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7寝耳に水

 紫苑兄は次いで数発殴り倒れたところで足蹴にして、松永のネクタイを外すと、それで後ろ手に縛る。

 咲希はただ呆然と眺めていたが、そこへ漆原が駆け込んで来た。

 なんか漫画や小説でよく見るお決まりパターンだなとぼんやり思っていたら


「咲希さん!大丈夫ですか?」


 と、これまたお決まりの台詞が聞こえておかしくなる。おかげで意識ははっきりしゃんとした。まだドキドキと心臓は煩いけど、わりと冷静にはなれた。


「まあ、なんとか」


 と起き上がろうとしたら慌てて漆原が手を貸してくれたので、そのまま椅子に座る。が、触れた手は放してくれない。

 視線を前に向ければ、紫苑兄が松永を壁に押し付け拷問…えっ、いや…あの…そう、事情聴取を始めた。


 この紫苑兄はかなりシスコンだ。うっとおしいくらい。弟二人の後、やっと生まれた妹。年も離れているので余計に何をやっても可愛いと溺愛されながら育ってきた。

 そしてこの紫苑兄は武道家でもある。各種武道を極め、人間の急所をよく知っている。しかもドS。職業は弁護士。


 この男、終わったな。被害者である自分でさえ少し気の毒に思うくらい悲惨な未来しか思い浮かばない。

 そう思えるのはたいして被害を被っていないからか。無論不愉快極まりないし、許せる気分ではない。半分はざまあみろ!と思っている。当然庇う気はない。


 あれ?

 紫苑兄、絶妙なタイミングで入って来たような………

 じとりと紫苑兄に睨めば、いたぶる手を止め


「お前、ストーキングされてたんだよ。気付いてなかっただろう」


 へ???


「しばらく泳がせてたんだが、とうとう犯罪行為に出た。さて、どうしたもんかねぇ〜」


 は???


「余罪もありそうだし警察に突き出すか?写真とか撮ってるだろ?えぇっ?」


 と携帯とノートパソコンを押収する。

 おまけに自宅もすでに調査に入ったという。


「可愛い妹の前でこれ以上醜いモノを晒すのもどうかと思うし、後は俺の事務所で話を聞こうか」


 そう告げると漆原にも後で事務所に来るようにと一言つけたし、松永を引き摺って出て行った。





 どれくらい時間が経ったのか、しばらくは呆然として、それから色々考え事をして、咲希の中である程度の推測がまとまった。


「先生、説明していただけますか?」

「やっぱり誤魔化されてはくれないよね?」

「当然です。私も当事者ですから」


 それなら先ずはとリビングソファへと座らされ、漆原はお茶の用意をする。飲んでいる間に出版社に電話するからと書斎に行ってしまった。

 すでに落ち着いてはいたが、その間がさらに咲希を冷静にする。


 漆原が戻り、出版社への電話内容を聞けば案の定先程の件の報告と言う。


「ただ事実を報告しただけです。今後のことは追々。今頃あちらも大騒ぎでしょう。今日中には担当が上の人間連れてやって来ますから貴女も覚悟しておいてください。あ、でも会いたくなけれぱ、それはそれで構いません。貴女は被害者ですから」


 困らせてやったら良いんですよ。あんな男を送り込んで来たんですから。代理人に貴女のお兄様を立てれば上手くやってくださいます。心配しなくて大丈夫ですと………


 それで思い出した。


「兄とは一体いつから?」

「貴女が初めてここにいらした時からです。帰られた後、私がお兄様のところまで出向き色々相談させていただきました」


 寝耳に水とはこのことか?まったく知らなかった。

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