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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「あ! キイ様ー!!!!」


 ぎゅんっ、と急速に加速する勢いでヴィローサが公也を発見しそちらへ向けて飛んでいく。その様を見ていたロムニルとリーリェ、ギルドの職員にフーマルは流石にそれを追うようなことはしなかった。無理に追っても追いつけないしヴィローサがそういう行動をするのはネクロマンシーをどうにかしに行った公也を発見したからに他ならず、ならばみんながいるところへいずれ戻ってくるだろうと推測し特にこれといって何かすることはしなかった。


「っと……ヴィローサ。そっちは特に何もなかったか?」

「うん、なかった! なかったわ。ないわ! 特にこれと言って! ちょっとギルドの職員の人間がうじうじうるさかったくらい?」

「そうか。まあ、なら別にいいな」

「キイ様の方は?」

「全部始末は付けた……まあ、悪霊に関しては、だけどな」


 公也が始末をつけたのはネクロマンシーに関してのみ。ネクロマンシーを発見した際にごちゃごちゃと言っていた事柄に関しては流石に今はまだ公也でも手を付けることのできない案件だった。一応ネクロマンシーの頭部を暴食の力で喰らいその知識、記憶を取り込みその細かい事情に関しての理解はしたが、それに関して手を出すには公也だけでは不十分……いや、実力的な意味合いでは公也だけで十分と言えば十分である。問題はそれが組織的なことであり公也だけでは対応が厳しいという点にある。

 別にその組織に関してあらゆるすべてを無に還してもいいのであれば公也が全部やったところで構わないが、その組織の研究に関してなどを考慮すれば流石にその全部をなかったことにするのはもったいない。それに今回の悪霊退治の案件に関してもそれらの裏事情をなかったことにするのは色々突合が悪いと思われる。また、悪霊退治に国側が全く動いていないとは考えづらい。今は街側で対応しその結果悪霊を退治したが、魔法使いを含めた国側の動きがあった際彼らの動きが無駄足に終わるのはいろいろと体裁的に悪いかもしれない。その関連への対処と言うことでネクロマンシーの所属していた組織に関して教えることで彼らの心証をよくできるかもしれない。

 公也としても知ったそれらに関して全く手を付けずに放置する気はない。ゆえにそのことに関して街側に伝え相談するつもりである。


「……とりあえず、みんなと合流しよう」

「わかったわ」


 そうして公也はヴィローサを連れてギルド職員とフーマル達の下へと来る。


「なんとかなったみたいかな?」

「ネクロマンシーはどうしたの?」

「悪霊退治を終えたそうだが……」

「無事見たいっすね。よかったっす」

「……とりあえず、逃がすわけにもいかなかったし殺してしまったが、ネクロマンシーの死体を持ってきた」

「なに? いや、まあ、証拠としては…………どうなんだどうな? そいつが本当にネクロマンシーだったという証拠は……」

「倒したのね。まあ、放置するのは難しいそうなるしかないかしら?」

「そもそもネクロマンシーも魔法使い。特に悪霊を作るような人殺しだから放置するわけにもいかない。捕まえるのも難しいなら殺すしかないね」

「む……そういった点では国側街側の判断までは俺はわからない。ギルド側としては捕まえていろいろと聞くのが一番だが……」

「魔法使いとして彼の判断は間違いではないと思う。すくなくとも僕はそう判断するね」

「同じく。そもそも証拠の死体の見分もまだなわけだし、調べてからいろいろと判断してもいいでしょう」

「……それもそうか」


 ギルド側の人間の発言なのにギルド側が信頼していないのはどうなのか。公也は街にいる冒険者としては新参と言ってもいいのである意味仕方のない話かもしれないが、そこまで信頼されていない扱いなのはどうなのか。まあ彼も公也のことを詳しく知らないし、戦闘に参加しその実力も知らない、信じるに値する精神性、性格、実績があるかどうかも知らない今回のことについていくようにつけられただけの職員である。結局のところ彼には細かい判断ができる立場的な能力がない。

 ゆえに今回の公也が倒したネクロマンシーの死体を持っていき、それから判断するしかないだろう。もっともネクロマンシーがそれほどの判断が可能な物を持っていたかどうかに関しては不明なわけだが。


「ああ、そういえば一応このネクロマンシーがアジトとして使用していた場所があるみたいだ。こいつから情報を得てその場所がわかっているから一応言って持っていただろう物を確保しておくか?」

「もちろん! ギルド側としても今回の損失を補うための色々な補填は欲しい!」

「……僕らとしては証拠としての押収をしておきたいんだけど?」

「補填は構わないけど、街側と話し合って貰うものは貰うようにしてもらえない? ただ働きになるのは困るもの」

「う、うぐ……わかった。上に話してどうするかを決めてもらう」

「それと、後でその上の人と……街側の上の人も含めて詳しい話をしたい。いいかロムニル、リーリェ」

「それは構わないわ。でも何かあったの?」

「厄介ごとかい?」

「……恐らくは。ネクロマンシー自体は問題なく倒したわけだが、その関係でな……」

「厄介ごとだね。冒険者ギルド側とも話し合いは必要かもしれないし、全部後で色々と根回しするしかないか……」

「私の仕事ね。もう少しこの人もキミヤ君も対外の仕事ができるようになってほしい物ね? 苦手でしょう?」

「できないわけじゃない」

「苦手だね」


 ロムニルは全然だめだが公也はまだ対応できないわけではない。とはいっても得意な方ではないのは事実。フーマルは冒険者間の付き合いはいいがリーリェほどではないだろう。ヴィローサはまずありえないのでおいておくとして。


「とりあえず移動しよう。死体の運搬の問題もあるし、時間的にもあまりかけすぎて間に合わなくなったり問題が残ったりするのも嫌だし、退治したとはいえまだ何か残っている可能性もある。夜まで残って何かあっても面倒だ」

「そうだね。そもそもそこまで時間をかけるとも思ってはいないだろうし、出来る限り急いだほうがいいかな」

「よし。なら案内してくれ」

「ああ」


 そうしてネクロマンシーが一時的な居住地として使っていた場所に置いていた幾らかの物品を回収し、公也たちは街へと戻った。ちなみに死体も含め運搬は全部公也に任されている。空間魔法が実に便利であるようだ。



※ギルド側の観点と魔法使い側の観点は違う。あるいはそれぞれの立場の問題もありそう。

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