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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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5



 集合はすぐ翌日。参加を表明してすぐである。そしてその日、早い時間から公也たちは冒険者ギルドへと向かうこととなった。とうぜんながら同じく国境付近の街へと魔法使いの部隊の一員となって向かうこともありロムニルとリーリェも同じくらいの時間に出ることになった。もっとも公也たちは冒険者、ロムニルたちは魔法使いということでそれぞれの管轄は違う。公也たちは冒険者ギルドへと向かい、ロムニルたちはこの街に来ている魔法使い、この国の軍の元へと向かった。指揮系統は違うとはいえ彼らの向かう先は同じなので結局は一緒にまとまるのだがやはり基本的な考え方の違いか、あるいはお互いの立場の違いか。あまりうまくまとまってはいないようだ。


 冒険者ギルドは組織としては様々な所に拡散しているかなり幅広い組織である。横のつながりもそれなりに大きく、同じ国内ならばまず各冒険者ギルドにつながりがある。場合によっては別の国の冒険者ギルドとのつながりもある。しかしギルドは時に国に冒険者を軍事力として提供する。これは冒険者ギルドは個々の組織でもあるからだ。その国に根差し、その地で活動する冒険者ギルドは国によって体系が違うこともある。基本的にすべての冒険者ギルドは冒険者ギルドという大きな括りになるが、各国においてはその国に属するものとしてその国に関わる活動となる。そうでなければ冒険者ギルドは危険な組織として国によって排除されることもあるだろう。国にとって都合が悪い活動をする組織を国が残す意味がない。ゆえに国にとって必要とする活動をすることもある。今回のような隣国からの侵攻に対する兵士の派遣、と言ったような。


 と、そんな感じで冒険者が集まり、魔法使いたちを含むこの国の軍事力、兵士たちと合流し国境付近の街へと向かう。根本的な指揮系統、管轄は違うとはいえ冒険者たちはこの国の兵士という扱いで一時的な軍属となる。なぜそうする必要性があるかというと指揮系統を一本化しないといろいろな意味で危ないからだ。もちろんいざという時冒険者たちに指示を出せるように冒険者ギルド側にも特殊な指揮権限はあるが、しかし基本は国側が指揮系統という扱いになっている。

 部隊としては後方に魔法使い部隊、冒険者と兵士は纏まり前方へという配置。一応どちらかというとこの国の兵士が前に出ることになっている。冒険者を集め使うのはいいが、冒険者は兵士のようにその身を尽くして国のために戦うという存在ではない。前に配置して使い潰す、というわけにはいかない。戦う者としてこの国のために先陣を切って戦うのが兵士の役目だ。そういうことで基本的には国の兵士が前方である。もっとも冒険者も今回の戦争において給料、報酬をもらうこととなっているため前方で積極的に戦う者もいる。冒険者によっては戦闘を好むものもいてそういった者なら前に出て戦うことだろう。

 公也たちも前よりにでる冒険者として配置について進もうと思ったが、上官の方から公也たちが呼び出しを受けた。この国の軍に知り合いはいないし、冒険者としても公也たちはまだDランク。表向きに伝わる分には戦力としては微妙な所だ。だが呼び出された先に向かえばその呼び出しの理由はわかった。そこにはロムニルとリーリェがいたからだ。


「……なんで二人の所に?」

「ああ、それはリーリェがやってくれたんだよ」


 公也たちがリーリェから話を聞く限りでは、魔法使いの守りとなる兵士の数が少ないことを理由に冒険者を守りとして活用するのはどうか、という提案が成されたようだ。今回の戦争はかなり急激に起きた戦争であり、兵士たちを集める時間が足りなかった。そもそも冒険者を集めざるを得なかった理由は兵士を集められない、魔法使いの舞台を集められなかったのが大きい。本来軍事的な戦力としてカウントされない研究者としての魔法使いであるロムニルやリーリェが集められているのもその理由からだ。とうぜん兵士は少なく、魔法使いの身を守るための盾となる前衛役の兵士も少ない。

 そこでリーリェが兵士ではなく冒険者から身を守るための人員をつけるのはどうかという提案をした。これには兵士の多くはロムニルやリーリェのような本来の軍側の魔法使いではない魔法使いの守りにつけない……いや、軍側の魔法使いの守りにつけられているからというのもある。自分たちを守る術がないのに戦争に参加するのはよろしくない。そういうことで冒険者を頼る、ということなのである。


