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フラフラの思量

作者: 執毬 緑

 とても気分がいい。

 寂しさも紛れた。

 どうしてもっと早くに気づかなかったのだろう――。




第一章


 僕は彼らのことを思い返した。


 人口五万人の僕たちの国は大きな平原の真ん中にある。国の周辺に点在する石造りの警備小屋を横目に抜け、国全体をぐるりと一周囲った低くすり減った丘を越えると、視界を埋め尽くすのは遥かまで続く地平線だけだった。

 周りには何もない。僕たちはそう教えられてきた。平原の奥には何があるのか。そんな疑問なんて誰もわかない。

 しかし、その疑問を今は抱かずにはいられない。

 外の世界から彼らがやってきたのだ。

 彼らは先月、橄欖の月の頭に十人にも満たない少人数でこの国に近づいた。

 休憩中の警備隊員の一人が人間と思しき一団を発見。きっと腰を抜かしたに違いない。国の外に人間がいるなんて僕たちには考えつかないのだから。その一団はすぐに国周辺の丘にたどりついたところを警備隊員が対応しようとした。しようとした、というのは実際に警備隊員が対応できなかった。なぜならば、その一団、人間と思しきその一団は、かなり衰弱していたからだ。いや、衰弱しているように見えたからだ。彼らの目の焦点は無辺世界を見、今にも倒れそうな姿の上、着ている服もすそがボロボロにほつれていた。足元もおぼつかない。

 ふらふらと歩く彼らは今「フラフラ」と呼ばれていた。




第二章


 僕は孤独に震えていた。


 フラフラが僕たちの国に来てからひと月と数日。この国は崩壊の一途をたどりきってしまったかもしれない。


 蒼玉の月、冬の匂いがかすかに感じ始めた夜。僕は家の屋根の上にいる。ここからは色々なものがよく見え、聞こえる。

 燃える家屋。

 人々の悲鳴。

 道を歩くフラフラ。

 フラフラに襲われる人。

 フラフラになった人。

 そして、まっすぐな地平線。

 微かな星空と揺らめく炎が僕に影を作っている。

 どのくらいの国民がフラフラになってしまったのだろう。母さんと妹はどうなっただろう。

 とても静かだ。僕はそう感じた。

 寂しいのかもしれない。悲しいのかもしれない。他人の意志の存在がこんなにも大切だったのか。僕はそう考えた。

 ここから飛びおりてみようか。そうしたらフラフラに襲われ、噛まれるだろう。そしたらフラフラになってしまうに違いない。僕はそう思った。




第三章


 僕はフラフラと歩き始める。


 僕の視界が綺麗に開けた。

 とても清々しい。

なぜ寂しい思いを僕はしていたのだろう。僕はなぜ一人で静観を決め込んでいたのだろう。

 今の僕はまるでこの世界すべてと繋がっているようなのに。

 

 僕はこの満たされた感情をもっともっと他の人に味わってほしい。




第四章


 僕は――。


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