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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
三章 群体悪霊
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「あ、消えた」

「キミヤ君は……っと、倒れてる?」

「いえ、あれはただ気分が悪いからうずくまっているだけ……かしら?」

「お二人ともそんなこと言ってる場合っすかー!? 師匠ー!」


 悪霊の群体の嵩が減り、公也が近づき何らかの魔法によって光って中の見えない結界が張られた状況だったところからその結界が消え、公也の姿が見えるようになった。その隔離するための結界を張っていた公也はまるでその存在が最初からいなかったようになっていた悪霊の群体がいた場所付近でうずくまっている。公也が調子が悪くなったから魔法が消えたのか、それとも公也が調子が悪いが戦いが終わったことを教えるために魔法を消したのか。理由は不明だがとりあえず悪霊退治は一応の終焉を迎えたようである。


「大丈夫っすか?」

「……ああ」

「顔色悪いっすよ?」

「気分が悪いだけだ……っと、ロムニルとリーリェは?」

「あっちにいるっす」

「とりあえず一度あっちに行く」


 フーマルを伴い公也はロムニルとリーリェがいる場所に向かう。二人は公也の様子を見ているのみで得に動く様子はなかった。フーマルみたいに公也を心配していない、というのもあるが結界の魔法に関して考えているのもあるだろう。結果と言ってもあれは攻撃的、防御的なものではなく補助的な隠蔽、姿を隠すための物でしかないわけであるが。


「終わったのかい?」

「ああ……」

「あの結界の魔法に関して聞きたいのだけど。戦いが終わったのだから別にいいわよね?」

「あれに関しては後で教える。そもそもまだ悪霊騒ぎに関しては厳密には終わってないぞ」

「えっ!? でもあのでかいのいなくなったっすよね?」

「…………ネクロマンシーの存在かな?」

「ああ」


 悪霊騒ぎが終わっていない最大の原因はネクロマンシーの存在である。しかしロムニルとリーリェはそのことに関してはまだ懐疑的だ。


「可能性はあるけど、実在が証明されていないわ」

「……誰かから聞いたのかな? 例の声の主とか」

「そんなところだ。今回のことはネクロマンシーが裏にいる」

「でも、ネクロマンシーが自分の居場所を伝えられるようにはしていないと思うけど……」


 召喚、使役、様々な干渉と支配の魔法の多くはその使用者に関しての情報を伝えないような制限をかけることが多い。でなければそういった魔法を使う意味が薄くなるからである。遠隔で自分が関与しないでその存在を扱えるのに自分の存在を伝えられるようにされたならばかなりそれらを使う存在にとっては困る。特に多数を使役するような使い方をしている場合などは司令塔として使役者の存在がある以上それを潰されると一気に状況が変化することになる。ゆえに自分について喋れないように情報制限、行動制限をかける。


「それに関しては俺の魔法……ということにしておいてくれ」

「…………ふむ。後で詳しく聞きたいところだね、君の能力に関して」

「……そういうこと。なら今は追究しないでおくわ」


 ロムニルとリーリェは公也の言い方で事実を察する。情報を得る手段が暴食の能力であるということに。魔法だと断言しなかったのは魔法だとロムニルとリーリェがその魔法に関して詳しく聞こうとするからである。そして魔法だったならば仮に教えずともロムニルたちならば自力で開発や検証をしかねない。まあ、今回の相手が悪霊、アンデッドであるためそういった方面はそれなりにやりづらくなるかもしれない。しかしその場合は逆に公也がネクロマンシー扱いになる危険もあるのでそれはそれで問題である。意図はしてなかったが公也が魔法だと言わなかったことはそっちの面でもよかった。


