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5漆原の秘密

「いかがですか?退屈はしていなかったようですが」

「はい。つい、のめり込んでしまいましたが……こんな状態で良いんでしょうか?」

「それは気に入って頂けたという解釈で良いのでしょうか?」

「はい。もちろんです。面白くて先が気になって、先生がこんな小説を書いていらっしゃるなんて知りませんでした」

「言ってませんからね」


 至極当然のように宣い口角を少しだけ上げる。あくまで表情はそんなに変わらない。


「ペンネームを使って何冊か書いています。暇があれば読んでみてください」


 と差し出された本は、咲希も知っているベストセラー作家のもので映画化やドラマ化されたシリーズもある。


「今日はエイプリルフールじゃないですよね?」

「違いますね」


 本を手に取り著者近影はとめくってみれば、そんなものはなかった。漆原はくすくす笑いながら


「覆面作家ですからね。写真はありません。取材は全てお断りしていますし、出版社はデビューからずっと同じところなので担当も同じ。表には一切出ない約束で一社専属のような形にしていますから」

「な、何故?」

「面倒ですからね。今でこそそこそこ売れていますが、最初は海のものとも山のものともつかない状態です。原稿料なんて些細なものですし本になったからと印税だって人が想像するような夢見る金額ではありません。いつまで続くかもわからない。本業は大学の講師、しかも女子大。目立って良いことはひとつもありません。ましてや売れたら売れたで面倒事が増えるだけで、表に出るメリットは見つかりませんね」

「確かに………」


 また漆原がくすりと笑う。

 貴女はやはり変わりませんねと。


「何がでしょうか?」

「私がちょっと売れている作家だとわかっても、ただの大学講師と接する時と態度が変わりません」

「びっくりし過ぎて反応が麻痺しているんです。きっと……」

「それにしても私にとっては大事なポイントです。そうゆうところが好ましいですね」


 は???

 今さらりと何か言ったよね?私の勘違い?秘書としての適性?仕事だよね?気まずいのは避けたい。うん。ここは流そう。


 咲希があたふたと思考をフル回転させているというのに、大人の余裕か漆原は平然とお茶を飲んでいて何故か負けた感が残る。自分だけが意識しているようで悔しい。

 これは恋愛経験皆無故のせいか………勉強の偏差値は勉強すれば上がるけど、恋愛偏差値は恋愛すれば上がるのか?

 恋なら一人で一方的にできるけど、恋愛は相手が必要かな……?一人じゃ出来ないよね……

 あれ???

 恋だって恋する相手がいなきゃ出来ないじゃないか〜!


 そもそもそんなことを真剣に理屈で考えている時点で年頃の女の子としてどうなんだろう………

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