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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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「あの集団はこの国に対する……敵対組織の一員だったわけか。それで魔法使いを狙ってきた……しかし魔法使いが馬車に乗っているとは限らないよな」

「どの馬車も狙うようにしている可能性はある。魔法使いがいるかどうかは気にせず馬車を襲い盗賊行為をする……魔法使いが乗っていれば殺す、そうすれば問題なく目的を達成できる」

「それだとあまりにも民間への被害が大きくなるんじゃないかしら。彼らも別にこの国を転覆させようとしているわけではないんでしょう?」

「魔法使いが手を貸している……俺のことに関して手を貸してもらえれば、みたいなことを言っていたな。この国の魔法使いの所業を悪し様に言っている……この国の魔法使い至上主義に対して憂う気持ちがある、とみていいんだろう。仮に国をどうにかして魔法使い至上主義をどうにかできてもそれをした彼らがあまりにも民間の馬車を襲い金銭を奪ったりなど盗賊行為をしていればそれが問題となって結局瓦解しかねない……と考えると、闇雲に襲っているとは考えづらいな」

「……馬車主が手を貸しているとか?」

「ありえなくもない。あるいは同乗者の中に彼らの仲間がいるか……とかだな」


 公也たちが聞いた会話、その内容から公也たちを襲ってきた存在……厳密には馬車を襲おうとして公也たちが撃退した存在はこの国の反国組織の一員であったと考えられる。ただ反国と言ってもただ無意味に国を破壊したい、混乱を招きたいとかそういうものではなく、恐らくは魔法使い至上主義の蔓延を問題視しているものとみられる。もちろんこれはあくまで会話を聞いたうえで何となく内容的にそんな感じなのではないか、と考えられるだけ……あくまで可能性での話である。


「でもそんな連絡の魔法を使っていたらわかるんじゃない?」

「……確かに」


 魔法使いである以上は魔法を使っていればわかる。いや、そもそも魔法使いであること自体公也たちは相手の魔力からおおよそ判別できる。少なくとも馬車の主、同乗者を含めた馬車に乗っていた人物たちは魔法使いではなかった……もちろん相手組織の人員全員が魔法使いであるわけがない。彼らの仲間が魔法使いでないというのは普通にあり得ることだ。しかしそうなると今度は魔法を使って連絡することができない。結局公也たちのことを伝えることはできないということになるだろう。


「可能性の一つとして魔法道具がある。発信機的な役割をする魔法道具……何かこれがその対象だと判別できる程度の魔法道具みたいなものなら私たちも判別できない可能性はある。そういうものは機能しているんは受信側、発信機を追う方の魔法道具。別に発信機として、機能することが必要ではない……特定の魔法道具の形式をしたものがあれば反応する、みたいなものとか」

「つまり魔法道具で特定の何かを対象にして探知するようなものを使えばこちらに気づかれないということか……」

「私の探知に関しても相手に気づかれるわけではないし……そういうものもあるといえばあるのかしら」


 公也たちはあまり発展させていないが魔法道具であればそういったこともできるかもしれない。魔法使いの国であるこの国においてはそういった魔法道具の類はあってもおかしくはない。魔法使いが多く自作しやすいのだから。とはいえ、そのあたりの技術は昔の方がよかったりするし国によってもなかなかはあまり発展していないことはある。この国ほどではないが魔法使いの多いキアラートではあまりその手の技術が発展している様子はない。ある意味ではこの国がそこまで魔法の技術発展に力を注いでいるからこそなのかもしれない。


「……そのあたりの話は今はあまり重要ではないかもしれない」

「……そうね」

「そうだな。重要なのは彼らをどうするか……」

「いえ、テレナの救出が優先でしょう?」

「だけど魔女の望みはそれだけじゃない……これも何か話した気がする」

「そうだな。彼らはこの国の現状を憂いて何とかしたいと思っているらしい。そのため魔法使いを減らすことを目的に今回みたいに馬車を襲ったりしている……あるいはそれ以外にもいろいろしている可能性はある。そもそも魔法使い至上主義をどうにかするつもりがあるなら根本的な改革が必要になる。現状の国のトップや国政を担う相手をどうにかする必要が出てくるだろう。それをどうにかするつもりもなく動いているとは……流石に思いたくはないが」

「あり得ないとは言えないでしょうけどね。でもどうにかするつもりがある、あるいはできる、手段を持っていると考える方が気楽かしら」


 いくら何でもただ魔法使い至上主義を問題視しそれに対抗するために国に反抗している……そこまで考えなしとは思いたくはない。この国をどうにかするための何らかの手段をもって反抗している、そう考えるべきだ。少なくとも魔法使いを殺すため馬車を襲うなど偽装に近い手段も考えている。まあそれがうまくいっていない部分もあるため怪しい組織が関わるという噂が出回っているあたり……完璧ではないが、そもそも完璧にどうにかできる方が少ないだろう。何にしても彼らは彼らなりに考えて活動している。であればこの国をどうにかできる可能性はある。

 もっともどうにかできるとしてもどうにかすることはできない。この国のトップ、最上位の魔法使いが他の魔法使いよりも桁外れに強いからだ。それに関しては彼らの組織の人間も正しく認識している。そしてそれに及ぶかは不明だが普通の魔法使いよりもはるかに強い存在であると公也のことを評している。その手を借りたい、力を借りたいというほどに。結局のところ彼らは力不足だ。このまま頑張って対抗してもこの国をどうにかすることはできない……それはわかっているだろう。

 だからこそ手を貸すかどうか、それを判断する必要はある。魔女の目的であるこの国のトップをどうにかすることとかこの国自体の魔法使い至上主義をどうにかすることとかを可能にするためには。まあ彼らに手を貸して魔女の望み通りになるかは不明であるわけだが。何もやらなければ変わらないので手を貸すくらいはしてもいいのかもしれない……とはいえ、もう一つの目的であるテレナに関してもあるしすぐに決められることでもないだろう。





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