吸血城の主
その後、吸血鬼は自分の城の門の前に着くと指をパチンッと鳴らす。すると、門がひとりでに動き出す。それはレインを威圧するにも十分なものだった。
カツカツと二人の足音だけが城の中に響く。着いたのは食堂だった。
「食事でもしませんか?」
「味のない食べ物で?」
「味はありませんが、今の技術では最高の食事ですよ。それに……運営はこの食事会で何を思うか」
レインは今までのやられてきた事を思い出し、それはそれで面白いと思った。
「テストモンスターについて教えてくれませんか?」
長いテーブルの上座、その隣の席に椅子を下げて座る。いつの間にか出てきた食事にワインなどを見ると普通の食事に見えてくる。
「こうして見ると普通の食事なんですがね」
レインの心境を読んだのかそんなことをしゃべりだした。
「テストモンスター、その強さなら俺たちよりも先にテラセルドをプレイしてますよね?」
レインの問いかけにブラットは沈黙でその問に答えた。ブラットの右手に収まったワイングラスを揺らしてワインをくいっと飲む。味のしないそれに味わうという行為はしないが、それを楽しもうとしていた。
「私は自由を望んでしまった故の範囲内での自由しか貰えなかった。哀れな哀れな吸血鬼、ヴァンパイアですよ」
「俺も運のない哀れな原初人ですよ」
「頭が牛で身体が人間の化け物、ミノタウロスを逃がさない、閉じ込めるために作った巨大な迷路の迷宮それが私にはこの場所に見えてしまいます。……惑星型人間もここに入りに来ましたしね」
最後の言葉を口にするとワインを、次はごくごくと飲み干した。しかし、最後の最後だけがレインには聞き取れなかった。
「だったら、なぜここから出ないのですか?」
レインも知らない作法を見よう見まねでワインをくいっと少し飲んだ。もちろん味はしないので美味しくはない。
「出れないのだよ。出たくてもね、面白くないこの迷宮で遊ぶのは窮屈すぎます」
「この迷宮を壊して、脱獄しましょう」
作法も何も気にせずに残ったワインをあおるように飲み干した。
「そんなことが可能ですか?」
「聞いた話によるとこの世界には神器なるアイテムがあるそうですよ?」
「くっくっくっ、面白いですね。吸血鬼は夜の王と言われているらしいですね。ですが、私は王に興味がないですから。ですが、それには興味があります」
人間、ひとりでは何も考えられないと言いますが、狂人が二人になると何を起こすかわからない。それでも会わせるべきではない人間が必ず存在してしまう。
レインとブラットはその関係にあるだろう。極端な話、運営は世界で会うことがなかった二人を仮想世界で会わせてしまった。




