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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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 街で出来る限りの物資をかき集めキアラートの軍はジェルシェンダへと旅立つ。街側の物資をかき集めると言っても本当の意味ですべてではない。流石に街が生活を送れる程度の物資は残す。支払いに関してはお金で支払いをするよりも今後の復興にキアラートが尽力することを約束した。現状の街の状況はそこまでひどいわけではないがやはりトルメリリンのせいでかなりの悪影響が残っている。その影響の払拭にキアラートが尽力することで支払いとする、ということだ。もちろん金銭的な支援も行わないわけではない。

 まあ、街側も色々な思惑がないわけではないが、それ以上にやはり戦争の渦中、巻き込まれた状況が彼らにとっては厳しいことであるだろう。そして略奪されたようにジェルシェンダが占領されたままでは個々の街が一番被害を受ける可能性が高い。彼らにとってはキアラートの軍がジェルシェンダを取り返し、戦争を行う地点がジェルシェンダになってくれる方がよほどいい……まあそう簡単にはいかないがそうなることを期待しての物資の提供である。

 そうして彼らはジェルシェンダへと進む。


「…………敵の姿がないわ」

「そうだな。だがそれは悪いことだろうか?」

「……どうかしらね。遭遇戦にはならないけど、代わりに相手は待ち構えてるってことになりそうだからあまりいいとは言いたくはないわ。でも下手に消耗するよりもいい可能性はある」

「……ワイバーン部隊とやらだけでも投入してきて急襲してくる可能性は?」

「ないとは言わないけど……それがいるとわかっている状態でそれだけを投入してくるかと言われるとちょっとないと思うわね。魔法使い部隊が来ている以上彼らもこちらを襲って無事でいられるはずがない。兵士は削れても魔法使いたちは削れない可能性が高い。相手の重要戦力を削られこちらは重要戦力が残る。相手側が不利になる、ということもあるわ…………問題はこちらの魔法使いが正規の軍人ではないと言うこと、兵士たちも冒険者が中心ということ。それらが相手にバレている場合どうなるかわからないわ。あとワイバーン部隊もそうだけど相手が兵を投入してきた場合こちらの傷は軽くなるけど消耗はある。魔法使いの部隊の魔力を先に消耗させられるのであれば完全に損ではない。もっとも魔力は日を置けば回復するからやるなら間を置かず、連続してやるかあるいは一斉に投入する……と考えると道中での遭遇戦は望ましくないでしょう」

「師匠とリーリェさんが凄く理知的な会話っぽい話をしてるっす……」

「キイ様もリーリェも頭がいい方なのよ?」

「キミヤ君はどうだろうね? 知識という点では凄いけど頭がいいかはわからないよ? 頭がいいと言う点なら僕の方が上だと思うけどね」

「なんですって?」

「ロムニル。変に喧嘩を売らないで。ロムニルが頭がいいのはそうだけど、私もキミヤ君も頭がいい方よ? フーマル君よりもね」

「さり気にディスられたっすか!?」


 ヴィローサとフーマルでどちらが頭がいいか、と言われると少し難しいところがあるがヴィローサの方がまだ頭がいいという結論になる。この中で一番頭が悪いのはフーマルと言えるだろう。もっともこの頭が悪いと言うのは勉強ができる、知識を多く知っているという分野においてであり、戦闘時の動きや反射的な行動、とっさの状況判断など本当の意味で頭が悪いかと言われればフーマルはその限りではないかもしれない。

 と、そんな話はともかく。そちらよりも現状ジェルシェンダへ向かっている彼らは現在敵兵と遭遇していない。それは戦闘にならないと言う点ではありがたいが、その分いろいろと予想できてしまうことがある。一つは相手が明確にこちらが来るだろうと言うことを推測し待ち構えていると言うこと。トルメリリンの兵士が街を襲い略奪をしているところを逆に襲撃し数を減らした。だがそこで生き残りが出てしまった。彼らが逃げキアラートの軍が来たことを報告しているだろう。そしてキアラートの軍の目的がジェルシェンダおよびゼルフリートの奪還であることは容易に想像できることだ。ゆえに向かってくるキアラートの軍を待ち構えるために待機している

