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87.apple

「……これで、シルヴィス以外全員集まった、のかな」


 カーチェスがそう呟くと、「そのようだな」とノアフェスが答える。


 お互い興奮しすぎたということで落ち着いた一同だったが、この中でも最も当事者であるはずのシルヴィスは、一向に姿を現さなかった。


「……気を悪くして、戻ってくる気がなくなってしまったのかな」

「へそ曲がりだもんねぇ、シルヴィスって」

「そういう……問題、なの?」


 台所で全員で床を磨いたり壁を拭いたりしながら、見慣れた紺色が訪れるのを待つ。


 しかし、どうにもやはり、戻ってくる気配はなく。


「……。もしかしたら、今日戻ってこないとか。……へちっ」

「……そんな……」


 カーチェスは、感情に任せて強く一喝してしまった自分を恥じ、後悔する。


「俺、探しに行ってくるよ」

「え、どこに」

「どこにって、宛てはないけど……、森のどこかにはいると思うから」

「無茶だ。あいつが戦闘でもしていなければ、気配を読むのは相当難しい」


 ノアフェスがそう言ってカーチェスを制すると、カーチェスは困惑顔で「でも」と口を開いた。


「だけど、このまま放ってはおけない。俺のせいで帰りにくくしてしまったのなら……」


 その時。


 銃声と、それから。


「シルヴィス――――――ッッッ!!」


 そんな声が、聞こえて。


「なに?」


 ユンファスが眉をひそめる。


「……。キリティアの声だ」


 キリティアとは、シルヴィスの精霊。奔放だが、シルヴィスのことを大事にしている精霊だ。


 その彼が、緊迫した様子でシルヴィスの名を叫んだということは――?


 そこまで考えた瞬間、カーチェスは台所から飛び出した。





 玄関の扉を叩くようにして開いたカーチェスの目に飛び込んできたのは、倒れたシルヴィスに縋り付くキリティアの姿。カーチェスの後を追ってきた他の妖精もそれを認めて目を見開いた。


 辺りには、風に混じって血の匂いが漂っていた。


「シルヴィス!?」


 カーチェスが駆け寄ると、キリティアが余裕のない表情で、


「シルヴィスが撃たれた!」


 と言った。


「撃たれたって……、どうして、ここまで辿り着けるの。人間は迷いの森じゃ迷わずに歩けない! もしかして相手は妖精か精霊!?」

「……っ、そんなことは、ない、でしょう」


 息も絶え絶えにそんな声が響き、カーチェスは倒れているシルヴィスに目を向けた。


 シルヴィスは辛うじて目を開き、痛みに耐えるようにしながら体を起こそうとする。


「おい、起き上がるな!」


 キリティアがそれを留めると、シルヴィスは鬱陶しそうに彼をにらむ。


「過保護は、気持ち悪い、です」

「ふざけんな。銃弾体に入れた状態で無理させられないだろ!」

「ああ、うるさい……」


 シルヴィスはそう言うと、キリティアの制止も聞かずに無理矢理に起き上がる。それに、肩から脇腹にかけての傷口から血が溢れた。カーチェスはシルヴィスを支えようとするも、それより先にキリティアがシルヴィスの肩を支える。


