白雪姫side.5
「……何よ……、何なの……あんたのその顔、ほんっといけ好かないのよ……、今すぐ消えなさい!!」
少女の金切り声に対し、何とも無感動な声が返す。
「わかった」
瞬間、少女が「いけ好かない」と叫んだモノが消え失せる。
「……ぁあっ、もう、何なの!!」
「……少し落ち着いたらどうかしら」
少女が声のした方を睨むと、そこには黒い髪の女がいる。
「あんたが言ったんじゃない……「取り換えてやる」って……。あともう少しだって……、そう言ったじゃない!! もう随分待ったわ!!」
少女――白雪姫は、黒い髪の女に噛みつくようにそう言った。すると、
「アナタの「少し」が、ワタシの言う「少し」と重ならなかっただけのことではないかしら。それよりもキーキー喚くのをやめなさい。しかも自分の駒にまで当たり散らして、見苦しいわ」
と、その女――死神姫が酷薄とも思える冷淡な声でそう返す。
「私の駒に私が何をしようが勝手でしょう!?」
「ええ、そうね。アナタがその魂である限りは契約は有効だもの。けれど軛が放たれた時、苦痛を味わう可能性を自ら高めるのは感心しないわ」
死神姫は、白雪姫の座る寝台から少しだけ視線を逸らして、その隣に置かれた小さなテーブルに鎮座するやけに大きな砂時計に目を止める。それを認めた白雪姫が、同じように砂時計を見て、口惜しげに言った。
「……あと数粒よ。数粒しか残ってない。なのに、どうして落ちてくれないの……!」
「その時が、まだ遠いからよ」
「許さない……。許さない許さない許さない! たかが脇役のくせに、可愛くも美しくもない癖に、妖精に大切にされて、何なのよ! 主役は私じゃない!! なんでよ! 何をどうしたってただの端役の女が、……っ、最悪だわ!!」
死神姫は、寝台で呪いの言葉を吐き続ける少女をぼんやりと見つめた。
……随分と、壊れてしまったものだ。
「口を閉じなさい。……見苦しい自分を捨てたのは、アナタ自身ではなかったかしら」
死神姫がそう言うと、白雪姫は再び死神姫を睨んだ。
「足りないのよ……、まだ、足りないのよ。足りない、全然足りない……、何でよ、何が駄目なの……、私の何が駄目なのよ……、殺してやる。殺してやる、絶対に殺してやる。あんな女、必ず首を刎ねてやるわ……!」
俯いてぶつぶつと呪詛のような言葉を吐く白雪姫に、
「ピア」
死神姫が、そう呼ぶ。
「ピア・フローラ・フォン=リネッカ」
白雪姫が、それに顔をあげた。
「……。なに」
その瞳から、じわりと狂気の色が薄れる。
「……何よ」
「終着点を、見失わないでいなさい。我を忘れて、何もかもを失うのはアナタよ」
その言葉を受けたせいか――白雪姫の双眸に、涙が滲んだ。
「わかって、いるわ……」
「それなら、自分の駒にあまり八つ当たりしないことよ。アナタに忠実な駒は、それしかいないのだから」
「……」
死神姫がふっと姿を消すと、白雪姫はしばらく沈黙していたが、やがて。
「……ねぇ、」
と宙に向かって声をかけた。
それはまるで、迷子の子供のような声だった。
「いるんでしょ」
その呼び声に、ふわりと彼女の右手前の空気が揺れた。そして、すぐに奇妙なモノが姿を現す。
白いような黒いような、それとも赤いような、不気味に色の揺れる、床まで届く長い髪。ガラス玉のような、透明で何も映さない不思議な双眸。全身は黒や灰、紺で固めているようにも見えるが、端々がゆらゆらとおぼつかない。
それは、ヒトの形をしていながら、とても生き物のようには見えなかった。
まるで夢から出てきたような、良く出来た人形のような、そんな印象を受けるモノで。
「……」
それは沈黙したまま白雪姫を見下ろしている。
「……何か、言いなさいよ」
「……何を?」
それは、よくわからない、と言った様子で首を傾げる。
「……。何でも、ないわ……」
白雪姫は、立てた膝に顔をうずめた。
彼女の様子に、それは、再び首を傾げる。それから、静かに彼女の隣へ腰かけた。
それきり、その場には沈黙が訪れるばかりだった。
はい、あけましておめでとうございます!
昨年は色々ありましたが、大変幸せな1年でした。
今年も何卒よろしくお願いいたします!
