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98.apple

「もっと姿勢を正して、猫背だめー」


 一階のダイニングテーブルを部屋の隅に移動して、私はユンファスに監視…もとい監修されながら、所謂お姫様らしい所作としてまず、歩く姿を直されることになった。


 胸を張れ。下を見ない。歩幅は小さく。緩やかに、優雅に。小さく微笑んで。


 ……まあ、女王というか、普通に素敵な大人の女性なら出来ていそうなことだろう。

 ただ問題は、私が素敵な大人の女性ではないことであって。


「速い」

「うぅ」

「笑顔」

「う……く……」

「ひきつってる」

「…っ、っ…」

「あ、裾踏んだ」

「おぁっとぉ!?」


 冷静に分析するユンファスの声に気付いた時は遅い。

 ぐらりと視界が揺らぎ、床が迫る、と思った瞬間。


「……っと。大丈夫かお前」


 間一髪で私を支えたのは、意外にもノアフェス。彼はいくつかユンファスからのテストをされてさらりと受かっていたので、それから後はずっと、緑茶を飲みながら私をぼんやりと見ていた。失礼だけれども、ノアフェスが作法のテストを難なくクリアしたのは、私にとっては誤算である。全員落ちこぼれだったら二人も仲間がいると思えたのに。

 ちなみに頼みの綱の仲間である、エルシャスは何故かいない。どこ行ったんだろう。私の次に作法を習わないといけないひとだろうに。おかげで私は一人で醜態をさらす羽目になっているわけだが。くそぅ。


「……ありがとうございます……」


 いつの間に湯飲みを置いたのだろう、と思ってテーブルを見れば、テーブルには飲み干されたのであろう湯飲みが既に置いてあった。


「……お前、生きてるか?」

「気持ちはわりと普通に死んでます」

「……ふむ。これが終わったら後で一緒に甘味でも食うか。いいものが手に入ったのでな」


 ノアフェスはそう言うと、ぽんぽんと私の背中を叩いて立たせた。


 ……ついこの間天井に私の頭を叩きつけた人とは思えない紳士さ。


「頂戴します」

「うむ」


 するとノアフェスはユンファスを見て、


「あとで休憩させてくれ。こいつが保たん」

「えー。ちょっと面白かったんだけどなぁ」


 鬼畜か?


「まあいいよ。いいものとやら、僕にもちょっと頂戴」

「構わん。ちょっとと言わず沢山食え」

「あーいや、甘いものは別にそこまで好きなわけじゃないからいいよ」

「……人生の半分は灰色だな」

「何てこと言うのさ。別に食べられない訳じゃないよ」


 ユンファスは、さて、と私を見るとニッと笑った。


「顔。死んでるから、休もっかー」

「……ありがとうございます……」


 顔が死んでいると言う言葉には憤慨したい、と一瞬思ったが、ここまでスパルタ教育をされれば、そりゃあもう顔は全力で死んでいるだろう。全力で死んでるって日本語おかしいけど。


「姫、座れ。今水羊羹を持ってくる」

「あれ、今日は袖に入れてないんだ?」

「冷やしておいた方が上手いからな。氷水に入れてある」

「へぇ。大変だねぇ、ノアフェスの国のお菓子」

「そうか? こっちの国の方が七面倒だと思うが」

「こらこら、軽くディスらない」

「シルヴィスが作っているのを見ると、変なことをしているなと思うことがよくある」

「ひっど。ま、シルヴィスは変だからいいけど」


 酷いのはあなたです、ユンファス。


 ノアフェスが台所へ行ってしまうと、椅子にへたり込むように座った私の顔を、ユンファスがにゅっと覗き込んだ。テーブルに両肘をついて、眼を細め、感情の読めない笑顔で私を見つめる彼は、作り物のような美しさと、──不気味さを持っている。


「うわ、何ですか」


 思わず声をあげた私に、彼はニッと笑う。


「うわって酷くない? いやあ、酷い顔しているなあと思って」

「ユンファスの方が言っていることは酷いと思うんですけど。私、仮にも女です」

「はは、だってさあ。……君、これじゃあまるで、平民の女の子だよ? 少し忘れているだけかと思ったのに、まるではじめから作法なんて知らないみたいだ。それも、記憶喪失故、ってことなのかなぁ」


 ……そんなの。


 だって、仕方がないじゃないか。

 私は元々、貴族でもなんでもない庶民の、中流家庭の娘だ。


 そんな、王様に会うために最低限必要な作法なんて、学ぶ機会もない。


 だけど、そんなことを言えるはずもなく。


「……」


 私が二の句を告げずにいると、ユンファスは片眉を吊り上げて、


「ま、正直僕は、君が平民になっちゃえばいいって思うけどねぇ」


 と、言ってのけた。


「……何でですか?」


 私が問うと、彼はこてんと首をかしげ、黄緑の瞳で私をとらえた。


「だって、面倒じゃない? 女王なんて。少し消えただけで国中で騒がれて、国際問題にまで発展するかもしれないなんてさあ。どこまでがんじがらめになんないといけないわけ。あとね。君、忘れているかもしれないけど、僕たち妖精だからね」