「とりあえず、家で寝かせて、傷から弾を取り出さねぇと……カーチェス、手を貸してくんねぇか」

「わかった!」

「……っ」


 シルヴィスは忌々しげに顔を歪めるも、抵抗はしなかった。キリティアはカーチェスと共に、シルヴィスと肩を組むようにして彼を支えると、家に入る。


 すると、地下からルーヴァスが上がってきて、血まみれのシルヴィスを認めて目を見開いた。


「……何が、あった?」

「……。鴉、です」


 その言葉を聞いた全員が息を飲んだ。

 ただひとり、ルーヴァスが顔をしかめる。


「……。とにかく弾を出す他ないか。エルシャスとリリツァスは他の部屋へ行きなさい」


 ルーヴァスの指示に、名を呼ばれた二人は「でも」と口を開く。


「何か、手伝わないと」

「……ほっとけない」


 二人の言葉に反論したのは、負傷した本人だった。


「喧しい、ですね。足手まといが、いたところで、迷惑な、だけです。部屋に、引っ込んで、いなさい」


 それは、ルーヴァスとシルヴィスなりの気遣いだった。


 リリツァスとエルシャスは、生業のわりに血に慣れていないのだ。

 体から弾を取り出す行為は当然大量の出血を伴う。そこへ、血に慣れていない二人を立ち会わせる必要はないと考えたのだ。


 その意図を読み取った二人は、後ろ髪を引かれながらも二階の自室へと去っていった。


「ノアフェス、ユンファス、手を貸してくれるか」

「構わん」

「ま、仕方ないよね」


 ノアフェスは自身の羽織を床に敷くと、シルヴィスをそこへ寝かせる手伝いをする。上半身の服を脱がせ、傷口を露わにして溢れた血を拭う。その間に、ユンファスは台所で手を洗った。シルヴィスの体から弾を取り出すためである。


 妖精は、体内に異物が入り込むと、傷の修復ができない。それ故に妖精の世界では、例外を除いて、銃は最悪の武器とされている。銃を扱うことも禁止されていた。シルヴィスが扱っているのも、本来は許されていない行為だ。


「……少し我慢しろよ、シルヴィス」


 キリティアがそう言うのと、ユンファスがリビングへ戻ってくるのはほぼ同時だった。


「……いくよ」


 シルヴィスのすぐそばに座り込んだユンファスは、無表情にそう告げる。そして、傷口に指を入れた。


 激痛に暴れる四肢を、他の四人が押さえつける。


「――ッッ!!」


 傷口を抉り出す痛みに、たまらずシルヴィスが絶叫した。

 





「……?」


 誰かの悲鳴を聞いて、ぼんやりした頭のまま、私は目を開いた。


 聞いたことがないほど酷い悲鳴だ。


『お嬢様? お体の方は』

「誰かの悲鳴が聞こえる……」


 まだふらつく体をなんとか起こし、私は立ち上がった。そして二階へと向かい――


「……シル、ヴィス?」


 悲鳴をあげてのたうちまわるシルヴィスと、彼を押さえつける妖精たちを認めた。その中には、見知らぬ男も混じっていた。


「な……、何を、しているん、ですか。シルヴィスは、」

「……あんたか」


 面識のない男は、しかし私を知っているようで、些か苦い顔をする。しかしすぐに険しい顔になると、


「悪いが、桶いっぱいの水と布を持ってきてくれ!」


 鬼気迫る様子に、私は反射的に返事をする。


「は……、はい」

「駄目だよ、姫にこんな血は見せられない。それに彼女は病人なんだよ。俺が水を取ってくる」


 カーチェスがそう言うと、男はカーチェスに怒鳴った。


「あんたはシルヴィスを押さえてろ! 暴れられたらいつまでたっても銃弾が取り出せないだろ!!」

「でも」

「わ、私は大丈夫ですから」


 私はややふらつきながらも台所へ向かった。そして、桶を取り出して、(かめ)から冷えた水を汲む。そして適当に汚れていない布を五、六枚見繕って、そのままリビングへ戻る。水の入った桶と布を差し出すと、見知らぬ男は


「助かる!」


 と叫んで、布を水で浸してシルヴィスの傷だらけの上体を拭っていく。それに続いて、他の妖精たちもシルヴィスの傷を拭い始める。


 改めてシルヴィスの周りを見ると、ルーヴァスとノアフェス、カーチェス、見知らぬ男、そして手を血塗れにしたユンファスがいた。彼の傍には、何か血みどろの小さな物体が転がっていて。


