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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四章 国境戦争
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「とりあえず情報集めて来たっすけど……皆さん神妙な顔してるっすね。普通に噂になってるしやっぱりそっちで聞いたっすか?」

「ロムニルたちが魔法使いだからその関係で連絡が来ていたらしい」

「ああ、なるほど……俺が情報集める意味は薄かったっすか」

「いいえ。フーマル君の集めた情報は冒険者側での物でしょう? 私たちは国側からの情報だから視点の違いがあるわ。そういう点では両者の情報を合わせていろいろと考えたほうがいいと思うわ」

「僕らが聞いた情報もそこまで多いわけではないしね。基本的に僕たちみたいな魔法使いは戦争には参加は決まってるし」

「ロムニルたちって研究者よね? それでも参加するの?」

「今回は人数が足りていない、とか……急ぎだからとかそういう理由かしら?」

「確かいきなり隣の国に攻め込まれて対応しきれず、国境近くにある街がすでにいくつか落とされている……とか?」

「大体そんな感じだね」


 公也たちは全員で集まり宿で話し合いをしている。現時点ですぐに出向くわけではないが、しかし今回の件に関してはかなり急ぎと言っていい状態である。遅くても三日で街を出てすぐにトルメリリン側から来るだろう敵軍に対抗しなければならない。招集は翌日行われ、魔法使いであるロムニルたちも既に連絡を受けているように国側の人員として参加しなければならない。


「しかし、ロムニルたちも参加する……が、冒険者としてではなく国の魔法使いの兵士としてだよな?」

「そうだね。だから君たちとは別行動になるだろう」

「……そうか。俺たちは冒険者として参加することになるからな」

「魔法使いが味方戦力から減るっすね」

「総合的には同じだから変わらないわよ。それにキイ様がいれば二人は別にいらないでしょ」

「うわあ……流石に酷い言われようだと思うな」

「ヴィローサちゃんはキミヤ君に熱心だもの。本気で私たちを蔑ろにしているわけじゃないわ……多分」


 実力的に言えば公也とロムニルたちでは公也の方が魔力量という点では圧倒的である。使える魔法の応用範囲も、消費の緩和も公也の方が能力的に高かったりするし決してヴィローサが言っていることが間違いであるとは言えないだろう。もっともロムニルたちにもいろいろと奥の手と言えるような魔法は存在する。公也相手に一歩も譲らない戦闘は可能である……最終的にはどう頑張ったところで公也を殺しきれないため公也の勝利は間違いないわけではある。魔法使いとしては引き分けることくらいはできると思うが。

 少々酷いヴィローサの言い方に関してはともかく、公也たちとロムニルは別行動となる。お互いが所属している場所が違うので仕方がないことだ。そもそもこの五人が普通に一塊のパーティーとなって行動していること自体本来は奇異なものだ。ロムニルが公也の魔法やその発想、想像力、応用性など様々な点に興味を持ったことが一緒にいる要因であり、前回の悪霊退治もまた新しい発想のきっかけになっている。

 しかし今回は別行動。ロムニルとリーリェは一緒に行動できるかもしれないが公也たちとは別行動だ。公也たちは公也たちで公也、フーマル、ヴィローサの三人での行動になる。こちらはパーティーであるし冒険者ギルドもわざわざ離して行動させたりはしないだろう。仮に離したところでヴィローサは勝手に合流することは間違いない。


「しかし戦争か……」

「人と争うことはできない、とかかな?」

「いや。別に人殺しはとっくの昔に済ませてる。盗賊だって殺しているしな。ただ国と国との戦いは初めてだから少し緊張がないわけでもない。フーマルの方は大丈夫か?」

「まあ……一応覚悟はできてるっす」

「ヴィローサちゃんは……妖精だから平気そうね」

「もちろん。そもそも私は兵士とかたくさんの相手には向いている存在よ? でも一人じゃ近づくのは危険だからあまりできないかな」

「ああ。確かにヴィローサ君の能力なら大量の兵士相手にかなり有効な戦力にはなるね……小さくて攻撃は当てにくいが、当たれば致命傷な時点で動かしづらいだろうけど」

「そこは俺が運ぶからいい。離れるなよ?」

「うん! ああ、キイ様と一緒、キイ様のおそばにいられる……私、とっても嬉しいわ」


 ヴィローサの持つ毒の能力はかなり優秀である。今回のような乱戦では少し使いづらい時もあるが、大勢を相手にするのには破格の有能さを見せることだろう。もっともヴィローサは妖精であるがゆえに目立ち、その小ささゆえにちょっとした攻撃でも致命傷になる危険がある。乱戦には入っていくこと自体が難易度が高い。そういう点ではヴィローサは単独では動きにくい。空から向かっていくにしても弓矢の雨でまず落とされる危険が高い。そこをフォローするのが公也、ということであるらしい。


「俺もいるっすけどね……」

「フーマルは大丈夫なの? 全然弱いのに戦争に出て生き残れる?」

「酷いっすよねそれ? 少なくともヴィローサさんよりはまだ死ぬ危険は少ないっすよ。それなりに強くなってるっすからね!」

「多少は自信がついてきたようだが……まだ不安はあるな」

「まあ、そちらのことはそちらに任せるしかないね。僕らは魔法使い側で行軍か。ちょっと退屈になりそうだな……」

「私がいるにしても、不安は残るわね……そもそも今回国側の兵士も少ないし……ああ、それならちょっといい提案があるわ。もしかしたらこの五人でまとまれるかもしれない。他の魔法使いの安全も買えるし悪い判断ではないかしら?」

「提案?」

「通ればの話よ。通ればあなたたちにも話は行くからその時にね」


 どうやらリーリェは何か思いついたらしいがこの場で話すことはしなかった。これはもし話が通らなければぬか喜びさせるだけになるからだ。まあ仮にここで提案を聞いたところでみんな一緒だ、と喜ぶようなタイプの人物はいないと思われる。


「……まあ、ともかくそれぞれでやることが違ってくるわけだ。お互いの方で準備をした方がいいな」

「そうね。ロムニルのも買ってこないと」

「行かないっすか……この人」

「行かないのよこの人。私がいないと本当にだめなのよね。行軍大丈夫かしら。不安だわ」

「流石に戦争中はちょっとは大人しくするよ……多分」

「不安だな」

「不安よね」

「不安っすね」

「不安だわ」


 戦争中でも思いつけばその場であれこれ考えて行軍の邪魔になりそうなロムニルである。流石に少ししっかりとした人間がついて引っ張っていくしかないだろう。昔はここまで酷くなかったとはリーリェの談であるが、リーリェがあれこれと世話を焼くから酷くなったのでは……と少し邪推したくなる感じである。

 と、まあ前日の話はそういう感じで決まり、翌日お互い向かうべき場所、ロムニルたちは魔法使い関連の国側の人員の方へと集まり、公也たちは冒険者ギルドに向かいそこで行われている参加の招集の方に向かい自分たちも戦争に出向くことを告げ、戦争への参加者となった。


※軍人でない魔法使いも使うのは今回が急遽行われた対応なため。通常の軍事活動ならまず研究者側の普通の魔法使いは集めない。後方で使うならまだしも前線には出さない。

※なお冒険者も普通の軍事活動では無理に集めない。今回集められるのは急遽行われた対応なため。もっともある程度は冒険者の自由意思に任さられるものでもある。

※ロムニルは街中で思いついた数式を地面に書いて踏みそうになった一般人に怒る、という感じの迷惑なタイプ。

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