「ってことはネクロマンシーのことはわかったのか」

「今いる場所もな。だから今すぐそいつを追う。あれを退治された以上今いる場所から去るのは間違いない」

「ずっと同じ場所でのんびりはしないだろうからね」

「急いだほうがいいわ。私たちの方はあの冒険者ギルドの職員に報告に行くわね」

「頼む」


 そういって公也はネクロマンシーの所に向かおうとした。それをフーマルが止める。


「ちょっ! 待つっす師匠! 話はよくわからない部分もあったっすけど、ネクロマンシーの所に行くっすよね? 報告時戻らなかったらヴィローサさんがうるさいっすよ!?」

「……それに関してはそっちで宥めてくれ!」

「あーっ! 待つっすよー!!」


 フーマルの制止も聞かず公也はネクロマンシーの元へと向かう。後に残されたフーマル、そしてロムニルとリーリェにはヴィローサの暴走を何とか抑え込む必要があるという事実が残されることになった。


「……どうするかな?」

「悪霊にやられたなら死体は残るわ。形見すら持ってこないのは変、つまり生きている……と言うのは?」

「そうだね。死体の確認に来ても死体が見つからないのは生きている理由にはなるか。でも、死体を消したと言われれば否定のしようが……」

「そうね……キミヤ君の向かった方向を教える……ダメね。どこに向かったか明確にはわからない以上はぐれる危険もある」

「っていうか彼はこの場所がわかるかな?」

「最悪あの街で待っているのもあり、でしょうけど……」


 色々な意味で困った状況であるとロムニルとリーリェはどうするかを話して気づく。そもそも公也はネクロマンシーの元へと向かったがその後の合流に関する話をしていない。公也は終わったら何処へと向かうつもりなのか。


「この近辺で待っていた方がいいかな?」

「……そうね。街に向かうよりはいいのかしら?」

「わかりやすいように焚火をしておこうか」

「そうね」

「話は終わったっすかー?」

「うん? ああ、とりあえずの方針はね」

「じゃあヴィローサさんの所に行くっすよ? もちろんお二人さんもお願いするっす。俺じゃたぶん説得無理っすから」

「……そうね。フーマル君はあの子からの扱いが悪いものね」

「なんであんな扱いなんだろうね?」

「知らないっすよ……」


 おそらくはヴィローサは公也と対等な立場に自分を置いている。そしてフーマルが公也の弟子、舎弟のような立場だからヴィローサにとってはフーマルが格下であるという考えをしているのだろう、と思われる。








「あれがまさかやられるとは。まったく、また新しいのを見つけなければならないとは……」


 ネクロマンシー、その存在が森の中を歩いている。街道を歩くと人に見つかる。彼のような道を外れた存在にとって誰かに見つかるということはかなり良くないことだ。たとえ自分の正体がわかっていないにしても、その存在を認知されないようにする。それゆえにこんな暗く人のいない歩きにくい誰も来ないような場所を歩く。


「あいつらに眼に物を見せてやるためにやっていることだというのに……冒険者め。邪魔をしやがって」


 イライラとしながら森の中を進む。彼には彼で悪霊の群体を作り上げた目的があった。


「あの組織が私の考えを受け入れていればこんなことにはならなかったものを……ええい、忌々しい。あいつらの実験の産物に意思を宿していたのは私だ。それがどれほど重要だったか。その私の意見を聞き入れないだと? ふざけるな。絶対に思い知らせてやる……」

「かなりの恨み節な」

「うん? っ! だ、誰だっ! 私の話を聞いていたのか!?」


 独り言に突如振ってきた何者かの言葉。それに過剰に反応するネクロマンシー。その声の主は森の木々の上から軽く降りてきてその姿を現す。


「詳しく教えてもらおうか? あの悪霊の群体を作り上げたネクロマンシー」


 ネクロマンシーに声をかけたのは彼を追いかけて来た公也であった。




※暴食の能力で食らうことができても獲得できるものとできないものがある。その存在の知識や記憶は自分に反映、獲得できるものとなる。その存在の精神は食らうことができるが反映されるようなことはない。霊体や魂の類…………は不確定。霊体は食らうことができるがそれらの主人公への還元は不明。魂はそもそも存在自体が不明。あるいは精神と共に魂自体の確保はできているかもしれない。

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