「それ……何、ですか?」


 私の問いに、ユンファスが無感動に答えた。


「銃弾」

「じゅ、銃弾?」

「……いいから、君は寝てなよ。こんなの、見てるべきじゃない」

「でも」

「いいから。……女の子は、見るべきじゃない」


 ユンファスはそう言うと立ち上がり、庭へと向かった。私はそれを追いかける。


「どうして、何があったんですか?」


 ユンファスは、井戸から水を汲み上げて、


「姫、君、病人でしょ? ちゃんと寝ててよ」


 血塗れの手を洗い流した。


「私はただの風邪です! 大したことありません」

「意識失って倒れた子が何言ってるの。いいから、おいで」


 ユンファスは強引とも思える態度で私の腕をつかむと、すばやく歩き出した。家の中へ戻り、すぐに地下へと歩き出す。


「待ってください、私も何か手伝わないと」

「あそこにいる妖精で十分だよ。君は寝てな」

「ユンファス、どうしたんですか。シルヴィスのこと、心配じゃないんですか?」

「……」


 ユンファスは私の部屋まで私を連れてくると、そのままベッドへと導く。そして、私をベットの端へ座らせ、そのまま寝るように促す。


「私は大丈夫です、それよりも」

「君に何かできる? いいから、放っておきなよ。……君は人間なんだから」


 その言葉に思わずひゅっと、喉が鳴る。


「……わ、私」


 私の動揺を認めると、ユンファスは複雑そうな表情になった。


「ごめん。君のせい、って言うのは、酷だったよね」


 酷だ、とはいいながらも、否定しないのを見て、私は自身がシルヴィスの怪我に関係している可能性に気づく。


「……。私の、せい、なんですか?」


 私がそう問うと、ユンファスはため息をついた。そして、近くにあった椅子を引き寄せて、そこに無造作に座る。


「わからないんだよね。……でも、その可能性は、高いかも」

「私が、何かしました……?」

「……。僕も事情はよくわからないんだけどさ」


 ユンファスは私から目を逸らしてこういった。


「シルヴィスを襲ったのが……鴉、らしいんだよね」

「から、す?」


 その名前は、以前、聞いた。


 確か、私の――


 女王の、私兵だと。


 実態が知れず、ただ少数で動く黒い兵士。


 コーネリア帝国から私が連れてきた、私のためだけの軍隊。


 それが、鴉。


 その兵士がシルヴィスを襲ったということは――


「……それは、つまり」


 私は、ない頭を必死に使って考える。そして、信じたくはない結論に、至る。


「私が、ここに捕えられていると思って、シルヴィスを攻撃した、と……いうことですか」

「……」


 ユンファスは沈黙した。


 けれど、それが、肯定であると。


 その可能性が、一番高いのだと、私にはわかった。


「……」


 私は、がんがんと頭が痛むのを感じた。


 それが風邪のせいなのか、それ以外の理由でなのかは、判別がつかなかった。


「……」

「でも君が悪い、と言い切るのは君に酷でしょ。……多分、君の指示ではないんだろうしさ」


 ユンファスにいつもの飄々とした調子はなく、どこか困惑したような表情でそう呟いた。


「だから、……シルヴィスのことは今はいいから、姫は寝てなよ」


 ユンファスはそういうと、席を立つ。


 そして、無言のまま部屋を出て行った。


 私は、ベッドに倒れ込み、ぼんやりと天井を見上げていた。

本編非常に血なまぐさいですが、年の瀬ですね!


いやー、もう今年も終わるんですねぇ。


そして迫りくる来年……うっ頭が。


一応今回がシリアスすぎたので言っておきますが、姫は病人です。

なので、看病がもう少し続きます。



シルヴィスとセットで。



えー、さて、嫌な現実と本編は忘れて、年の瀬ですから、何か楽しいことを皆様にお届けしましょう。


道化師、バトンタッチです。








※こちらは本編とは一切関係がございません。

ご了承の上、お読みくださいますようお願い申し上げます。








道化師;はい良い子のみんな、久しぶり! みんな大好き、道化師だよ! 今回は継母ちゃんまたも危険な立場になりピンチ! どうなっちゃうの!? って感じだね! 大変だね!


主人公;ほんと、どこからどう見ても歪みなくうざいひとですよね


道化師;あれぇ、何で開始早々罵られてるのかなあ僕


主人公;あなたが出てくると最悪なことしか起こらないからですけど


道化師;まあ、愛のキューピッドだからね!


主人公;地獄の悪魔の間違いかな


道化師;さて、今回は継母ちゃんへの骨休めを提案するよ!


主人公;……はい?


道化師;骨休めだよ、骨休め。年の瀬だし


主人公;……いや、いらないです


道化師;そう遠慮しないで


主人公;全然ありがたくもないので気持ちも受け取らず突き返しますね


道化師;どこまでも酷い返答を有難う……でも返してもらわなくて大丈夫だから!


主人公;いらないって言ってるんですけどわかれ


道化師;怖いよ


主人公;嫌いなので


道化師;え?


主人公;嫌いなので


道化師;……。そんな大好きなんて告白されたら僕も照れちゃうよははは! さて、今回は温泉を用意したよ!


主人公;ねぇあなたの耳どうなってるんですか?


道化師;スーパーハイパーミラクルなんだよきっと! でね、温泉はもちろんみんなで行くんだ!


