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道化師side.1

「あら。上手いことやったわね。残念」


 漆黒の衣に身を包んだ、血のように赤い瞳を持つ女がさして残念でもなさそうにそう言った。

 この不吉な出で立ちの女こそが、死神姫である。


「全然悔しくなさそうなのがつまんないなー。そっちは順調なのかい?」


 女の言葉を拾ったのは男――そう、例の紅い道化師だった。

 道化師からよこされた質問に、死神姫はやはりさしたる感慨も見せずに口を開いた。


「あら、全くよ。あの子、完璧に壊れてるもの」

「うわぁ、酷い言い草」

「だって明らかに当初の目的を見失ってるわよ。ここ数年完全に道が逸れてるじゃない」

「まぁねぇ。ほら、人間って馬鹿だから」

「否定しないわ」

「だからこそ面白いんだけどねぇ」


 ぱく、と道化師がマカロンを口に放り込んだ途端、死神姫がキッと彼をにらむ。


「ちょっと。そのマカロン、私のよ」

「えー。とったもの勝ちでしょ」

「もう。最後の黒は私が食べるって決めてたのに」

「君ねぇ。もう少し明るい色も楽しんでよ。あ、血の色以外で」

「赤だって明るいでしょう」

「黒と赤しか楽しまないってどうなの。あのさ。この色、お菓子の色じゃないよ。作ってて楽しくない」

「頑張りなさいな」

「っていうか君も自分でお菓子作ってみたら。楽しいよ」

「だめ。私がやるといつも消し炭にしちゃうんだもの」

「あー忘れてた」


 道化師は呆れたように首を振ると、「あの子もああなるのかなぁ」と零した。


「流石にああはならないでしょう」

「だってさー。同じ“人間”なんだよ?」

「同じ人間でも辿る道や他との関わりが異なれば、その先は大きく異なるわ」

「そりゃそうだけど」

「彼女は嫌がってるみたいだけど、私は今回のアナタの選択は彼女にとってとても良かったと思うけど」

「そっちの子には?」

「最悪、かしらね?」

「あっは。ま、人生そうそう甘くないよねー」

「そうね。……まぁ、私は良かれと思って彼女を選んであげたんだけど」


 人間は愚かだから。


 二人の声が重なる。


 そして同時に、その唇が三日月を刻む。


「夢も罪も終わりは儚いわ」

「延々と後を引くけれどね」

「――彼女たちの幕引きは」





 果たして、どちらが嗤うのか。

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