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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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9


 街に入り込んでいる兵士の撃退、殲滅、追い払いに関してはすぐに命令が出された。ジェルシェンダに最も近い街でありそこが破壊されるのは場合によっては自分たちが街に長期の滞在になる可能性もあることからよろしくないということ、物資などが奪われたり破壊されたりしていると困ると言うこと、恐らくは街を襲っている兵士はトルメリリンの抱える軍事力のすべてではないということ。今この場で相手の兵力を削ることができればそれは後々自分たちの優位につながる。そういったことが考えられ兵士たちを倒すことに決まった。

 自分たちのことが見つかっているだろうと言うことも大きい。こちらが相手を見つけたということは相手からもこちらを見つけられるということ。もっとも現状においてはこちら側の軍が街を襲う兵士を見つけたのは公也の持つ警戒烏のフズの警戒の鳴き声と妖精のヴィローサが上から見ての情報であるためこちら側の発見経緯からして情報を得ることができたのは少し早い。もっとも相手側も街に近づく大きな軍勢を発見できないものではないだろう。現在街を襲っているとはいえ、そのすべてが街を襲うだけに従事しているわけではない。統括者、監督者として活動している者もいるだろう。そうなると確実に街に近づくこちら側は見つけられるということになる。

 ゆえにより先制で戦闘できるようにと直ぐに命令が出されたわけである。そうして街の中に軍勢が流れ込む。

 街を襲う兵士は明確に区別できる。兵士はその立場、存在を識別するためちゃんとした兵士であるとわかる装備をしているからだ。もちろん少々例外的に行動している者もいて勝手なことをして装備をしていないものもいるかもしれないが基本的に軍隊はその軍隊の所属であるとわかる装備をしている。これは討たれた場合の保証として軍に属して行動していたことがわからないと困る、その人物が味方の兵士であるかどうかの判別に必要であるなど理由はいろいろだ。単純に街を襲う以上相手が抵抗するのは間違いないので戦うために装備をつけているというのもあるだろう。

 そういう事情もあって街の中にいる兵士はわかりやすい……こちら側の軍も比較的わかりやすくはある。

 ただここで問題になるのが冒険者の存在。冒険者を味方として雇っているが冒険者に軍隊の装備をつけさせることはできない。そもそもからして軍隊の所属ではないし、それだけの数の装備を急に用意することはできない、冒険者の戦闘手段が通常の軍隊とは違い軍隊の装備をつけると戦闘がろくにできなくなる場合があるなどこちらもまた理由は様々。ただどこの所属であるかわからないと言うのは困るため簡単な識別証はつけさせている。どこまで役に立つかわからないが。

 そしてこの街へトルメリリンの兵士たちを撃退するために入ったのは冒険者、兵士だけではなく一部の魔法使いたちもまたそうである。ロムニルやリーリェも含めた本来軍隊に所属していない魔法使いたちが。


「彼はこちらに死んでほしいのかな?」

「厄介者とは思っていそうね。都合がよかったと言えばよかったけど、他の人は大丈夫かしら?」

「気にしても仕方がないね。それでキミヤ君、君は自由に行動するってことだね」

「……悪い。早く終わらせるつもりだ」

「キミヤ君はしかたがないわね。その代わりフーマル君にはしっかり残って守ってもらうわよ?」

「ええ!? いや、しかたないっすけど……」

「私はキイ様と一緒に行くわ。ああ、この周りにいるのは弱らせておくわね」


 ロムニルたちと公也たちは既に街の中に入っている。ここでロムニルたちと公也は別れて行動することになっている。戦力として公也は下手な冒険者よりもはるかに強く、その行動能力が高い。特に暴食による情報収集、完全な殲滅、ヴィローサによる毒による壊滅、そういったことができるゆえに好きに行動して街の中にいるトルメリリンの兵士を全滅させることができればかなり成果としては大きいと言うことである。

 もっともその場合ロムニルとリーリェの護衛がいなくなるのが困った話だ。他の魔法使いも入り込んでいるが軍属ではない人間ばかりを厄介払いしたかのように送り込んでいる。その彼らと近い状況になる……魔法使いが減る危険を考えるとあまりよくない。ただ一応フーマルがいるので完璧に守りがないというわけではない。それでもフーマルであるというのは公也が守りにつくよりは不安だと思われる……一応フーマルもそこそこ強くなっているのだが。


「それじゃあ俺は数を減らしてくる。他の冒険者を頼るのはできるか?」

「いや、この場の状況ではね。どちらかというと魔法使いを集めて固まったほうがいいかもね。本来後衛の僕らを守りなしで前衛に出してくるなんて何を考えているんだか」

「そうね。フーマル君がいるんだし守ってもらえるから他の魔法使いをこちらに引き入れたほうがいいでしょう」

「ええっ!? なんか責任重大になっているような……」

「頑張ってねフーマル」

「頑張れフーマル。魔法で防御と攻撃の補助くらいはしておこう」

「酷くないっすか師匠にヴィローサさん!?」


 そう簡単に話し合いがされ、フーマルがロムニルとリーリェの護衛につき、ついでに他の魔法使いを集めその護衛も担うことになった……責任重大というより、少々過剰な仕事内容になっている気がする。ともかくそういう話で決着がつき、公也は街の中で自由行動をして兵士の排除に動くこととなったのである。






「兵士の数自体は多くない……全体の数としては多いが、こちらに対しては少ないな。街を襲うために送り出された全体の一部か」

「話だとワイバーンの部隊がいるんじゃなかったかしら。今この場には居ないよね? どう思います?」

「ジェルシェンダに残っているってことだろう。そもそもここを襲っている兵士がどういう部隊かもわからないな。ジェルシェンダに本体が送られ合流したからその分こちらを襲うために送られたのか、それとも拙速を理由にまだトルメリリンの軍が来てないのに送られてきたのか……」


 街の中にいるトルメリリンの兵士はキアラート側の軍によって倒されている。そもそもの数の違い、相手が戦力としてそこまで大きいわけではなかったことが理由だろう。恐らくは略奪目的か、街を破壊することが目的だった可能性がある。少なくとも侵略して占領するような軍ではないように思える。


「あちらの物資が足りなくなりそうだからここまで取りに来た、か」

「それだけ相手が多いのかしら?」

「わからない。ワイバーンもいるからそちらに物資が奪われている可能性も……っと」


 公也もヴィローサと話しながら兵士を倒している。ヴィローサの毒により近づいた所で体の動きを麻痺させ動きを鈍らせた相手を倒すのでかなり楽だ。二人はわざわざ言わずともお互いの行動を意識できる程度には息があっているようである。なんだかんだでずっとそばに居続けるので相手のことが少しはわかるようになっているらしい。


「こちらは他に任せるとして、どこか誰も手を付けていないところに行こう」

「わかりました」


 人目のある場所では暴食も使えない。他に兵士や冒険者が戦っているのであれば無理に公也が戦う必要性はない。他の場所、兵士が隠れていたり、こちらが見つけることができていない相手を探しそちらを殲滅する。暴食による知識の収集も一つの目的として考えているのだから。



※戦場で両者の装備が同じような装備だと同士討ちの危険があるので色とか特徴でそれぞれを見分ける。もっとも今回の場合一方は兵士よりも冒険者ばかりなのであまりそういった点での見分けは必要ないかもしれない。

※ロムニルたちの扱いは悪い。その余波か他の研究社系の魔法使いの扱いも比較的悪い。

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