主人公;誰かこのひと殺してください


道化師;ごめんね、僕も温泉ついて行ってあげたいんだけど、継母ちゃんと妖精たちとついでにリオリム君の分しか予約してなくてさ!


主人公;え、リオリム?


道化師;うん、そう


主人公;えっと、それってリオリムへの骨休めってことですか?


道化師;一応君への骨休めなんだけど、まぁそういう捉え方もできる? かな?


主人公;……何だ。たまにはまともなこともするんじゃないですか。


道化師;僕はいつだってどこだってまともだよ!


主人公;まぁ、そういうことなら受け取ってもいいです


道化師;ほんとに? 良かったぁ、やっと素直になってくれたね!


主人公;リオリムっていつも鏡の中に閉じ込められて窮屈そうなので、たまには温泉も悪くないと思うんですよね


道化師;窮屈ではないと思うけど、うん、いいんじゃない?


主人公;なんか色々不信感しかないけど、とりあえずよろしくお願いします


道化師;なんで不信感しかないのか全然わかんないなー


主人公;自分の胸に手を当てて聞け


道化師;じゃあ、みんなで楽しい温泉ライフ、満喫してきてね! 天と地の狭間より、赤き道化師は君の名に、罪と夢を裁かんとす。奏でる音は断罪を、途切れた弦は罰を謳え。我、世界の行く末に、神と人との果てを見る


主人公;……長い呪文だな……





???;うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああ


主人公;!? ……な、なに……ここどこ……(辺りを見回し


???;ま、待ってこっち見ないで、その、そ、色々、ひちっ、み、見えるかもしれないから見ないで!


主人公;え? その声、リリツァスで……。……? なに、これ


ノアフェス;お前、多分今裸だぞ


主人公;……


リリツァス;そ、そうだと思うから、こっち見ないでね! 俺たちも見ないから! へちゅっ


主人公;……


リオリム;な、なぜ、このような、ことに……お、お嬢様、何卒、ご無礼を……お許しください……(赤面


主人公;……ぃにゃぁあああああああああああああああああああああ!





ルーヴァス;姫、何故か岩に布があった。ひとまず、これを使って肌を隠しなさい


主人公;ええ……どう考えても道化師の仕業……。ひとまずルーヴァス、ありがとうございます……(大きめの布を体に巻き付け


ルーヴァス;いや、気にしないでくれ……(顔を手のひらで覆いながら


シルヴィス;……っていうかここどこですか


カーチェス;風呂、だよね。一応。何か水が緑色に濁ってるけど


主人公;……(湯が濁っててよかった……お互いに


エルシャス;……岩、むき出し


ノアフェス;ふむ。露天風呂、という奴か? 湯の色は……これは、ヨモギ湯だな。ヨモギの匂いがする


カーチェス;ヨモギ? ろてん? ……お店?


ノアフェス;ヨモギは、植物だ。露天風呂は、外にある風呂。扶桑(フソウ)では、ヨモギを風呂に使うのは珍しくない。風情があって俺は好きだが……ここは、外……、なの、か?


ユンファス;外? 外にしては、ちょっと色々良く出来てない? 岩でできてるけど、綺麗に部屋みたいになってるし、天井もあるじゃん


主人公;確かに……だとしたら人口の風呂ですかね? 明かりは……わざわざ灯されてますし。あれ、蝋燭かな


エルシャス;人口の、ふろ……? でも……


ノアフェス;俺たち以外に誰もいないな


主人公;あの、聞いてもいいですか


ルーヴァス;どうした?


主人公;なんで……全員、裸、っぽいんですか……


ノアフェス;全員風呂に入っているからだろ


主人公;だから! なんで! 男女関係なく! 風呂にいるんですかぁああああ


リオリム;お嬢様、このようなご無礼を、誠に申し訳ございません……かくなる上は、お嬢様を安全な場所へお連れした後、自害する覚悟を


主人公;何で! なんでそうなるの! 多分謝るのはこれ私のほうだよリオリム!


シルヴィス;……。何ですって?


主人公;アッ


シルヴィス;姫。……貴女今、何と?


主人公;いえ、何でも


シルヴィス;姫?


主人公;ほんと何でもないです何でも。本当に


ルーヴァス;やめなさい、シルヴィス。起こったことは致し方ない


シルヴィス;貴方は! 起こったことは何でも致し方ないで片づける気ですか!?


