8驚天動地
色々ざっくりまとめてみれば、咲希のアルバイトが決まった時点で漆原が咲希の兄である紫苑を訪ねたらしい。
そこで自己紹介した上で咲希のアルバイトの了承を得て、ついでに何かの際には協力をお願いしておいたという。
「何かの際って何よ?」
くくっ……
は???
「いえ、貴女の丁寧な言葉遣いが初めて崩れました」
「そんなことはどうだっていいです。今回のことは想定内だったってことですか?一体いつから?ストーキングってどうゆうことですか?先生も知ってたってことですか?」
「まさか最初から想定していたわけではありません。
でも、そうですね。貴女には常にボディーガードのような人がついていましたから…」
「は?ちょ、ちょっと待ってください。何ですか?それ…」
「ご存知なかったようですね。多分お兄様でしょう。そうゆうわけで、先ずはお兄様に話を通しておかないと変に誤解されて何処で何を邪魔されるかわかりませんし何事も先に進みません。
なのでわりと頻繁に連絡を取り合っています」
言葉もないとはこのことか………あの野郎!何がボディーガードよ!ずっと監視してたってことよね。帰ったら絶対ぶん殴ってやる!
拳を握り締めぷるぷる震えた。
この時咲希は怒りが先に立っていたので漆原が何を先に進ますつもりなのか何を邪魔されたくないのかをうっかりスルーさせてしまった。
「なんで先生がボディーガードのこと知ってるんですか?」
「貴女を観察していればわかりますよ。もっともこれはちょっと引いたところから見ていたからでしょうか。織野さんは気付いてないでしょう。もっとも彼女も監視保護対象のようでしたが」
涼風まで……?
「ええ、二人一緒にいる時は二人。二人が別行動で分かれた時はちゃんと一人づつついてますよ」
言葉もない!どれだけシスコンなんだ!
あ〜でも涼風のは絢汰にちがいない。
「松永の件は初めから貴女を見る目付きとか視線態度が気になっていました。すると案の定お兄様からの報告でも貴女に付きまとっていると。なので何かあればすぐ対応出来るように様子を見ていたのです」
「それで、あのタイミングで兄ですか?」
「ええ。彼には合鍵も渡していましたし、貴女の行動はチェックされていましたから、ほんの数分もあんな男と二人きりという状況にはなかったと思いますよ。多分ね」
私は遅れて来ましたから定かではありませんけど………
ってことは、ずっと見張ってて有罪になった瞬間に踏み込んだってことよね………
なんか私が間抜けみたい。あ〜なんかムカつく!
この怒り、どうしてくれよう!
「さて、どうしますか?」
先程も言いましたがショックを受けているからと、お兄様任せはいかがですか?私も代理人として彼を立てますし………敵に回せば恐ろしい存在ですが、なかなか面白い男ですね。
それから松永を警察に突き出すかどうかと。
まあたたいして罪には問われずすぐに釈放されそうですが。
ですよね。と咲希でも思う。
それに警察に届ければ、咲希の名前が出るかもしれない。おまけに警察の事情聴取は面倒臭そうだ。痴漢被害でも泣きたくなるくらいしつこく色々聞かれると聞いたことがある。紫苑兄がついてくれるとは言うものの不安だ。
でも、あの男を無罪放免にはしたくない。
紫苑兄に任せたら……
あのどS、想像したくない。でも、咲希が頼もうと頼むまいとあの兄が何もしないわけがない。警察に突き出すより酷い目には遇いそうだ。
ん〜〜〜〜〜〜どうしよう。
しばらく悩んだが答えは出ないのでとりあえず保留にする。怒りはあるが怒りに任せて急くとろくなことはない。やはり当面は兄に任せてゆっくり考えよう。
「それならしばらくゆっくり休んでください」
そう言って漆原がリビングに飾ってあった大きなタペストリーをめくった。
そこに現れたのは一枚の扉。
しかも生体認証付き。
はい???
今日はもう驚いてばかりだ。




