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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

誰かに守られた、私の命

作者: 星咲 航

 頭上では、今にも落ちてきそうな灰色の雲がうなだれて、私は今、黒い灰の積もった荒んだ大地を踏みつけて、立ち尽くす。


 つい先ほどまで銃声が、爆音ががなり立て、火薬と血の匂いが立ち籠め、鉛の玉が幾度となく交わっていたこの空間はしかし、今は静まり返り、風の音すら聞こえない。


 私は取り残された。


 ふと、足下のものに気付く。同じ服装に身を包み、仰向けになって、光の差し込むことのない空を見ている。

 私は、地に両膝をつき、震える手をゆっくりと彼の身体に向け、伸ばす。


 その時、私は初めて死に触れた。いや、正確には死体に触れた。活動を、生きることを終えたそれはとても冷たく、重たかった。触れただけなのにも関わらず、確かに重さを感じる。


 そのものの事を、私は知らない。けれど、私の瞳から溢れ、こぼれ落ちるものがあるのに気付く。どこからかこみ上げる涙を止めることは出来ず、涙と共に沸き上がる憤りや虚脱感、やるせなさ、数多の感情に身を委ねながら私は安堵する。


 自分はまだ、他人の死を悲しむことが出来ているのだ、と。冷酷で、非情で、利己的な人間にはなれていないのだ、と。命の重さを感じられているのだ、と。


 命の重さ?

 憎むべき敵と見なし、争った相手にもそれを感じられるのか。


 「あ・・・ああ・・・あああああああああああああああああ!」


 言葉にならない、声にすらならない悲鳴を、絶叫を灰色の世界へ投げつける。私は気付いてしまった。自分の行動の矛盾に。重たい命を守るため、私の取った行動は他の命を消すことだった。


 50メートルほど先に人影が見える。私とは違う服を纏っている。


 涙は、もう止まっていた。


 人影は銃を構え、照準を合わせる。


 そうか、これで、終わりか。


 ドンッと、不毛の大地に銃声が響く。


 私の命で、誰かが助かるのなら・・・


 男が最後に見たものは、自身に迫る、鈍色の弾丸だけだった。


 銃声はすぐに、灰色の空間に飲み込まれた。



今回のは暗いですね。重いです。でも僕自身そこまで深く考えて書いたわけではないので読み物として楽しんでいただければ幸いです。

昨日、今日とテーマが暗かったので、次の投稿は気分がぱーっと晴れるような爽やかなのに挑戦しようと思います。

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