「……それは、わかっていますけど」


 突然、何だろう。そう思ったのも束の間。ユンファスは、形のよい唇を開いて静かに言った。


「本当にわかってる? この意味。妖精と人間の女王が一緒にいるってね、変だよ? しかも、こんな風に平然と対等みたいに会話してさ。人間にとって妖精って言うのは体のいい奴隷か、それ以下。金持ちのオモチャみたいなものなんだよ」


 淡々と妖精を貶める彼に、私は顔をしかめた。


「……それは言い過ぎなんじゃ」

「言い過ぎだと思う? これだけ当たり前に殺されてきたのに」


 ユンファスの口調は、存外に穏やかだった。


 敵意を孕むでもなく、悲観するでもなく、ただ幼子に言って聞かせるような調子で、私に語る。


 以前、私に冷淡な視線を向けたのとは違う。諭すような、教えるような、そんな、声色。


 それは、柔らかく、しかし確かに私に現実を突きつける。


 言い過ぎでは、ないのだと。


 これは、人間が妖精に対してとってきた態度から子供でもわかる現実なんだろう。


「君がね。良い子なんだって言うのは、まあわかってきたつもり。正直バカなのかなーって思うことはあるけど」

「……酷いですね」

「でも、そういうバカみたいにまっすぐな子だから、今回のことも協力してあげるんだよ」

「……」

「でも君はいつか、帰るんだ。帰るんだよ。ここから、君が本来いるべき場所にね。女王は、僕たちと一緒にいるべきじゃないし、……それに、君は僕たちをきちんとわかってない」

「わかって、ない……」

「わかる必要もない。そしてね。君は国民から愛されてるんだから、きっと家族からも愛されてきたんだから、愛される場所に戻った方が幸せなんだよ」


 私は、ユンファスの優しく穏やかな深い声音に、しばらく声が出なかった。


 彼の話に、何を感じたのかと言われれば、それはどうにも筆舌しがたいものだった。


 ただ、彼が今までとは異なり、純粋に案じてくれている。それは馬鹿な私でもわからないはずがなくて、そして──だからこそここを離れるべきと言うのは、想像以上に胸を抉った。


 私の居場所は、やはりここではないと、言われた。

 私はいつか、ここからいなくならなければいけないのだ。

 それは勿論、わかっていたはずなのに。


 改めて突きつけられるその事実に、声が出せない。


 だって、ここを出たら。

 この家から出たら、私はどうしたらいいんだろう。


 元々女王なんかじゃない私には、何ができるんだろう。


 居場所なんて、あるんだろうか。


 ああ、でもここにいられないのは、当然のことだ。


 これは、期限付きなんだ。


 白雪姫が、私の脅威である間だけ。


 だから、みんなと居られるこの時間にも、必ずタイムリミットは来る。


 気付けば、私はうつむいていた。


 ──それでも、私は……


「水羊羹、持ってきたぞ。ついでにエルシャスが井戸で寝ていたから連れてき、」

「そんなの、誰が決めたんですか。誰が決めるんですか」


 ようやく絞り出した声は、思っていたよりも低い声だった。


「ここからいなくなるべきだって、前から言われてきましたから、そこに反論するつもりはないです。する資格もないですから。でも。私の幸せは、私が決めます」

「……」


 顔を上げてユンファスを見れば、私から離れようとしていた彼は──無表情だった。


「私は、皆さんといて、皆さんと過ごすこの時間が。たとえ種族が違っても、私なんかを信じようとしてくれる皆さんといられる今が、間違いなく幸せです。それを否定なんかさせない」


