ケモミミの話
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―― 洞窟の中をやっと抜け、俺達は遂に洞窟を脱出した。
とりあえず休めそうな場所を見つけて、全員座り込む。俺はずっと女の子を抱えて走ってたから腕がパンパンだ。
「ぜぇ……はぁ……何とか上手くいったな……」
「……そ……そうね……やったわ!」
「ぜぇ……アニキ達……が凄かったっす!」
とりあえず奴隷の女の子は寝かせている。
相変わらずローブを着ていて顔が辛うじて見える状態だが……
「んん……あれ……ここは……?僕は一体?」
奴隷の子、目を覚ましたけど記憶喪失とかしてないよな?大丈夫か?……それに僕だと!?
「えっと……大丈夫?自分の名前わかる?」
女の子は俺達を見て目をパチパチさせている。本当に大丈夫なのか?
「あ……はい、わかります。ぼ……僕の名前はナルです。」
やはりそうだったか……ボクっ娘キタコレ!!
「そっか俺はウント、ナルは何でここに居るかわかるか?」
正直唐突のボクっ娘で動揺しているが、俺はそんな事表情には出さない。大人だからな。
「はい、おそらく僕を雇った冒険者さん達と一緒にコボルトの洞窟に入って、コボルト達が集まって来て……うっ」
「もういいよ、無理に話さなくていいから。」
いくら雇われ奴隷でも目の前で人が死んだら思い出したくもないよな。
「あ……ありがとうございます。」
「うん、大丈夫。それよりだいぶ汚れてるな、レイナ!替えの服あるか?」
奥で休憩してるレイナに声を掛けたら、鞄から替えの服を出して渡してくれた。
「じゃあナル、とりあえず服貸すから着替えてくれ。」
ナルには少々サイズは大きいが、レイナの着替えを渡す。
「ありがとうございます。お借りします」
そう言って、ナルはローブを脱ぎ始める。
まず、フードを脱いだ時それは見えた。
――ケ……ケモミミだとぉ!!
何だあれ可愛すぎんだろ!ボクっ娘でケモミミって反則!いや犯罪だから!
「あの、ナルってさ、獣人って奴?」
「はい。そうですが何か?」
「いや……何でもない、初めて見たからびっくりしただけだ。」
「そうなんですか。そんなに珍しい種族ではないですけど」
ケモミミがピクピクしてるのがたまんねぇなおい!……やばい、ナルがこっち不思議そうに見てるー!
――平常心。平常心。
俺が平常心を取り戻すと、ナルが着替え終わっていたので、詳しい話を聞く事にするる。
レイナとモルドは2人揃って今は寝ている。確かにあんだけ戦ったら疲れるよな。
「じゃあナル、コボルトがあの数集まっていた理由わかる?」
「はい。その前に僕が奴隷なのは知ってますか」
「うん。知ってるけど、それが何か関係あるのか?」
「はい、僕は特殊スキル持ちの奴隷なんです。だから彼等は僕を雇ったんです。」
ん?全く話が読めない……。
「特殊……スキル?」
「そうです。僕は発動すると魔物を僕に集めるスキルを持っています。それで、彼等は僕のスキルを使って魔物を集めてレベル上げをしようとしていたんです。」
なるほどな、あの冒険者達はナルを利用しようとして失敗したって事か。
まぁ自業自得だけどな。
「話は大体わかったけど、そのスキル発動したら解除出来ないのか?」
「解除は出来ます。というか、したんですが、解除した時にはもう集まり過ぎていたので……」
まさに、時すでに遅しだな。
まぁこれで大体の流れはわかったし、後はナルをどうするかだな。ここは直接本人に聞くのが1番いいだろう。
「話聞かせてくれてありがとう。ところで、これからナルはどうするんだ?」
「いえ大丈夫です。僕は雇われ奴隷なので、奴隷屋に帰らないといけません。」
奴隷屋か、どういう仕組みで奴隷になるんだろうか。まぁそれをナルに聞くのも悪いしな。
「じゃあ俺達も帰るとこだし一緒に帰ろうか。いつまでに帰らないといけないとかある?」
ナルがパッと笑顔になる。おそらく1人で帰る手段が無かったんだろう。お金持ってないのか?
「はい!お供させて貰います。あの冒険者さん達との契約は明日の正午までなので大丈夫です。」
「変な事聞くけど、契約が切れるまで帰らなかったらどうなんの?」
ナルが首に付いている首輪を指差す。
「契約が切れると奴隷は、この首輪が爆発する仕組みになってます。」
奴隷の首輪恐ろし過ぎる……。
何とか外してあげたいけど、流石に俺には無理だな。『女神の幸運』も明日にならないと使えないしな。
「そっか、じゃあとりあえず帰ろうか。」
俺は寝ているレイナとモルドを起こして、明日の正午までだが仲間になったナルも連れて俺達の住んでる街に向かった。
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