69.apple
肩で息をする。
銀の髪の男は眼を見開いたまま、微動だにしない。標的に突きつけた得物は、ぴたりと喉元をとらえているというのに、まったく動かない。
「……っ、く」
苦悶の表情を浮かべ、それから男は自らの獲物を振り上げる。
瞬間、鮮血が舞った。
静かで、あまりにあっけない、絶命。
生温く気持ちの悪い感覚を全身に浴びる。それと同時に、ガラスにひびが入るような音が上がり、途端、男はその場に頽れた。
「っは、」
ずるずると体を引きずるようにして立ち上がり、もう片方の標的を見据える。標的は気を失っており、やはり動く様子はない。
――こ ろ す な
頭の中で警報の如く鳴り響く声、そして幾重もの悲鳴。誰のものか判別すらつかないそれらに男はただただ苦痛の表情を浮かべて歯を食いしばり、しかし、再び得物を振り上げる。
赤。
「……っぁ、」
またあの、ひびの音が上がり、男はその場に倒れ込む。
全身に容赦なく走る激痛は、しばらく終わりそうにない。
男は地面に手をついてふらふらと立ち上がった。その足取りはおぼつかないもので、今にも再び倒れ込んでしまいそうだった。
男は月を見上げ、荒い呼吸を落ち着けるように深く息を吸った。
いつまでこの身は保つだろうか。
早く、死んでしまいたい。
けれど、できない。
今はまだ、やらなければならないことがある。
彼は激痛に耐えながら背後を振り返った。
「ノアフェス」
「ここにいる」
黒い衣を纏った男――ノアフェスが、彼の前に進み出た。
「――供養を、頼む」
「わかった」
ノアフェスが短い返事で了承すると、男はその場を離れる。
すると、白い髪を結いあげた男――カーチェスが気遣わしげに男に声をかけた。
「ねぇ――こんなことを、本当に君一人で、しなければいけないの? 俺に言ってくれれば、拝命するよ……?」
「構わない」
男は血を浴びたその姿を月光に晒して告げた。
何より醜い姿だ。誰より罪深い姿だ。
あってはならない姿だ。
そんなこと、他の誰でもなく、彼自身が一番よく知っていた。
「あなた方は、捕縛してくれればそれでいい」
「でも」
「わたしが、これを望んでいる。……どうか気にしないでくれ」
男は笑った。
その彼がどれだけ傷ついているか、全員が知っている。
彼が壊れてしまいそうなことを、この場の全員が知っている。
それでも何もできない。
「すまないが、後の処理を頼む――私は、丘に行く」
「その姿で……?」
「……この姿だから、だ。後を頼む」
そういうと、彼は――ルーヴァスは、返り血を浴びたその姿で、夜闇の中に姿を消した。
「ねーぇーいつまで風呂磨くんダイ~? ねーねーネェ~☆」
「……いつまで騒げば気が済むんですかあなた」
「あ、ボクの麗しい声が胸に刺さル? アハ☆ まぁ無理もないケド☆」
私はバスタブを洗う手を一旦留め、モップを風呂の片隅に置くと、やかましいナルシストに向き直った。
「何したいんですか邪魔したいんですか?」
「マサカ☆」
「で、何をしたいんですか」
「風呂を洗いながらでもいいからサ、状況と、今キミが分かった情報を整理しようじゃナイ☆」
私はそれに首を傾げる。
何をどう整理しようというのだろうか。
そんな私の疑問なんてお見通しですよとばかりに、スジェルクは首をすくめてみせた。
「例えばキミ、妖精たちについてどんなことが分かル?」
「妖精……七人いて、居場所を失ったからここに来て……あぁ、でもルーヴァスは元からこの家にいて、彼らを受け入れて……」
血の繋がりはないが、ここにいる七人の住人は「狩人」という仕事で繋がっている。
そして彼らは全員、妖精であるがゆえに人間を忌避している。……個人によって差はあれど、人間を恐れていることに間違いはないだろう。
人間は妖精狩りと称し、妖精を無差別に狩り、思うようにもてあそぶというのだから当然と言えば当然のことだろう。
しかし彼らはもともと神によって生み出された存在で、人間を憎むようにはできていない。本能的に人間を慈しむようにできているのだという。だから私たち人間を憎悪することに強い抵抗を感じている……
「……ということ、くらいですか?」
「ほうほう、優秀優秀☆ じゃあ質問。街に行くときに妖精七人がそろいもそろって分厚いコートを着てたのはなーんでダ?☆」
分厚いコート……?
