人も知らないがゼーメストの力も借りるつもりがある……戦力としてはかなりの大盤振る舞い、さらに言えばゼーメストであればこの国最強の魔法使いが相手でも有利に戦うことができる可能性は高い。そういう点で公也たちの手を借りるという事実はかなり悪くないことであるはずだ。まあ、それも公也がこの組織の抱える戦力と戦えるかどうかの証明をしてから、になるだろうが。






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