 あるいはもしかしたらどこかで急襲するために隠れて回りこんでいると言う可能性もないわけではない。ジェルシェンダを襲った時のようにワイバーン部隊であればある程度の遠方から空を渡り一気に襲うことはできるだろう。ただその可能性は現状では低い。いくらワイバーン部隊が相応に強力な部隊であるにしてもその絶対数は少なく、またキアラートの軍には魔法使いたちがいる。魔法使いの部隊であればワイバーンの部隊を倒すことは不可能ではない。先制攻撃さえできればワイバーンの部隊を殲滅できる可能性も低くはないだろう。もっとも魔法使いの部隊は逆に襲われたときに不利で、ワイバーンの部隊でなければ倒せないほどというわけでもない。絶対数の違いで魔法使いはワイバーンの部隊よりも用意しやすく数も多く扱いやすいと言う点があるが、そういうところでワイバーンの部隊よりは不利である。

 そして何よりも魔法使いたちは正規の軍ではないのが最も厳しい点だ。すべての魔法使いが研究者などの軍人でない魔法使いであるわけではないが、魔法使いたちの中で軍人はかなり少ない。正規の魔法使いの部隊としての訓練を受けていない彼らはワイバーンを落とせるほどに戦えるかと言われれば……不安の方が大きい。ただ向こうがそれを知っているとは思えない。逃げる兵士に追い打ちをしたがその結果彼らの正体がばれた可能性は……比較的低い。もちろんないとは言えないのが不安な所である。

 どちらにしても彼らはジェルシェンダへまっすぐ向かうしかない。キアラート側はあまり時間を無駄にできない。戦争を行うにしても彼らは準備が足りないためできる限り急いでジェルシェンダを奪還しておきたい。そうでなければ一度退かなければいけなくなる可能性が高い。無駄足になり兵や冒険者が無駄死にする。それはキアラートにとって良くないことである。

 そうして進んでいると、遠目に少し破壊された後のある街が見えてくる。そしてそこに備えている兵士たち、トルメリリンの軍隊。ワイバーンの部隊も幾らか見え、彼らはキアラートの兵士を見つけ忙しなく動いている。


「あそこがジェルシェンダよ」

「……これは大変そうだな」

「そうだね。リーリェの予想通りと言ったところかな?」

「まあ、概ねってところね……これだけ準備されてると厳しいわね」

「あの兵士たちに勝てるっすかね?」

「それは知らないな。ヴィラと行ければ手っ取り早いが」

「ふふん。キイ様と一緒なら私は無敵よ」

「残念ながらキミヤ君たちは現状では向こうに行かせられないわ。護衛だもの」

「……この護衛仕事が地味にネックになってるな」

「私たちの安全のためと思ってもらえない?」

「まあ、ロムニルとリーリェを無駄に死なせるつもりはないが……代わりに戦争に勝てるか怪しくなるのはな」

「そうね……そこに関しては私も考えておくわね」

「……師匠とリーリェさんが凄く理知的な会話っぽい話をしてるっす」

「フーマルもこれくらい考えるようになりなさいよ? 本でも読んだら? 戦ってばかりだと脳みそまで筋肉になっても知らないわよ?」

「うっ……酷いと言いたいところっすけど、否定はしきれないっすね……」


 フーマルは決して脳筋ではない……はずである。まあ考えることをしないで本能的な部分が強いのは事実だ。獣人だからだろうか。

 と、そんな彼らが話をしている間に……ジェルシェンダに配置されているトルメリリンの兵士たちの動きがなくなり、準備が終わった様子である。キアラートの軍も準備自体はしている。半分要塞としての役割を持つ街、国境付近の街ジェルシェンダ。奪われたその場所を奪還するため攻め入らざるを得ないキアラートの軍隊。はっきり言って守る側を攻めなければいけず、かなり厳しい戦いを強いられると言わざるを得ない状況で会った。



※書いている作者的にこれは理知的っぽいのだろうか、と思ったりする。そもそも理知的ってなあに? って感じだしそれっぽければ別にいいかー的な感じかも。

※現パーティー五人で比べれば知識他いろいろな要因で一番頭が悪いのはフーマル。ただし別に彼の頭が特別悪いというわけではなく、他が彼よりもいいというだけの話である。フーマル自身は特別頭がいいわけではないが決して悪いわけではない…………はず。

※味方:魔法使い部隊 :数・多い、強さ・それなり

 敵 :ワイバーン部隊:数・少ない、強さ・かなり

 強さでは相手方有利。数ではこちら側が有利。ただ相手側は攻めてきて準備がしっかりできているところだがこちら側は急いで徴収した軍属ではない魔法使い、冒険者たちばかりなので戦闘面ではこちら側が大きく不利だといえる。相手側には正規の兵士たちもいるわけであるし。

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