私は彼らとともに街に行った時のことを思い出した。
確かに彼らは全員、黒いコートを着て、フードまで被っていた覚えがある。
それに対して、その時の私も質問したはずだ。
その時の彼らの答えは確か……
「妖精は、寒がりだから、と」
「あぁ、ウン、そんなことを言ってたネェ☆」
スジェルクは生温い笑みを浮かべる。どうも違うようだ。つまり彼らは嘘をついていたのか。
何のために?
「そう悩むコト? キミもさっき、答えを言ってたじゃナイ☆」
「はい?」
「さっきキミは何て言ったっけ?」
私が言ったこと。
彼らは狩人で、血の繋がりがなく、自分たちを狩る人間を忌避しているものの、心から憎むことができない存在――
つまり、そのままの姿で街に行くと、
「……狩られる、から?」
「ピンポンピンポン☆ 大正解☆」
スジェルクが言うには、こういうことだった。
彼ら妖精も人間の町で買い物をしたり、あるいは情報を手に入れに行ったりはするが、大っぴらにその姿をさらして歩くことはできない。なぜなら彼らの容姿は目立ちすぎるからだ。
長く尖った耳は妖精の証。つまり耳を見られれば、問答無用で襲い掛かってくる者とているのだそうだ。
だから髪を長く伸ばし、耳を隠して、なおかつフードを被って出かけるらしい。
そして、「寒がりだ」と答えた妖精に疑問を持たなかった私。
鎌掛けだったようだが、当てが外れたのだろう。
何せ、私自身が全く妖精の知識がないから。
「耳を隠しているんですね」とか、そんな発想すら浮かばない。そもそも元の世界に妖精なんてファンタジーな存在がなかったし、仕方ないだろう。
「あの時の時間帯って、キミ、覚えてル?」
「時間帯……? 夜ってことですか?」
「そうそう、話が早いネ☆ 夜なら黒いコートは随分目立たないよネ☆」
まぁ確かにそうだ。実際、私も黒いコートと鼠のおかげで白雪姫をやり過ごせたようなものだった。
「でもあれは町から遠いから、夕方に着かなかっただけじゃ」
「そう思う?」
スジェルクはじっと私を見つめた。
「……どういうことですか?」
「早い話、あれも鎌掛けだってコト」
「……?」
「キミは人間でショ☆ 本来ならこの森では迷うはず。つまりこの家に辿り着くのはかなり難しい。でもここまでキミは辿り着いた。つまり、何らかの手段をもってして、ここで迷わないようにできているんじゃないかって考えたわけサ☆」
どうも、人間でも迷わないでこの森を歩ける方法があるらしい。その方法を私がもっているかどうか、彼らは試したということのようだ。
つまり普通に街に行けば数十分で済むものを、寄り道をして長く歩かせることで、私に「何だか遠くないですか? 道、合っていますか」と言わせようとしたと。確かに私がそう言い出したらかなり怪しいだろう。何故なら私はこの森をまともに歩けないはずであり、彼ら妖精だけが道を知っているはずなのだから。
まぁ確かに、思い返したら不自然かもしれない。
私はリオリムの導きに従って城から抜け出した後、二十分程度でこの家に着いた。
しかしあの時街に行くのにかかった時間は悠に一時間を超えていたと思う。
城から城下町がそこまで遠いとは思えないし、つまるところ、かなりの寄り道をしていたと考えるのが正しいだろう。
「……はぁ、なるほど。つまり、その試験に私は合格したってことですかね」
「そういうコト☆ 良かったねェ」
「まぁ、良かったです」
そんなところでリオリムの存在を疑われてはたまらない。
それに、その鎌掛け二つで色んな疑惑が少し薄れたのなら、私は相当幸運だったと言える。
知らぬ間に色々試されていたのかと考えると、よく突破したなぁ私と少し自分を褒めてやりたくなる。
「あ、そうだ。もう一つ聞きたいことあります」
「ん? 何かナ☆」
「スジェルクの他に精霊っていうのはこの家に住んでるんですか」
「あ、いるヨ。まぁボクより格好いい精霊はいないケド☆」
「そういうのはいいんで。いるんですね」
「そんな照れなくてモ☆ 結構いるよ、会いタイ?」
「いえ、特には……」
そこで、ふと思う。
スジェルクは自分をあの時の鼠だと名乗った。
つまり精霊は何かに化けられるのだろう。
人間でない姿なら私が気付かなくても不思議はない。
ただ、人間でないものを、この家で鼠以外に私は一度だけ見たことがある。
ユンファスに鏡の修理を頼んだ時。
その後、階段を下りようとしたところで、何かを見た。
あれは、確か。
「……蝙蝠」
私が呟くと、スジェルクはニッと微笑んだ。
そして鼠の姿に瞬時に変わると、答えを拒むようにその場を去ってしまったのだった。
はいおはこんばんちは天音です皆様いかがお過ごしですか。
怒涛の8月が終わり、やったね生き残ったねと思っていたら10月も修羅場だよとか何それ聞いてない。
とりあえず更新はしばらく滞りそうですすみません。
そして活動報告。
見て頂いた方も大勢いるのではないでしょうか。
ままてんに! まさかのファンアートが!
