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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
間章 様々な出来事
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「…………なるほどなのです。確かに普通は年を取ることには敏感なものかもしれないのですね。わたしみたいな普通ではない、わたしの場合は魔物なのですしそういうのは気にする方ではないのですが。人間だと、あるいは人間に近い種だとそのあたりはしかたのないことなのです。しかし、それが見られないという異常現象に対する興味は湧くものなのですかね……いえ、言わなくてもいいのです。そちらの立場……祖国とかいろいろな方面、ライバル、周りの存在、ご主人様、全てをひっくるめて考えるとどうしても気にかかる問題になってくるとは思うのです」


 基本的にペルシアは魔物嫌い……まあ別に特別好きだという人物もこの世界にはそう多くないだろうが、ペルシアのそれは結構強いものだ。味方である魔物……メルシーネのように対話もできる存在を、理性的で有効的な相手を魔物だからと嫌いになる存在はそう多くはないだろう。しかしペルシアは彼女を嫌い……いや、嫌いとは言わないが、できるだけ近づきたくない、離れたい、関わりたくない、苦手にしている、そんな感じである。彼女の場合は魔物が嫌いというよりも自分たちをあっさり殺せるような強さを持つ人間ではない存在が恐い、という感じだろう。人間であれば構わない、というわけでもないだろうが……人間の方がまだ受け入れられる感じだろう。


「でもわたしに聞くほど気にしているのですか」

「…………気にするならあなたに聞けばいいとパティが行ったので訊ねただけです」


 ペルシアの言葉にメルシーネは視線をパトリシアに向ける。お前が言えよ、なんでこっちに回した、真実に関して教えるつもりか、色々な意味はあるが、パトリシアは特に何も言わず黙っている。メルシーネも視線を向けたのはほんのわずか、すぐに視線を外して目を少し瞑る。そして目を開けて話を再開する。


「アリルフィーラの年齢が変わった風に見えない、という話なのですね。それが何か特殊なやり方で可能としているという話なのです」

「……そうなりますね」

「この世界においてそういったことに関する手段は色々あると思うのですよ? 魔法による無理やりな手段もあるですし……手っ取り早く今を維持するなら不死になるとかそういう手段もなくはないのです」

「そんな手段を選ぶつもりはありません。人から外れ魔物になることを良しとするとでも? それにそれはアリルフィーラ様のそれとは違うものでしょう」

「まあ、そうなのです。ですが……これを行ってしまうのはどうかとも思うのですが……」

「なんですか?」

「本来ならペルシアはその影響の対象なのです。今更気にするというか、その影響を受けていないという状況なのも奇妙な話なのですよ」

「…………どういうことですか?」


 アリルフィーラが年を取らないように見える……それは何らかの影響によるものであるとメルシーネは言うが、それは本来ならペルシアも影響を受けるもの。より厳密に言えば対象はアリルフィーラとペルシアに限らず、ハルティーアもそうであるしあまり関係はないがヴィローサやペティエットなども対象だ。他にもその影響を受ける人物はいるが、ともかくそういった人物、複数の人物に影響を与えるものである。

 対象でわかるがこれは公也が深く関与するものだ。公也と関わる人物……その中でも接触の強い人物、相互に恋愛……あるいあいろいろと関係のある人物、それが影響を受ける。公也の特殊性はその能力からもわかるが、それ以上にその存在の持つ強さ、力の総量が影響としては大きい。また持っている力の質……その起源、より深く突っ込めばこの世界のルールに関わる根幹的な要素が大きく影響する。ただ老化しない、というだけなら公也であれば魔法でも可能だがそういうものではない。あまり詳しく語るのも複雑になるため簡潔に重要なことを言うと、公也が膨大な力を持つため神に近しい存在として扱われるため、それの縁者、繋がりを持つ存在はその神に寄り添う存在として神の寿命に匹敵する生存能力を得る、またそれによる老化の排除、不老になるというものである。まあ現時点での公也はそれを詳しく知らないしその要素も公也が完全に成長しきる、もっと上になるまでは完全なものとは言えない。本当の意味でその影響は不老どころか不老不死にまで至るが、そこまで行くと公也が神にならなければ不可能であるというちょっと特殊すぎるものである。

 しかしそれならなぜペルシアがその影響を受けていないのか。目に見えてわかるアリルフィーラ、もともと変化がないためわからないハルティーアはどうなのか。


「ご主人様と関わる人物は老化が抑えられるのです。だからアリルフィーラもハルティーアも年を取っているようには見えないわけなのです。まあハルティーアは割と元から子供みたいな感じでしたけど」

「…………そんなことが起きるはずが」

「ご主人様の圧倒的な強さ、他の存在との格の違いを知っているうえでそういうのですか?」

「………………」

「関わると言ってもあまり関係の小さい相手は別なのです。契約的……より直接的な繋がり、縁……そうですね、ペルシアやアリルフィーラのような存在であれば嫁入りという形で相手との深いつながりがあるわけです。それが一番大きな縁かと思うのです」


 結婚、婚姻……相手との縁を結ぶのであれば相手の家に入る、あるいはより強い契約関係という意味でもそういったものが大きな要素になるだろう。あるいはその前提となる繋がり……どちらが先かは人の貞操間やその地域や宗教観、その他いろいろな要素で決まるものであるが、ともかく互いの大きな繋がり、精神的、存在的、名義的、ともかく結びつきによる縁は大きくその縁を通じ影響を与えるもの。


「…………よくわかりませんが、それは私に影響をもたらしていないのでしょう?」

「そうなのですね。本当なら影響をもたらすのですが……」

「………………やはりあまり良く思われていないからでしょうか」

「いいえなのです。これに関してはご主人様よりも……そちらの問題なのですね」

「……どういうことですか」


 公也の影響がもたらされていない、というのはつまり自分が公也にあまり良く思われていないから……とペルシアは思ったがメルシーネは否定する。そしてそれは公也ではなくペルシアの方の問題だという。


「ペルシアは……ご主人様に対して思うところがある、いえ、こういうと軽くなるのですね。決定的にご主人様に対して嫌う要素、受け入れられない要素、咎め阻む要素があるですね? それが影響するのです。ご主人様とのつながり、そこからもたらされる影響……いえ、繋がりの方ですか。繋がりを断ってしまうような、いえ阻んでしまうような心の壁とでもいうですか。それが影響を受けないように、ご主人様とのつながりを、結びつきをちゃんとした物でなくしているのです」



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