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27.apple

「……道化師と、死神姫?」

『はい』


 道化師……というと、ピエロという認識でいいのだろうか?


 ピエロ、という単語に赤い髪をした男が脳裏に浮かんだ。


「だれの、こと?」

『お嬢様をここに導いたものと、その対戦者の名称です』


 私を導いた……というと、本当にあの赤髪の男か。その対戦者……とは一体誰のことだろう。


『お嬢様がここにいる理由。……白雪姫がこの世界にいる理由。それは、彼らが戦っているからです』

「戦う? 戦争をしているの?」

『いいえ。彼らにとっては……チェスゲームのようなもの、とでも言えば良いのでしょうか』


 ――チェスゲーム……?


「どういうこと……?」

『つまり……彼らにとってあなたは、……チェスの駒のようなものだということです』


 リオリムはぽつぽつと話し出した。


 この世界は、乙女ゲームの世界。私はつまり、この世界での悪役と肉体を残したまま魂を交換したことになるそうだ。

 それは白雪姫も同じ。この世界における主人公と、魂を交換した。


 では、そもそもなぜそんなことをしたのだろうか?


 その理由が、つまり。


 私をここに導いたあの赤髪の男と、その対戦者――白雪姫をこの世界に導いた者との「お遊び」だった、らしい。


 私が生き延びれば赤髪の男の勝ち。逆に私が死に、白雪姫がこの世界で望み通り恋愛を楽しんだのなら、対戦者の勝ち。


「つまり私は……彼らにとってその程度の価値しかない。別にあの赤髪の男が負けて私が死んだとしても、彼らにとっては構わないっていうこと?」

『……仰る、とおりでございます』


 リオリムは言いにくそうに、そういう。


『……しかし、当然、負けるとしか思えない勝負を道化師が受けるとは思えません。それ故に、今のあなたが――つまり、七人の過去も、この世界のこともまったく知らないあなたが勝つ可能性はある。私は、そう思っています』


 リオリムの言葉に、私は告げる言葉を失った。


 ……そんなもののために、私はここにいるのか。


『……お嬢様……』


 うつむき、黙り込んだ私にリオリムが小さく呼びかけてきた。しかし今の私にそれに答えられるだけの余裕など微塵もなかった。


「………………しい」

『……お嬢様?』


 私の声が聞き取れなかったのだろう。リオリムは控えめに問い返してきた。


 それに答えるつもりでもなかったが、私は感情のままにベッドから立ち上がり、言葉を吐き出した。


「……っ悔しいーッッ!! なに、何なの!? ふざけてるの!? っていうか人のことを何だと思ってるわけ!? 馬鹿にするのも大概にしてよ!! 私はあともう少しで受験するところだったのに無理やりそれを覆されてこんな訳の判らないところにふっとばされたの!! その理由が「お遊び」!? 信じられない!!」


 突然叫び始めた私にリオリムが驚いた様子で瞬きを繰り返していたが、それに構う余裕もない。


『お、お嬢様』

「もうこうなったら自棄(やけ)になってやる! こんなところで死んでたまるものかっ! 何が何でも生き延びてあのふざけた男の顔面に一発……ううん、百発でも拳を叩き込んでやるんだから!! リオリム! 改めてよろしく!! 私があの男の顔面を殴るまで見届けてね!!」


 私が一気にそう告げると、リオリムはしばし唖然とした表情で私を見ていたが、しかしくす、と破顔して、


『かしこまりました、お嬢様』


 と、頭を下げたのだった。

 




 その時の私は、考えもしなかった。


「……どう思うよ、あれ」

「警戒するまでもないんじゃナイ? あんまり頭は良さそうじゃないよネ☆」

「わたくしは主に従うのみでございます」

「律儀だよねぇ☆ キミはもう少し肩の力を抜いたラ?」

「貴殿はやや肩の力を抜きすぎているのではなかろうか?」



 扉の外、部屋の前で、誰かが盗み聞きをしているなどということを――

さて。


企画はまだまだ続きます。



というわけでゲストをお呼びいたしました。


ゲストさん、どうぞ!



リリツァス;こんにちは! ひくちっ



はい、こんにちは。


今回の企画をご存知ですか?



リリツァス;うん知ってるよひちっ! 半分殺されかけるんだって精神的にひちっ! カーチェスが言ってた



彼が!? そ、そこまで虐め倒したつもりはありませんが……


ま、まぁいいです。


というか話しにくいのでくしゃみをしないで済むようにしますね。



リリツァス;えっ一生!?



いえ、今だけです。



リリツァス;……。あの、ひちっ、できれば一生、



それでは質問を始めていきましょう(指をパチンと鳴らし



リリツァス;あ、くしゃみが止まった!?



では質問にお答えください。

第1の質問。


趣味はなんですか?



リリツァス;縫い物をするのは好きです!



裁縫ですか。いい趣味ですね。具体的にはどんなものを?



リリツァス;具体的にはー……あ、エルシャスがよくぬいぐるみをダメにするから縫ってあげてるよ



それ趣味じゃないですよね?



リリツァス;うーん、じゃあねぇ……あ、よく絵を描きます!



絵ですか? 具体的にはどのような?