本当にありがとうございます。
ままてんは愛されているのだなぁと思って幸せな気持ちになりました。
皆様のおかげでままてんはあります。これからも頑張って執筆していきますよ!
まぁ更新は遅いけどね!!
はてさて、皆様のおかげでままてん云々と言ったらこのあとやることは一つしかありません。
そう、そう、前回の続きですな!
いやもう夏祭りって季節じゃねぇわとか言われそうなんですが。
はい、続きます。
前回の続き、中編になります。
では、どうぞ!
※この短編は本編と一切関係がありません。ご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
主人公;金魚すくいはここですかね
ノアフェス;そのようだな
リリツァス;綺麗な魚がいっぱいいるよー! ひちっ
???;こうだよ。こう構えて……そう、斜めに
子供;えいっ
???;上手い上手い、やればできるじゃん? ほらもう一回頑張ってみよ?
子供;えへへ、やったー! 次はあの赤いのをとる!
シルヴィス;わたくしはこれにて帰ります
主人公;えっ。いやいやいやちょっと
ノアフェス;仲が悪いからと言って逃げ帰るのは弱いもののすることだな
シルヴィス;誰が弱いものですって?
ノアフェス;お前とは言ってない
主人公;凄い屁理屈
リリツァス;ここで喧嘩はやめよう! みんな仲良く! へちちっ
子供;あああ破れたー!
ユンファス;まぁ、そういうこともあるって
子供;おにーちゃんとって!
子供;私もあの黒いちっちゃい出目金欲しい!
主人公;どこかで見たような光景
シルヴィス;なぜそこでわたくしを見るのですか
主人公;お二人とも意外と面倒見がいいんですね
シルヴィス;別に
ユンファス;ん? 誰、君たち
ノアフェス;ぜひとも、ご教授願いたい
ユンファス;なに? 金魚すくい? 興味あんのー?
ノアフェス;金魚すくいはもともと好きだが、お前は随分と上手そうだ
ユンファス;いや、そうでもないんだけどね
リリツァス;よくわかんないけど俺もやってみたい!
ユンファス;そ? じゃあみんなでやってみる? そこの可愛い女の子も
主人公;おお……こういう発言がさらっと出る辺り、全然変わってない
シルヴィス;つまりただのタラシでしょうが。タチの悪い
ユンファス;は? 誰、君。口悪いなぁ。別に君に教えたいわけじゃないからここにいなくていいよ。しっしっ
シルヴィス;誰があなたのような頭の悪そうな金髪に教わるものですか
主人公;ん? さっき容姿を野次るのはどうのこうのと
シルヴィス;黙っていなさい
主人公;はい
ノアフェス;どこにいようが頭がおかしくなっていようが仲が悪いものは仲が悪いのだな
ユンファス;いや別に僕は頭おかしくなってないけど。そこの紺色が頭おかしいだけでしょ。初っ端から喧嘩吹っかけてくるとか
シルヴィス;はあ?
