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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「今回の成果はあまりよくなかったね」

「……それはしかたがない。まさか逃げられているとは思わなかったな」

「そうね。あのネクロマンシーがいなくなったことに早い段階で気づいた結果、ということなのかしら。それでもこの行動の早さはよっぽどね」


 公也たちが来た時点でネクロマンシーがいたと思われる組織はその組織の損壊させられた設備とネクロマンシーの仕事によるものと思われる死体の山くらいしか残っている物はなかった。いくらネクロマンシーを倒したからと言って、その情報が彼らの元に伝わるまでそれなりに時間がかかるだろうと思われた。ゆえにまだ残っている可能性は決して低くはないはず。

 しかし実際には彼らは逃げ出した後だった。ネクロマンシーが自分たちの元から逃げ出した時点で見つかる危険を考慮したのだろう。ゆえにすぐにいなくなって今はその痕跡が残るのみだったということである。


「師匠、しばらくは普通に仕事するってことでいいっすよね?」

「……ああ。新しい街に来たわけだしな」

「首都に行く予定だったんだけどね」

「別にいいんじゃない? 彼らについて戻って行ってもいいけど……別に用事があるわけでもないし」

「まあね。でもいろいろと揃っているんだけどねえ」


 元々は首都に行く途中だったのだが、ネクロマンシーとの遭遇でその対処、そして今この首都から大きく離れた国境に近い方面へと出向いてきている。一応街へと来た国側の人員の道案内が目的だったわけだが、公也たちもネクロマンシーの所属していた組織の持っている様々な物、設備、情報に興味があった。ゆえのことだが残念ながら逃げられていて情報はほとんどなし。一応成果はないわけではないが、ほぼすべてが国側の預かりとなっている。公也たちはわずかな情報しか得ることはできていない。それが公也とロムニルには非常に残念なことだった。

 一応公也はネクロマンシーを通じての情報がある。暴食の力を使ってネクロマンシーの持っている知識から得た情報だ。しかしそれでも今回の組織に関する情報はそこまで多くない。一応そこで作られていた者が何であるかはわかっている。素体、ホムンクルスと呼ばれるような人造人間であるということは。しかしそれをどうやって作るか、その設備に関する情報などはほとんどないのである。ネクロマンシーはホムンクルスに霊体を入れてホムンクルスを使えるものにするということをしていただけだ。彼らの作成には携わっていない。しかもうまくいっておらずそこまで情報を回されていない、重要視されていないという閑職みたいな感じだった。ゆえにネクロマンシーの持っている情報はそこまで多いわけではない。

 まあ、それでも今回国側が得た情報よりもはるかに多い可能性があると言うのがまた何とも言えないところである。ちなみに組織に関する情報も得たが同時にネクロマンシーの持つ霊体のアンデッドを作成する魔法に関する情報も公也は得ており地味にネクロマンシーの予備軍となっている。まあ使っているところやその魔法で生み出した存在さえバレなければ安全なので今のところは問題ないが。


「………………」

「どうした?」

「知っていることがあるんじゃないかい? 例のネクロマンシーから何か聞いていたりとか」

「……まあ、一応は。とはいえ、確証があるわけではないし詳しく知っているわけでもない。大まかには説明できるが厳密には説明できないからあまり教えることは……ちょっと難しいな」

「それでも聞いておきたいんだが」

「……わかった。あの施設で研究されていたのは人造人間。ネクロマンシーの仕事はその人造人間に霊体を入れて意思を宿させることで………………」


 公也がロムニルに色々と詳しく解説をしていく。まあ、公也の知っていることはネクロマンシーから得た情報でありそこまで情報としては多くない。それでもロムニルにとっては楽しく聞ける物事である。リーリェはあまり興味はないようだ。ロムニルとリーリェは基本的な研究方向も違うしその熱意も違う。魔法関係ならなんでもなら興味の持つロムニルに対しリーリェどちらかというと専門寄り、自分の扱う分野に強く興味を持つタイプである。まあ、公也の話す情報は外形、外側のあまり中身のない情報である。それがどれほど意味を持ち価値があるかと言われれば微妙な所だ。


「……キイ様、フーマルが呼んでいるわ。そろそろあっちを気にしたほうがいいんじゃないかしら?」

「…………そうだな。ロムニル、今回のことは縁がなくてほとんど情報が得られなかった。そこは残念だが諦めるしかない」

「そうだね……実に残念な話だけど」


 今回のことは自分たちにどうしようもないことなので諦めて別の方向へと意識を向けることにするしかない。ロムニルはリーリェとわずかなりにも得た情報から様々な魔法に関しての検証、実験、研究を。そして公也はフーマルとヴィローサと一緒に冒険者としての仕事を行うこととなっている。

 今回フーマルにはいろいろな意味で迷惑をかけた。公也は自分の意思を優先しフーマルの意思を聞くことなく多くの物事を決定していた。それゆえにフーマルは実に多くの不満が溜まっている。今回この街においてフーマルの意見を聞き、冒険者としての仕事に熱心に打ち込むことでその不満の解消ということになったのである。ちなみに仕事を選ぶのはフーマルである。公也が選ぶのではなくフーマルが自分のやりたい仕事を選ぶ形になっている。まあこれもまた不満の解消のための譲歩だ。フーマルは今までいろいろな意味で散々譲歩しているのでそれくらい公也側から譲歩したところで問題はない……というかそれでもまだ足りないのではないか、そう思われるくらいだ。

 もっともフーマルは今の所これで十分なくらいであるようだ。ここで不満を大きく解消できる状態であるからだろう。ちなみにフーマルが選ぶ仕事は大半が魔物退治である。以前のフーマルでは戦えないような相手も今のフーマルは多少戦えるようになり、それで余計に調子に乗っている。なんだかんだで公也を師とし過酷な戦いに身を置いた結果なのだろう。自覚はないようだが。








 と、そういうことでしばらくはフーマルの望む冒険者の仕事を行う関係上しばらくは街を移動することができない。国境付近、国の首都から離れ隣国とも近い街にしばらく滞在するということになった。そのこともあり、彼らはまた少し特殊な事態に……いや、国と国の関係からの発展する大きな物事に巻き込まれることになる。もっともそれはまだ少し先の話、この国における国境付近の街にて大きな襲撃が起きてからの話になるが。


※首都。多分王都とか使っているときもある。多分どっちでもいい。でも統一したほうがいいよね。多分統一されていない。

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