リリツァス;風景画が多いかなぁ? あんまり上手くないけど、よく描くんだー



上手くないとか自分で言っちゃうんですね。



リリツァス;あんまり他の人に見せないから他の人からの評価はわからないんだけど、俺は上手くないと思ってるよ



なるほど。



では第2の質問。


好きな食べ物、嫌いな食べ物は?



リリツァス;好きな食べ物はカレーです!



うわぁ代表的な子供の好物。



リリツァス;え? 何か言った?



いいえなんにも。



リリツァス;嫌いなものはニンジンとピーマン……



はいわかりました結構です。大体子供が好きなものと嫌いなものが好きなもの、嫌いなものだと思えばいいんですね。



リリツァス;お、俺は立派な大人だからね!?



はは、大人ですね。はいわかりました。



リリツァス;ほんとにわかってくれてる!? あのね、嫌いだけど俺は子供じゃないからちゃんとニンジンもピーマンも食べるんだから!



当たり前です。


まぁいいです、どうでも。



リリツァス;酷い!?



第3の質問。


今欲しいものは?



リリツァス;欲しいものかぁ。えっとー……



姫の下着とか言わないでくださいね。



リリツァス;!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?



なんか陸揚げされた魚みたいになってますけど大丈夫ですか? 図星ですか?



リリツァス;ちっがいます!! あのね、それユンファスの言葉を間に受けて言ってるんだと思うけど、俺、そういうことしないからね!?



はいはい、過剰反応ありがとうございました。



リリツァス;信じてもらえてない気がする!?



いいですから欲しいものを答えてください。さっさと答えないと姫の下着で決定しますよ。



リリツァス;やめてよ!? えっとえっと、ええっと



3、2、1……



リリツァス;あ、靴下!!!!!!!!!!



………………。


はい?



リリツァス;去年靴下が破けちゃったから、買っておかなきゃって



破けた靴下履いてるんですか?



リリツァス;あ、履く靴下じゃないよ



すみません普通の人間が理解できる範囲で説明をお願いします。



リリツァス;なんか俺がおかしなこと言ってる人になってる!! えっとね、サンタさんにプレゼント入れてもらう靴下のこと!



……………。


そうですか。



リリツァス;なんか反応薄くない!?



なんか色々子供っぽいので話す気が失せてきて、



リリツァス;聞かれたから答えたのに!!



第4の質問です。


宝物はなに?



リリツァス;たからもの?



そんな、初めて聞く単語のように聞き返さないでください。

もしかしてその単語自体知らないとか、



リリツァス;知ってる! 知ってるから!! 俺大人だからね!?



自分のことを大人だという人間ほど大体子供なんです。



リリツァス;うっ。でも俺ピーマンもニンジンもちゃんと食べるし……



その主張は大人かどうかという議題に対して無効かと。というかむしろ子供の発言です。



リリツァス;俺は大人だよ!?



はいはいわかりました。で、結局宝物は?



リリツァス;無視しないでよー! たからもの、宝物か……ないかも



ない?



リリツァス;うん。特には。強いて言うなら今見る景色、見てきた景色、かな。思い出っていうか



……らしくないですね。



リリツァス;え、何て言うと思ってたの?



いえここは子供っぽく、「街のレストランで食べたお子様ランチの旗」とか言うのかと



リリツァス;お子様ランチの旗!? え、た、確かに集めてたことあったけど



何やってるんですかあなた。



リリツァス;そんな心から蔑むような視線を向けなくても!! もうやってないよ!!



まだやってたら引きます。というかあなたを別の妖精にすり替えて姫から遠ざける勢いです。



リリツァス;酷い!!



わかりました、わかりました。いちいちオーバーリアクションありがとうございます。


では最後の質問にします。


第5の質問。


もし一つだけ願いが叶うなら?



リリツァス;サンタさんに会いたい!!



ありがとうございました。



リリツァス;えっ!? 何その薄い反応!!



いえ、もうどこまでも子供だなと。クリスマスはもう過ぎてますよ。っていうかサンタ信じてるんですね。



リリツァス;え、だって毎年プレゼントくれるもん



はぁ?



リリツァス;えっなにかおかしなこと言った!?



いえ、待ってください。あなた、毎年あの家でプレゼントもらってるんですか?



リリツァス;うん! でも今年は靴下を用意するのを忘れちゃったからもらえなかったんだ……



誰からもらってるんですか? ルーヴァスですか? それとも意外性を突いてシルヴィスですか? 或いは寝ぼけてエルシャスがくれるんですか?



リリツァス;え!? いや、だからサンタさんがくれるんだよ? 毎年



サンタなんかいませんよ



リリツァス;え!? ううん、いるよ!? だって毎年プレゼントくれるんだもん!



はぁ……まぁいいです。(指を再び鳴らし



リリツァス;? ひちっ、はちゅっ、くしゅんっ



もう質問おしまいですので。どうぞお帰りください。



リリツァス;えっ、ひちっ、くしゃみがっ



いえ、もうくしゃみをとめてあげる理由が消えたので。



リリツァス;ひどいひちっ



酷くていいです。



リリツァス;うわぁああああああんいじわるー!! ひちっはちっ(走り去っていく










……。


にしても、あの家にリリツァスにプレゼントくれる人がいるわけですか。


誰だろ……。



まぁいいです。


ではでは、以上で本日のコーナーはおしまいです。


いかがでしたか?




次回のコーナーをお楽しみに!

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