ノアフェス;何でもいいがとりあえず金魚すくいをやりたい。教えてくれ
ユンファス;このポイでその水槽の中の金魚をすくいとって桶に入れるってだけだよ
リリツァス;へぇ~。こんな遊びがあるんだひちっ
ノアフェス;いや、やり方は知っている。コツを教えてくれ
ユンファス;コツ~? んー、斜めに掬い上げることとか? あと金魚の尾びれはポイの外に外した方がいいと思うよ
ノアフェス;よしやるぞ
リリツァス;俺も俺も!
シルヴィス;くだらない……
ユンファス;とかなんとか言ってできそうにないからやらないだけでしょ~。格好悪ー
シルヴィス;貴方わたくしを煽っているんですか? いい度胸ですね
ユンファス;できるならやれば?
シルヴィス;チッ、仕方ありませんね。その低俗な煽りにあえて乗って差し上げましょう。感謝なさい
主人公;ここで喧嘩する必要性……
???;そうそう、みんな仲良くネ☆
主人公;うぉえええええええええええ!?
シルヴィス;凄い悲鳴ですね。色気の欠片もない
主人公;す、スジェルク!? 何で生きてるんですか!?
スジェルク;エッ
主人公;間違えた、なんでここにいるんですか
スジェルク;アハ☆ ボクみたいなイケメン男子って生きてるだけで罪だよねわかるワカル☆
シルヴィス;めでたそうな男ですね。視界的に邪魔ですからどっか行ってください
スジェルク;無茶言うなァ。ボクはこの店の店主ナノニ☆
主人公;うわ最悪にも程がある。なんでこれまで存在してるの……っていうか店主とか何の拷問
スジェルク;え、高嶺の花は見るのもつらい拷問ダッテ? そんな悲観しないノ☆ ボクほどじゃなくてもキミも結構ビューティフル! だからサ☆
主人公;おお、うざいところも健在
スジェルク;さ、可愛いお嬢さんはタダでどーゾ☆ 野郎は1回1万円で
ユンファス;高っ! えっまじでそんな高いの
主人公;知らずにやってたのかよ……何回やったんですか……
ユンファス;いや僕は子供たちに教えてただけなんだけど
主人公;いや子供は一回いくらなんですか
スジェルク;子供は百円ー☆
ノアフェス;実に百倍だな
シルヴィス;ぼったくりにわざわざ好き好んで引っかかる理由がありませんね。別のところを当りましょう。そこの金髪は放っておきなさい。行きますよ
ユンファス;はぁ~? なーに言ってんの君。勝負から逃げ出す気?
シルヴィス;逃げ出す逃げ出さない以前の問題にこんなところで勝負をするだけ金が無駄です
スジェルク;あ、じゃあこういうのはどうデスカ☆ 5万円で君たち五人が一分間、各々一本のポイで金魚を釣りマス☆ 合計で百匹取れたら五百円だけ支払いにして残りは返しマス☆
ユンファス;いや、5万円っておかしいでしょ~。っていうかなんだかんだでそこの女の子も1万円扱いじゃん
主人公;……ん? そういえばおあつらえ向きに5万円もらった気が(5万円を取り出し
スジェルク;はい、毎度~☆ じゃあポイどうゾ☆
主人公;えっいややるとはまだ私
スジェルク;苦情は受け付けません残念残念☆ 諦めてネ☆ はい、ポイ
ユンファス;女の子のお金で金魚すくいやるのも、何かねぇ……
主人公;いや、実質私のお金ではないんですが……まぁ、気にしなくても、良い気がします
ノアフェス;ふむ。なら、遠慮なくやらせてもらう
リリツァス;ノアフェスは遠慮がなさすぎない!? ひちっ
ノアフェス;この礼はまたいずれ、元の世界に戻ってからだ
ユンファス;元の……? いったい何の
スジェルク;出目金とか特殊な金魚は五匹扱いにするヨ~☆ はい、よーい……スタート!
主人公;とりあえずあれだ、一番小さい奴狙いましょう
ユンファス;了解~。よっと
シルヴィス;仕方がありませんね。っ、まず一匹……
リリツァス;あああ破けた!!
スジェルク;早速脱落者一人~☆
ノアフェス;俺はあの出目金を狙う
主人公;嘘ですよねちょっとここで……
ノアフェス;取ったぞ
主人公;えええええええまさかの取った!