リオリム;おやめください、お嬢様が責められる謂れはございません!


主人公;リオリム……(庇ってくれるのはありがたい限りなんだけど多分これ、道化師の提案にうなずいた私のせいなんだよね……


ノアフェス;……まぁ、せっかくの露天風呂だ。少し、休んでいかないか?


シルヴィス;……は?


ユンファス;あ、いいねそれー。僕もさぁ、こんな大きい風呂ってほぼ無縁だし、ちょっとくつろいでいきたいんだよね


エルシャス;……水遊び、いい?


ノアフェス;誰も見ていないし、いいんじゃないか


ルーヴァス;待ちなさい。いくら何でもそれは悠長が過ぎ、


リリツァス;ルーヴァス隙ありー! へちっ(水鉄砲でルーヴァスに湯を発射する


ルーヴァス;うっ(顔に湯を浴びる


カーチェス;ま、また君たちはこんなことを……今日は姫もいるんだよ!?


エルシャス;……。ねぇ姫


主人公;はい?


エルシャス;そのひと、だれ?


主人公;あ……


リオリム;わたしは、お嬢様の、従者でございます


ユンファス;ん? あれ、召使全員、我侭姫に解雇されたんじゃなかった?


リオリム;わたしは、お嬢様を身命を賭してお守りせよと陛下より言付かっております。ですが、迷いの森まではお供できず……皆様には、大変お世話になったようで、感謝しております


ユンファス;男に感謝されてもうれしくないよねぇ


シルヴィス;というか突然現れた者に感謝されたところで、返答に困ります。初対面の人間なんて、さらに対応に困るんですが


リオリム;これは、申し訳ございません


ルーヴァス;……。いや、今はそんなことより、この状況を憂えるべきではないのか?


リリツァス;あ、そうだよね! へちっ。なんで俺たち、みんなでお風呂に入ってるんだろ? しかも姫まで一緒に


主人公;……(気まずげにうつむき


リオリム;恐らくは、道化師の気まぐれでしょう


主人公;さらっと言ったけどいいのそれ(こそ


リオリム;本来、わたしがこうしてここにいることは叶いません。彼の戯れとしか考えられませんし、そうであるなら、お嬢様の辿る道筋に大きな影響は及ぼさないかと……しかし、今はルーヴァス、殿、の仰る通りでしょう


主人公;?


リオリム;……。わたしがここにいることは、当然異常です。鏡に、戻らねばなりません(こそ


主人公;あ、そっか


シルヴィス;そこ、何か企んでいるのですか?


主人公;こんなところで堂々と何か企むわけありませんけど!


シルヴィス;どうだか


主人公;こんな状況で何を疑われてるんですか私!?


ユンファス;あ、悪戯の相談なら僕も混ぜてね~


主人公;悪戯じゃありません


ユンファス;えー


リオリム;お嬢様に、悪事の片棒を担がせるような真似はお控えいただきたく存じます


ユンファス;うわぁ、従者くん真面目。僕の苦手なタイプだー


リオリム;それは、大変申し訳ございません


ノアフェス;……まったく申し訳なさげじゃないな


リオリム;そんなことは


カーチェス;ねぇ、本筋を思い出そう? 今考えるべきは、従者さんのことよりこの状況だって


ルーヴァス;ああ……余裕のある状況とは、いささか言い難いな。これではいざという時に身を護るのが難しい


エルシャス;……ふくと、ぬいぐるみと、斧……ない


リリツァス;どうしよう? この巨大な温泉、向こうまで続いてるみたいだから、とにかく進んでみる?


カーチェス;それがいいかもしれないね。正直、ここにいるだけでは何も進展はなさそうだし


ユンファス;なら、とりあえず進もっか。さーてどうなってるのかなー


主人公;……私も男に生まれたかった……(ぼそ


リオリム;それはいけません、お嬢様。お嬢様は男性でも素敵と存じますが、今のままが一番美しくていらっしゃいます


主人公;でもひとまずみんなと一緒にお風呂に入って困ることはなかったと思うな……


リオリム;……。それは、そうですね……(赤面


主人公;……ま、私が男だったら継母に転生することもなかったとは思うけど。さて、私たちも行こう、リオリム。さっさと服と平常心を取り戻して道化師ぶん殴ろう


リオリム;全力でお助けいたします












続く

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