さて、本編では、白雪sideをお届けしましたが、色々またややこしいものが散りばめられています。
そして、今回明かされた白雪姫の名前。
この世界では、彼女はこの名前で呼ばれています。
なので、白雪姫、と呼ぶのは限られた人間だけ。
何か一波乱ありそうなお話でしたが、砂時計の砂が落ちきるまでには、もう少し時間がかかります。
一波乱、までは今しばらくお待ちくださいますよう。
ではでは、昨日の続きを~。
※こちらは本編とは一切関係がございません。
ご了承の上、お読みくださいますようお願い申し上げます。
主人公;……あれから不気味なほど何もないですね……
ユンファス;……うーん、これゴール近かったりしてねぇ?
シルヴィス;気は抜けません。ここまで何人も落とされてきたのですよ
ユンファス;あっは、そうだった~
主人公;笑い事じゃないですよ……皆さん、どうなったんでしょう……ご無事でしたらいいのですけれど……
シルヴィス;……
ユンファス;あ、罪悪感に苛まれている顔
シルヴィス;やかましいです
主人公;それにしても、本当に長いですね……のぼせそう……
シルヴィス;倒れたら放っていきますよ
主人公;うう……倒れません……
ユンファス;だーいじょうぶ! 僕が姫を運んであげるよ~
主人公;あ、ありがとうございます
ユンファス;ま、色々と悪戯はしちゃうかもだけど♪
主人公;……ええぇ……
シルヴィス;しっ、静かに! ……奥に……、誰かいます
主人公;ええ……もう犬は嫌ですよ……
シルヴィス;いえ、あれは……
ユンファス;人影?
主人公;え! 私たち以外にも誰か……
???;ご苦労であったの
シルヴィス;……
ユンファス;……不審者感MAX
主人公;す、蛛……? こんなところで、何をしているんですか
蛛;高みの見物よ
ユンファス;うっわ誰だか知らないけどサイテー
主人公;高みの見物って……
シルヴィス;……貴女の知り合いですか?
主人公;うっ、知り合いたくて知り合ったわけじゃないです……
蛛;くく、つれぬことをいう。まぁそれもよかろう。ちなみに脱落者には、三日三晩、白雪姫が叫び続ける夢を見ることになろう
主人公;死んでも嫌なんですけど
シルヴィス;誰のことですか?
主人公;あの、む、娘のことです
シルヴィス;そんなものが夢に出てこられても困ります
ユンファス;ええー、びっくりするくらいの美少女なんでしょ? 人生で一回くらい拝んでみてもいいかも、あ(湯に引き込まれる
主人公;なぜに!? 人生で一度も顔を合わせたくない人間ですよアレは!! ユンファス帰ってきてくださぁああああい!!
シルヴィス;……。阿呆は放っておきなさい
主人公;う、嘘でしょ……
蛛;ふむ、思いがけず終わってしまったか
主人公;お、終わった?
シルヴィス;何のことですか?
蛛;これは、そこの娘と、残り一人になった時点で終わりと決められておっての。勝者には褒美がある
主人公;いやもういらないから帰してください……
蛛;そうはいかぬ。骨休めを所望したのはぬしであろう
主人公;確かに言いましたけど……、あれはリオリムを思ってのことで
蛛;なに、その相手が変わっただけのこと。それでは、ゆるりと休むがよい(ぱん、と手を鳴らす
主人公;!! なに……
・
・
・
主人公;う……うぅ……?
シルヴィス;こっちに来ないでください!!
主人公;え……(辺りを見渡す
シルヴィス;いいですか、とにかくその岩陰から出ないことです、いいですね
主人公;……な。……なんでまた裸でお風呂の中に……!?
シルヴィス;くっ……、布も見当たりませんから、とにかく、今わたくしに近寄らないでください!
主人公;わ、わかりましたけど……、何だコレ。なんで風呂の中央の岩に、こんなに大量にお酒とかお茶とかお菓子とか置いてあるんだ……
道化師;骨休めだよ♪
主人公;ひゃっ
道化師;ああ、その女の子が胸元を隠す仕草っていいよねぇ
主人公;ほんと、死んでください……
道化師;大丈夫、多分見てないよ! これはねぇ、骨休めのために用意したんだよ。男女で二人っきり、お風呂の中にいたらさ、恋人になるかなって思って、ちょうどいい骨休めでしょ?
主人公+シルヴィス;何がですか!!
道化師;ほら、ここは仲良くしておきなよ。せっかくの特大お風呂だよ? 貸し切りだよ? 予約取るの大変だったんだからね~
主人公;こ、こんなの……、私じゃなくて、他の男性陣でやればよかったじゃないですか!! なんで私なんですか!!
道化師;だってほら、継母ちゃん、惚れてもらわないとでしょ?
主人公;もうそれは諦めました!!
道化師;いやいや、諦めちゃだめだよ。継母ちゃんは絶世の美女ではないけど、可愛いんだからさ~、大丈夫! ここでシルヴィス君と仲良くなって恋人になりなよ! じゃあね!(消える
主人公;も……、もういやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
道化師;あ、画面の前のみんな。あけましておめでとうございます! 今年もよろしくね!




