表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十一章 魔法使いの国
1317/1638

1



「魔女から連絡が来た?」

「そう。"夜明け"の魔女」

「……なんというか懐かしい名前だな」

「公也は交流していなかったかもしれないけど私は魔法関連で彼女とずっと交流していた。この世界由来の物ではない魔法の知識、魔女という種族特有の魔法、その他彼女の様々な見地を参考にさせてもらった時もある。私の持つ<月>は魔法使いとしての多大な才に知識の元となるものではあるけどそれは完全完璧なものではない。時に他者の使う魔法の知識やその能力を必要とすることもある」

「そこはまあ、俺にとっては関係ない話になるが……別に連絡が来たということ自体は普通なんだろう? 交流していたということは魔法で向こうと連絡を取り合うことはあるってことだろうし」


 夢見花のところに魔女からの連絡が来た……もともと彼女は魔女と連絡を取り合っている。公也が魔女のところに行き、そこから夢見花と彼女は繋がりを持ち魔法に関する話をするに至った。それゆえに遠話の魔法を使い話をすることはよくあった。だから別に連絡が来たこと自体は普通のことである。しかしその連絡が今回は普通のことではない。


「確かに話をすること自体は普通。だけど今回の連絡はただそういう魔法の話をするものではなかった」

「……どういうことだ?」

「一度こちらに来たいとそう言っていた」

「ふむ……別に俺はそれで構わないが」

「森が消えた、住む家が消えた、助手も持ってかれた、そう言っていた」

「………………一体何があったんだ。まあ、夢見花が迎えに行ってくれるか? 転移の魔法が……えっと、できるのか?」

「もともと連絡のつく相手、地脈の先。向こうと連絡がつく以上魔法の繋がりから座標を把握できるし転移も楽。わかった、連れてくる」


 夢見花の転移の魔法はどこでも可能というわけではない……いや、厳密に言えばどこでも可能といえば可能だが幾つか条件はある。転移自体、一方通行であれば無条件で可能ではある。ただ場所の座標がわかっている必要があるしそこまで移動するための必要な魔力量の問題はある。往復となれば扉に近い物を作る必要があるが、それは城魔の一部を借りるか自分の支配地である塔を通じるかが必要となる。そもそも往復できる移動路の維持は常時魔力を消費するため地脈上でなければいけない。魔女の住んでいるところは地脈の上であるため問題なく往復も可能である。

 そういうことで夢見花は魔女を迎えに行った。そしてあっさりと戻ってきた。




「それで……何があったんだ?」

「話としては単純なのよ。私のところにいた助手のことを憶えているかしら?」

「……一応は」


 テレナのことは公也はあまり憶えていない。どちらかというと一緒についてきて同室で過ごしたモミジやサフラの方がよほど彼女を憶えていることだろう。そもそも公也はテレナとのかかわりが薄い。憶えている憶えていない以前にあまり知らないという方が正しいものかと思われる。


「彼女が連れていかれたわ」

「……攫われた? いや、でもそっちの実力を考えると」

「厳密には攫われたとは言いにくいのかもしれないわ……彼女は魔法使いたちが治める国の出身で、彼女はその国の大きな家、魔法使いとして結構な実力者の家の娘だったのよ。ああ、一応貴族とかそういう扱いになるのかしら? ただ彼女は魔法使いとしては実力がなくて、才能も普通の魔法使いレベル……家格を考えると劣等な魔法使いとして扱われていたらしいわ。それが理由で国から逃げて私のところに来たわけ……まあ私のところに来たのは偶然らしいけど」

「それはまた」

「それで彼女の実家の関係者が今回来た中の一人だったのよ。だから攫われるというよりは連れ戻される方が正しいかしら。もっともそちらだけだったなら私でもどうにかできたんだけど」

「…………森が消えていた。恐らくかなりの大規模の魔法。それの主?」

「あ、それは私がやったのよ……もっとも防がれた上に跳ね返されたけどね、ある程度」


 夢見花は魔女の使った魔法による跡、そしてその魔法の残り香的なものからどういう魔法かも何となく把握している。それを使ってきた……となるととんでもなく厄介であるが、それは魔女の手による魔法である。もっとも相手はその魔法を防ぎ跳ね返していたという時点で魔女と同等くらいの能力はあるのは確実、魔女でなくともその人物なら同じことはできるだろうという話になる。


「まあ、そのあたりの話は俺にはあまり関係はないが……そちらは結局こっちに来てどうするつもりだ? いや、住む場所の提供くらいはしてもいいが」

「あらありがとう。それはこちらとしても嬉しい提案だけど……今すぐここで留まり魔法の研究を、とかそういうことはできないわ。先ほども言ったけど、私の助手が連れていかれたの。それを私は助けたいわ」

「……ふむ」

「場所に関しては問題ないのよ。どこにいるかは私はわかるから」

「もともと物探しとかそういう方面が得意みたいだからな」

「厳密にはそればかりというわけでもないけど……私は夜明けの魔女だから」

「夜が明けるが如く。晴れ渡り物を見ることができる、という点でものを見つけるという要素から物探しが得意、というのは理屈的にはおかしい気もしないではない」

「私に言われても困るわ。ただ、魔女はそういった自分の持つ魔女としての名、要素から様々な応用と派生を駆使して魔法を使うの……こういった話は後にしましょう。ともかく私は助手であるテレナを助け出したい」

「……だからここに来たと」

「そう。あなたたちの手を借りたいわ……相手は国の規模になるけど。まあ別に国を相手にしろとか敵を殲滅しろとかは言わないわ。テレナさえ取り返せれば後はここに逃げ込めば問題なく過ごせるもの……この場所はあちらとは全然遠い場所、向こうはこちらに手を出せないでしょうし」


 逃げる先として公也たちのいる場所はアンデール、魔女たちのいた大陸とは別の大陸にある国である。同じ大陸ならばともかく別の大陸にいる人間はまず追ってくることができない。そもそもテレナが魔女のことにいる事実も相手方が頑張って情報収集し探し当てたもの。一切の情報なしで別の大陸にいる魔女を見つけることはできない。そうであるがゆえに魔女はテレナと避難する先に公也たちのいる別大陸の国を選んだ。もっともそれは絶対の安全を保障するものではない。不安がないわけではないが……まあ、恐らくは大丈夫だろうと言えるものである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