自由の話
PV ブクマ 評価感想ありがとうございます。
――ガタンガタン
また馬車に揺られて街へ帰る。
いい加減俺の腰とお尻が限界だ。
そしてまた2時間掛けて街に着いた俺達は、依頼の報告とする為にギルドに向かった。
「ウント様、早いお帰りですね。どうされました?」
マリーさんが気を遣ってくれてるが、上手くいかなかったと察しているんだろう。
「あぁはい、コボルトの討伐依頼ですが、討伐自体はしたのですが、素材を回収する暇がなくて……」
俺は洞窟であった事をマリーさんに事細かに説明した。
マリーさんはとても悲しそうな顔をしている、冒険者が死ぬ事なんて珍しい事では無いのに、優しい人だな。
「そうですか……ウント様大変でしたね。残念ながら報酬は出ませんが、報告を心から感謝します。」
報酬がないのは残念だけど、この際生き残れただけで充分だと思う。
「はい、大丈夫です。でも俺、もしかしたらあと1人くらい助けられたかもしれなかったし」
「助けられなかったのは残念ですけど、助けようとしたウント様は格好いいと思います。それに1人助けられたじゃないですか!彼女は感謝してると思いますよ!」
俯いてる俺にマリーさんが大人の説教をしてくれた。
美人に説教させるなんて俺ダサいなぁ……でもお陰で元気出てきた。
「すいません、ありがとうございます。俺頑張りますね!」
「はい、頑張ってくださいね。――ところでウント様、ナル様はこちらで預かって奴隷屋に引き渡す事が出来ますがどうしますか?」
まぁ預かってくれるのは有り難いけど、ここまで一緒に来たんだし最後まで面倒見るのが筋ってものだろう。
「いえ大丈夫です。俺達で責任持って明日までに連れて行きますので」
マリーさんがニコッと笑って返す。
「やはりそうですか、ウント様ならそう言うと思ってました。」
「はい、それではまた!」
俺は、超絶美人笑顔美しいマリーさんに深く頭を下げギルドを後にした。
「アニキ!今日はアニキ凄かったっすよ!俺は今日はもう帰らしていただきやす!」
「あぁ、モルドも今日はありがとな。じゃあまた明日な!」
「はい!おつかれっすアニキ!」
モルドはギルドを出てすぐ帰って行った。
疲れが溜まっていたんだろう。
俺はとりあえずどうするかな、ナルを奴隷屋に引き渡してもいいけど、期限は明日の正午までだし、今日だけは自由を味あわせてあげよう。
「なぁナル、今日良かったらだけど、奴隷屋に戻らないで俺の泊まってる宿に泊まるか?」
――急にナルが目を輝かせる。
「い、いいんでしょうか?僕なんかが!」
多分だけど、奴隷屋の部屋って汚いんだろうな、ナルが目を輝かせる理由がそうだろう。
「あぁいいよ。俺がナルを奴隷から解放してあげる事は出来ないけど、今日だけはナルの自由だから。」
「あ……ありがとうございます!……人にこんなに優しくしてもらったのは久しぶりです。恐縮ですが泊めさしてもらいます。」
ナルは涙目で感謝してくれた。
本当にどうにかしてあげられないだろうか?まぁとにかく今日は自由を楽しんでもらうか。
「じゃあレイナ、俺達は帰るから、また明日な!行こうナル。」
レイナの返事を聞かず振り返り、宿に向かって歩き出す。
「――ちょっとまって!!!」
レイナが大声で俺を呼び止めた。
「え?なに?どうしたの?」
ナルもビックリしている。
「あ……えっと……その」
するとレイナが、顔を真っ赤に染めながらボソリと、だがしっかりと聞こえる声で一言。
「――あたしも今日泊まるから!」