シルヴィス;叫んでいないで貴女も早くとりなさい
主人公;私は地道に地味なのとっていますから! ……っていうかそういえば百匹とっても良いこととかない気が
ノアフェス;次はあのランチュウだ……
主人公;その派手なの取りに行く思考どうにかしましょう!?
ノアフェス;取ったぞ
主人公;どうなってんだこのひと!!
ユンファス;これで二十七!
シルヴィス;っ、二十七匹など甘いですね!
ユンファス;あーそうまぁ僕の方が勝つから?
シルヴィス;負け犬はよく吠える!
主人公;っていうかあと何秒ですか!!
スジェルク;あと二十秒~☆
リリツァス;姫頑張って! ひちっ
ユンファス;三十一! ……ひめ……? ん?
シルヴィス;何を余所見しているのです、破りますよ
ユンファス;うわ、何怖いこと言ってんのやめてよ。はいはい三十三!
シルヴィス;三十四!!
ノアフェス;次はあれだ。あの一番デカい奴だ……あれをとれば俺は……
主人公;あああダメそれ破れる奴、死亡フラグ!!
ノアフェス;俺こそが金魚すくいの王者だ
主人公;意味わかんないしってあああああああああ
ノアフェス;……。破れた
主人公;だから派手思考はやめろとあれほど!
リリツァス;ノアフェス、堅実に行かないとダメだよ! ひちっ
ノアフェス;初っ端から破いたお前に言われたくないぞ
リリツァス;それを言わないでよぉおおおおおおおおおおおお
スジェルク;はい、五、四……
ユンファス;三十八!
シルヴィス;っち、三十八、三十九!
ユンファス;四十っ
スジェルク;二、一、はい、終了~☆ 手を止めてネ~。ユンファス……四十、シルヴィスが……三十九、お嬢さんが十、ノアフェスが出目金で五匹換算、ランチュウで五匹換算、計十匹換算……
ユンファス;ふふん、シルヴィスもまだまだだね
シルヴィス;……チッ
主人公;いやそんなことより数、
ノアフェス;む?
リリツァス;あ
スジェルク;全員で九十九匹で、ギリギリアウト~☆
ノアフェス;なんと……屈辱的な……!
シルヴィス;待ちなさい。リリツァス貴方、一匹くらいとったでしょう?
リリツァス;え、あー、えー。ひちっ
シルヴィス;まさか一匹も
ノアフェス;金魚につく間もなく破いたからな
リリツァス;うわぁあああああああ姫ごめんなさいー!!
主人公;いやまぁ私のお金じゃないから別に私の腹は痛まないのでいいですよ。謝らなくても
ユンファス;……あれ、もしかして……君、姫? え、あれ、どういうことー?
シルヴィス;馬鹿もようやく気づきましたか。もうこれでここに用はありませんね。他の妖精を探しに行きましょう
ユンファス;ちょっと、さらっと愚弄するのやめてくれるー? 誰が馬鹿だっていうのさ?
シルヴィス;貴方の想像通りですよ金髪。ほら、とにかく行きますよ
リリツァス;いいの!? 五万円も姫に使わせちゃったのに!! ひちっ
主人公;いえだから特に私の腹は痛みませんって
スジェルク;仕方ないな、五百円は返してあげようカ。やー、優しいよねぇボクっテ☆
主人公;こういう調子に乗る輩がいるからもう行きましょう
スジェルク;あ、はい五百円
ノアフェス;ぼったくりにもほどがあるな
スジェルク;いいじゃんどうせそんなにお祭りでお金なんて使わないんダシ☆
主人公;心底ぼったくり野郎に言われたくないです
ノアフェス;……ん? あの綿菓子屋のところにいるのは……
主人公;え?
???;この袋いっぱい……ください
店主;いや、あのな?
主人公;あれ、エルシャスじゃないですか。綿菓子好きなんですかね?
リリツァス;違う気がする……ひちっ
ユンファス;綿菓子が好きっていうかむしろあれじゃないの。綿菓子を布に詰めて枕にして寝る魂胆
主人公;んなわけ、
エルシャス;ふわふわ……寝心地良さそう
主人公;嘘ぉおおおおおおあれを枕代わりにした途端頭は砂糖でべったべたになりますけどぉおおおお!?
シルヴィス;馬鹿ですか、彼は! あれは食べ物ですよ!?
主人公;と、とにかく止めに行きましょう! エルシャス!! ちょっと待ってください!!
