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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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6


 最終的に取り戻すべきは国境に接するゼルフリートである。しかしその前にまず相手方に先に取られたジェルシェンダの奪還の方が先になる。現在そのための行軍中である。兵士、冒険者、魔法使いの舞台と数多くの人間が集まっている状態だ。本来ならば軍事行動は相応に規律があり、びしっとした雰囲気であるのかもしれない。だが今回は急なことということもあり冒険者が数多く含まれている。そのためか冒険者同士で色々と話がされていて少しざわざわとしている。

 多少声がしたところでそもそも軍隊の規模がとても大きいので発見が容易なので喋っている人間がいたところでそこまで気にすることでもない。ただ、うるさいという点ではやはり一部の人間はかなり気にしている。もっとも基本的にそういった話をしてるのは主に冒険者であり兵士ではない。それゆえに彼らのことに口を出すことはしなかった。


「冒険者がうるさいが、いいのか?」

「別にいいんじゃない? 気にしても仕方のない話だし」

「気にしたところでね。別に問題もないだろうし」

「……いいのか」

「冒険者は私たち魔法使いみたいに軍の所属というわけじゃないのよ。今回は一応冒険者を雇い一時的な軍属という形にしているけど……元々指揮下にあったわけじゃないの。だから指示をしたところでどこまで聞いてくれるか、そもそも軍の規律とかそういうことを言ったところで知らないでしょう? だからいちいち指摘したところでしかたない、っていうのがあるわ」


 冒険者たちは今回軍属ということになっている。しかしそもそも冒険者は冒険者であり軍隊ではない。軍隊に必要なこと、軍隊が行うべきことを語ったところであまり意味はないだろう。逆に反発して離反することになるかもしれない。一応軍が指揮権を担っているがそもそも冒険者は個々の能力がそれぞれで全然違う。兵士のように全体で管理され誰がどの役割なのか、とはっきりわかるわけでもない。つまり扱いにくいのである。ゆえに冒険者は軍から指示が入るが大雑把な指示になり、彼らは彼らの意思、選択で戦うわけである。

 この場における彼らが話していることは別に単純に話をしていると言うだけではないだろう。場合によっては今回の戦争に関する話し合いもしている。どう戦うか、どう行動するか。事前の打ち合わせ、連携の確認などをしているかもしれない。軍が話し合いを禁じ、事前のお互いの連絡ができないのであれば冒険者側はかなり面倒な状況になる可能性もあるだろう。

 そういった考えもあって基本的に話を禁じることはない。うるさいせいもあって場合によっては魔物や獣が寄ってくることもあるかもしれないが、さすがにこの数を相手にまともに向かってくる魔物はいない……こともないが労することもなく簡単に倒されることだろう。


「そういうものか」

「そういうものよ」


 そんな感じで行軍は進む。その間に公也たちも色々と話し合いをする。もっとも前方にいる冒険者たちと違い公也たちはやることがほとんど決まっている。公也の仕事は護衛、それゆえに戦いへの参加はほぼできない。それでも移動中が退屈なので話し合いをしている。していると彼らの声を聞いてか、公也たちへとむけられる視線を公也たちは感じる。


「……あれは?」

「今回の指揮官ね。軍側の人間、今回は急ぎだったから魔法使いの彼が指揮を担うことになったのよ」

「魔法使いか」

「通常なら軍属のちゃんとした指揮官が来るんだけど……時間がね。近くにいた一番上位の人間が、ということで就いたのが彼。軍属のちゃんとした戦闘魔法使いよ。だからか私やロムニル相手にちょっと厳しいみたい」


 研究者であるロムニルとリーリェに対し彼はちゃんとした軍属の戦闘するための魔法使い。戦闘のための魔法を覚えている魔法使いでそのための訓練も積み、魔法使いとしてはきわめて強力だろう……上位に就けるのは魔力の高さという魔法使いの資質も大きな要因である。もっともこの場においては公也の方がはるかに強いし、扱う魔法に関しては研究者として魔法を研究した結果、また公也たちと出会った結果いろいろと強化できたためか下手をすればロムニルやリーリェの使う魔法の方が強い可能性もある……そういったことは流石に表に出るまではあくまで可能性の段階でしかないが。


「面倒な話だな」

「そうね。でもまあ、向こうを不快にさせたところで得もないし話すときは小声で話しましょう」

「そうだな」


 そういう感じで行軍中公也たちは小声で話す。と言っても、ロムニル、リーリェ、公也が話すことと言えば魔法に関すること、その検証や研究について。流石に実証に関して行軍中にはできないので本当にいろいろな可能性について話すだけだ。流石に戦争中にそういった話し合いで考えられたことが行われるとは思えないが……もしかしたらやるかもしれない。いや、たぶんやれない可能性の方が高いだろうか。

 戦争における魔法使いの部隊、彼らもまた軍隊、軍事力。各々が勝手な魔法攻撃を行えば戦いの場が混乱することになるかもしれない。各々の魔法攻撃が干渉しあえば場合によっては味方の方に戻ってくることもある。竜巻に巻き込まれる火球や水の玉、氷の槍を溶かす爆炎、風をかき消す土塊の雨。複数の他人の魔法がそれぞれ存在すればその干渉によって弱い物が掻き消えることもある。ゆえに使う魔法は一定の画一化された魔法を使う。一斉に射撃し弾幕のようにすることが多い。

 ちなみに魔法使いの戦力自体はキアラート特有のものではない。ただ、部隊として運用できるほどに用意されているのはキアラートのみ、という話だ。そもそも魔法そのものは今回混じっている冒険者の中にも使えるものはいるだろう。しかしそれではだめだ。ちゃんと運用し、弾幕のように相手を攻撃するのに有効的な使い方をできなければ戦法、戦力としては弱い。ゆえにこそこの国における魔法使いの部隊は部隊としての形が作られ強いのである。


※冒険者は軍隊みたいに規律正しい行進とかできないし一律の威力、射程の魔法の一斉射とかもできない。パーティー間の連携ならともかく他の冒険者パーティーとかの連携も普通なら難しい。ゆえに独自に動いてもらうしかない。

※ロムニルやリーリェに当たりが厳しいのは派閥の問題。少数派閥ゆえの苦労。

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