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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
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「竜を使い魔にしているというのはとんでもないわね……」

「使い魔じゃない。色々事情はあるけどメルの自由意志」

「ルウ!」


 メルシーネに乗り夢見花の塔から移動する公也たち。向かう先は魔法使いの国である。


「使い魔はできるのか?」

「そうね……こちらでもできなくはないけど、効率は良くないしあまり利もないわ。そもそも私はその手の魔法は得意な方でもないし。魔女である以上いろいろできるけど。私の性質的に相性のいい存在が少ないのよね……」

「魔女の魔法……"夜明け"はどういう性質?」

「そのまま夜明け……というか前に話さなかった? 夜が明けるように晴れやかに。あるいは夜明けの光、闇を晴らす光。また夜明けの時間に関わること、そういうものだって」

「……よくわからないな」

「応用はいろいろ可能なのよ。火という属性があるでしょう? それは爆発に使うことができたりそのまま火、またそこから炎に。あるいは灯りにすることもできる。火の持つ光の性質を強く出したり熱だけを抽出したり。極めれば反属性……火と対を成す水に繋げられるわ。私の場合は夜明けという属性であると考えてもらえればいいわ」

「夜明けって属性……ってなんだ……?」

「疑問に思うのは分かる。ただいろいろと連想であったり現象であったり、あるいは精神的なものであったり色々応用は可能かもしれない」


 魔法使いが三人、話をするとなれば魔法の話になるだろう。メルシーネもいるが竜の姿で会話できないうえに現在彼女に乗っての移動中。なので三人の話になる。参加できないのはメルシーネとしても不満はあるが……現状仕方がないだろう。こればかりは魔法使いでなければ話にならない。

 向かう先は魔法使いの国、魔法使い至上主義が蔓延する土地である。メルシーネを連れて行くかどうかは微妙だが一応獣人の扱いがこちらの大陸では悪いこともあるため連れて行かない可能性が高い。主義的にも魔法使いのみで行くというのは決して悪いものではないだろう。


「あそこの状況も魔法によるもの? それにしてもあまりにも威力が高すぎる気がする」

「ああ……森のこと?」

「そう」

「あれは魔女特有の魔法ね。いえ、別に使おうと思えば似たようなことは誰でもできるだろうけど……」

「誰でもは無理」

「……何の話を?」

「魔女のいた森のこと。全域が燃やし尽くされていた」

「……それは聞いたが」

「あれは魔女の魔法によるもの。公也も規模だけで見れば同じようなことはできるけど魔女みたいな普通の魔法使いよりの存在ではあれほどの規模は珍しい」

「普通の魔法使いよりはよっぽど私の方が強いわ。地脈の力も使うことができるのだし」

「それもそう。でもあそこで使われたものは残りの魔法の気配だけでも異質。私の知識、感覚でもだいぶ理解が難しくなっているもの」

「だから魔女特有の魔法……種とかそういうものではなくて、そうね、私の"夜明け"を通じての特殊な魔法だから。他の魔女の力も……いえ、名かしら。それを借りているのもあるし」

「そういうことができる?」

「これに関しては元々この世界に生まれ落ちる前に借りていたのだからね。それに使えるのもあれくらいだけでしょう。本来魔女の持つ魔法、力は己のものだけ。借りているそれもずっと無限に使えるわけではないし、性質上使える力の方向性も限定されているわ」

「そう」

「……会話の内容に理解が及ばない」

「こればかりは私という存在……魔女のことについて知らなければ無理ね。むしろ彼女がなぜ魔女のことに詳しいのかの方がわからないわ」

「一応知識として魔女のことはある。ただすべてではない。私の場合は持っている力の関係」

「……出鱈目ね。ああ、でも……私の戦った相手も相当出鱈目だったわ」

「そういえば一応ある程度話は聞いているが、相手のことに関して詳しく聞いていないな」

「別にそこまで知っているわけでもないわ」

「でも戦った。その戦いの傾向、使う魔法、そういうことを知っているのと知らないのでは知っている方がいい」

「……それもそうね」


 相手の魔法使い……魔女と戦った絶大な力を持つ魔法使いに関して公也たちは詳しく知らない。おおまかにその強さ、魔女以上の強さを持つことは知っているし魔女の攻撃を跳ね返したとか簡単には聞いているが、その内容を詳しく聞いていない。相対する前にその内容を聞き対策を考える、事前に戦いのための準備をする、あるいは戦わないにしても逃げる場合でも何でもなんとか対応できる手段を講じられるよう事前に相手のことを知っておくのはいいこと……というか当然やっておくべきことだ。急いでいたからかそういった準備もしていない。荷物に関しては気にするまでもない……というか必要とするようなものもないので別にいいのだが。


「まず……相手の魔法構築速度が異常だ」

「異常?」

「こっちが魔法を使ってからそれに対応する魔法を使ってくるわ。そのうえでちゃんと防げる魔法強度。ありえないわよ、普通は」

「……どんな魔法か見抜けなければ対抗魔法を使えない。ということは魔法を見抜いてくる。私も魔法を見ればある程度その魔法がどういう魔法であるか、どういう構築であるかを見ることはできる。ただそれでもその魔法速度は恐ろしいまで」


 魔法は現象である。ただ現象は魔法の結果……魔法が発動し行きつく終着点ともいえるもの。魔力を使い、場合によっては詠唱や呪文などの魔法式によりその力を増幅、性質を定め強さを高めるなどし、現象として魔法を発動させる。ただ、夢見花もやっていることがあるが魔法というものを形作る魔法構築は存在する。そもそもそうでなければ魔法道具の類は作れない。しかしそれは基本的にわかるものではない。ほぼすべての魔法使いはそんなものを意識せず感覚で魔法を使っている。一部の研究者が魔法の構築、構造というものに行きつくが根本的にそれをどうにかできるものなどいない。さらに言えばその構築された魔法がなんであるか、も普通は分からないだろう。数字の1と0の組み合わせで構築される二進数で作られた機械構文を人間が一目で理解できるわけないのと同じ。そこまで理解するのが難しいものではないのだが、それでも一目で理解できるようなものではない。そもそも魔法構築の構築内容がなんであるか……何の構築状況で何が起きるかわからなければ構築内容が読めても魔法に対応はできない。つまり普通ならば不可能、という話だ。

 だがそれでも相手は魔法を見抜き、それに対応する魔法を構築してくる。とんでもない実力者……夢見花以上の実力者と評されても何らおかしくないレベルの魔法使いである。



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