エルシャス;……? だれ?
シルヴィス;だれ? じゃありませんよ馬鹿ですかあなた! それは綿ではありません!
エルシャス;ふわふわ……
ノアフェス;飴だぞ。端的に言うのなら、砂糖だ。ただの
ユンファス;その上に寝た途端、悲惨なことになっちゃうよー?
リリツァス;買うのなら寝ないで食べよう! ひちっ! 俺も食べてみたい! ひちっ
シルヴィス;何をちゃっかり主張しているんですか。貴方お金あるんですか
リリツァス;……す、少しなら!
主人公;いや多分これ頑張れば元の世界でもできますよ
リリツァス;えっそうなの!? ひちっ。こんなふわふわの出来るの!?
主人公;ええまぁ。死ぬほど頑張れば
リリツァス;死ぬほど!?
ノアフェス;まぁ、要は砂糖だしな
エルシャス;……?
店主;とりあえず、あんたの寝たいっていうのはこう……あんまりお勧めできねぇよ。他を当たんな
エルシャス;……(しょぼん
店主;あああまたその顔! 罪悪感に煽られるんだよ! あんたら知り合いならなんとかしてくれ!
主人公;あー、はい。エルシャス、あのですね
エルシャス;……?
主人公;枕なら、後で作って差し上げますし、あとまぁ誰かが死ぬほど頑張れば綿飴も作れないことはないです。だから正気に戻って私たちと元の世界に戻りましょう
エルシャス;……。……だれ?
ユンファス;えっ、もしかして全然思い出せてない?
エルシャス;……?
ノアフェス;そのようだな
リリツァス;俺だよ! ひちっ、俺俺!
ノアフェス;オレオレ詐欺再来
シルヴィス;待ちなさい、誰がオレオレ詐欺ですって
ノアフェス;特に何も言ってない
シルヴィス;言いましたよ確実に、えぇ、オレオレ詐欺とね
リリツァス;シルヴィス怖いよ目が怖いよひちちっ
ユンファス;うわ、喧嘩吹っかける上にオレオレ詐欺とか……何それ……どうしようもない男じゃん……うわー
ノアフェス;そうなのだ。そして実はこの男、過去に更にすごいことをしていてな
シルヴィス;事実無根な根も葉もないことをそこら中にまことしやかに吐き出すのはやめて頂けますかそこの眼帯
主人公;……容姿について云々、
シルヴィス;黙りなさい
主人公;はい
シルヴィス;いいですか、エルシャス。貴方の理解不能なその異常なまでの睡眠欲求についてはこの際置いておくことにして、我々の顔に何か見覚えくらいあるでしょう
エルシャス;……? ない
シルヴィス;はぁああああああ?
ノアフェス;エルシャス、思い出せ。俺たちは死闘を潜り抜けてきた仲間じゃないか
ユンファス;頑張って両手を広げて劇っぽい台詞吐くのはいいんだけどノアフェス、その無表情だと逆に怖いからね?
ノアフェス;だめか……そうか
主人公;真面目になってくださいよ!
リリツァス;エルシャス、俺だよ! リリツァス! ひちっ、わかるでしょ!?
エルシャス;わかんない
リリツァス;うわぁあああああんひちっエルシャスのバカぁあああああひちっ
シルヴィス;もういいです、次に行きましょう
主人公;いや駄目に決まってるじゃないですか!!
ユンファス;んー……あ
主人公;どうかしました、ユンファス?
ユンファス;いや、大したことじゃあないんだけどね? エルシャス、ちょっとさ、こっちに来てみてよ(手招き
エルシャス;……?(手招かれた方向であるシルヴィスの方へと寄っていく
シルヴィス;な、何です?
ユンファス;で、エルシャス、シルヴィスの髪を掴んで引っ張ってみて
シルヴィス;はっ?
エルシャス;……(ぎゅっと掴んで思い切り引っ張る
シルヴィス;いっ!! 何するんですか貴方!!
エルシャス;……。むぃー? ……シルヴィス?
主人公;いやどんな思い出し方なんだ
エルシャス;姫?
主人公;あ、はい。私ですが
エルシャス;後で……綿菓子
主人公;……。あ、はい(リリツァスあたりに手伝ってもらおう)
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続く?