「前に言っていたのはこれのことか」

「そうよ。あなたたちと一緒じゃないといろんな意味で不安だもの」

「でもよくロムニルと一緒にいられるわね? 魔法使いをそれぞれ運用するわけじゃないのかしら?」

「普通はそうなんだけどね」

「ロムニルは私がいないと全然ダメダメなの。それを主張して許可をもらったのよ。実際そうだし」


 ロムニルとリーリェはセットで運用したほうがいい、そうリーリェが主張した。そもそも二人は研究者の魔法使いとして普段から活動している魔法使いである。軍側の魔法使いとはまた扱いが異なり、果たして戦力として分けて使った方がいいのか、それとも普段通り合わせて使った方がいいのかもわからない。しかし普段からそうしていると言うのならば下手に分割するよりは一緒にいさせた方が動かしやすい、そう考えたようだ。そもそも夫婦であると言うのもある。同じ魔法使いとは言え、大元の管轄は同じでも基本的には外部の存在よりの二人、一緒にしておいた方がそのほかの色々な面でも扱いやすい。

 そして公也たちは冒険者であり二人と行動していることが多い。そういう点でも二人の守りとしてはいいだろう。そこの提案に関してはリーリェがしたことであるし公也たちの呼び出しもリーリェが頼んだことではあるが。


「そういうことだから。キミヤ君、フーマル君、ヴィローサちゃん、よろしくね?」

「……わかった」


 基本的なやり方がこれまでと変わらない、という点ではまあいいと言う話になる。しかし冒険者として前に出るのと違い魔法使いの護衛としての配置だ。少々今後の運用、やり方としてはまた少し話が違ってくる。


「基本的に俺たちはどういう役回りになる? 戦争のやり方は?」

「そうね。まず接敵する前に魔法使いが魔法を使い遠距離攻撃を行うわ。その際、私たちも魔法を使って攻撃する。全力ではないけど」

「なんで全力でやらないっすか?」

「魔力の問題だよ。戦闘がその一回で終わるのなら楽なんだけど、一日何度もあるかもしれない。また休息を碌に取れない可能性もある。魔力がなければ魔法は使えない。強い魔法を撃ったり、魔法を使いすぎればすぐに魔法を使う魔力はなくなってしまう。それだと今後の戦いができなくなるからだね」

「犠牲は少ない方がいいが、兵士たちにも仕事を果たしてもらう必要はあるだろうしな。ロムニルたちの言うことももっともだが。俺たちは?」

「キミヤ君たちは私たちの守り。向こうも危険度の高い強力な兵士である此方を狙ってくるわ。遠距離から矢、魔法、あるいは横合いから不意打ちの接近戦。トルメリリンとキアラートの戦いに関しては今までずっと何度も行われていたもの。お互いの強い部分を理解していないわけがない」

「なるほど……ってことは普通の戦闘には参加できないのか」

「そうなるね。参加したかったのかい?」

「役には立てたと思う。できれば勝って終わらせたいしな」


 自信のある言い様だが、公也とヴィローサがいればかなり有利に進められることは間違いない。場合によっては公也が暴食を使い敵兵を食らうだけで戦争は終わると言っていい。流石にそれはやらないが、ヴィローサの毒があればかなり戦いを有利に進めることができたはず。しかし公也とヴィローサはフーマルと一緒にロムニルたちのいる後方へと下げられている。これでは活躍のしようがない。


「……魔法は使っちゃダメか?」

「うーん……どうだろう?」

「ダメ、かしら。多分指揮的にあまりよくないかと思うわ」

「そうか……」


 別に戦争をしたいわけではない……いや、経験してその知識や情報、感覚を得たい気持ちはないわけではないが、積極的に殺し合いをしたいわけではない。経験的な情報的な知識的なそれはともかく、戦争自体は死者が増えるあまりよろしくない行いであると公也は認識している。ゆえにできれば犠牲を少なく勝ったうえで経験を積み終わらせたいところ。だが残念ながらそうれはできなさそうでうまくはいかないようである。勝手に前に出るのは役割、仕事の関係で流石にだめだ。ままならないが、今はとりあえず後方で護衛待機という形である。



※冒険者ギルドは世界的組織ではない。ただその組織名、冒険者をまとめる組織としては冒険者ギルドというものは世界的に存在する。基本的に組織自体は街単位、地域単位、領地単位、そのうえで国単位でまとまっている感じ。各国間での冒険者ギルドの繋がりは比較的薄い。

※前線に出て魔法ぶっぱで活躍……することはなく護衛という形で後方に配置されることになった主人公。

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