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00 過去

「あなたの笑顔って嘘くさいね」

 いつからだろう。

「ニコニコしてるけど心の中でなにを考えているのか読めないな……」

 偽りの仮面を被るようになったのは。

「なんか不気味」

 そんなつもりじゃないんだけどな……

「まるで人形だ」

 幼い頃の私はどこか大人びていて、周囲から浮いていた。好きなものは読書。友達もロクにいなかった為、絵本を一人で読みふけった。使用人すら雇えない貧しい家だったけれど、救いはあった。年の離れた兄が長期の休みになると土産話と絵本を持って実家に帰ってくるからだ。王都で働いている兄は、私の知らない世界について教えてくれる。

「ナータ、随分背が伸びたなあ。おにいちゃんは嬉しいぞ~」

 私の頭に手をかざし、ははははと笑う兄の顔には裏表なんてない。見てる私も心地良いくらい。

「にいさまのお話ききたいな~」

 無邪気な本来の子どもらしくおしえて~と、懇願する。

「うーん、そうだな……また今度でもいいか?」

「えー」

「今日はちと疲れててな」

「おにいさまの、意地悪!」

 いつも優しいお兄様が珍しく妹のお願いを断ったショックすぎる……私は、目に涙をためながら自室へと戻るのだった。





 翌日、兄は再び王都へ向かった。裏表のない人の良い笑みを浮かべて。

 いってくるよ、元気に手を振り背中に荷物を抱えて。

 しかし、もう二度と私が兄の姿を見ることはなかった。

 あとから聞いた話によると、ナータのお兄ちゃんは天国っていうところへ行ってしまったんだよと、両親が涙ながらに話していた。私は天国については聞いたことがなかったので、天国に私も行けるかなあ……そしたら、おにいさまに会えるのに!と無邪気に考えていた。帰るはずのない兄を待ちながら……




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