 睨み付けるようにしてユンファスにそういうと、彼は緩やかにひとつ、まばたきをして私を見下ろしていた。


「……。ばかだよ。君」

「……馬鹿でもいいです」


 何で自分が、とも思ったし、死にたくない、こんな世界は嫌だとも思った。今でも、正直その気持ちはある。

 それでも、私は今、このひとたちのおかげで、確かに幸せなんだから。


 私が言い切った時、つんつんと袖を引っ張られる。


「……ひめ」

「エルシャス?」


 いつの間に来ていたのだろう、とエルシャスを見ると、彼は。


 微笑んだ。今まであまり笑わないでいた彼がにこりと微笑んで、そして、


「ぼくも、しあわせ。姫といられるの、しあわせ」


 そう言って、ぎゅっと私の右腕を抱き締める。


「……。何だ? 俺がいない間に何の喧嘩をしている? 水羊羹は平等だぞ」

「あ、そんなにいらないかな。僕少なめで」

「正気なのかお前……」

「さっきも言ったでしょ、僕別に甘いものが好きなわけじゃないんだって。あ、ちょっとポットの水無くなってるから汲んでくる」


 ユンファスはそう言って、ちゃぷんと音をたててポットを持ち上げた。

 そして、ぽん、と私の頭を一つ叩き、その場を去っていく。


「……」


 私はその後ろ姿を目で追いながら、ぼんやりと彼が叩いた頭をなぞるように、自分の頭に触れた。


「ひめー」

「……え、あ、はい。何でしょう」

「お菓子、……いっしょにたべよ?」


 エルシャスはそういうと、私の隣の椅子に座ってぷらぷらと足を振る。そしてノアフェスの長い袖を引っ張り、


「……ノアフェス、はやくー」


 と水羊羹を催促した。


「うむ……」


 ノアフェスは若干モヤモヤした様子ではいたものの、考えても仕方ないと思ったのか、水羊羹を四等分した。


「やはり等しくあるべきだな、うむ」


 満足げに頷くと、小皿に乗せて水羊羹を渡してくれる。それに礼を言って水羊羹を食べていると、唐突にユンファスの分の水羊羹がひょいと誰かに取られる。


「あ、ユンファ……」

「……ざらざらしていますね。奇妙な菓子です」

「うわっ、シルヴィス!?」

「うわ、とはなんですか、うわ、とは?」


 立ったまま冷ややかにこちらを見落としているのはユンファスではなくシルヴィスだった。


 …え、いいの? それ、ユンファスの分の水羊羹だったんですけど。

「何だ? お前も護衛に参加することになったのか?」

「まさか。わたくしはルーヴァスに却下されていますよ。念のため休んでおけと」

「……ふむ。鴉の襲撃の傷か。どうなった」

「痕はありませんよ。別段、わたくしは護衛でも構いませんが。何しろ姫を護衛するのがこの面子では、道中事故が起こりそうですし」

「……。む、何故だ?」

「貴方は抜けているしエルシャスは寝ていそうだし、金髪に至ってはろくろく働きもしないうちにぶっ壊れそうだからですが?」

「……ふーむ」

「いや、真面目に考えるところなんです? 今のどう考えても悪口だと思うんですけど」

「違いますよ、単なる事実です」

「事実……、あの、最後は悪意以外感じられないんですけど……」

「……」


 シルヴィスは私の発言に、ずいっとこちらへ顔を寄せてきた。


「危機感のないひとだ」

「うわ、何ですか突然」

「貴女を思って忠告しているんですよ。──道中賊に襲われたら、真っ先にノアフェスかラクエス…最悪、ギンカを頼りなさい。それ以外はあてにできない」

「……え」


 唐突に耳元で囁かれたのは、警告だった。


 驚くほど、当然のように告げられた、警告。


「……何で……」

「さて、わたくしは金髪が顔を見せる前に部屋へ戻ります。仕事がありますので」


 そう言うと、シルヴィスは何事もなかったかのように顔を離し、辺りを見回した。ノアフェスは無表情に──いや、本当に微妙な変化で言えば、お前だけ怠けて不公平だぞ、とばかりにやや不満そうではあった──シルヴィスに向かって、


「お前も付き合え」

「嫌ですよ、面倒くさい。付き合う道理も義理もありません」


 すげなく返し、シルヴィスは二階へと戻っていってしまう。


「……む」


 ノアフェスは納得いかない様子でいたが、水羊羹を食べ終えたエルシャスが一緒に二階へ戻ろうとしたのを見て、


「お前は駄目だ」


 と、首根っこを掴んで引き留める。


「ねむい……」

「駄目なものは駄目だ」


 ノアフェスの物理的な制止にエルシャスは不満げでいたが、力ずくで逆らう気はないようだった。項垂れて、


「……ぐぅ」

「立ったままでも寝れるとは、もはや才能か?」


 ノアフェスはそう言って首を傾げる。


「……いや、起こすか寝かせるかしてあげたほうがいいんじゃないですか、それは」

「だが、寝てしまった。ユンファスも戻っていないのに、起こすのもな」

「ならせめて座らせるとか。立ったまま寝るのは無理があると思うんですけど」

「……うむ……器用なやつだ」

「器用とかじゃなくて……でもそういえば、ユンファス遅いですね」


 ただポットに水を入れにいっただけのはずだ。しかしそれにしては帰りが遅い。


「……見てきます」


 そう言って私が席を立つと、ノアフェスは不思議そうな顔をする。そして、エルシャスを椅子に座らせて、机に突っ伏す顔の前にクマのぬいぐるみを設置しながら、


「む? 放っておけばいいんじゃないか。突然死んだとは思えん」

「判断基準がどうかと思いますけど……」


 別に私も彼が死んだとは思いませんけれども。でも流石に水を入れにいっただけにしては遅い。

 ……先程の私の発言が間違っていた、とは思わないけれど、何か気にさわったなら話はしておくべきだろう。


 そう思って台所へ向かおうとした、その時。


「あれ。何? エルシャスまた寝ちゃったの」


 がちゃりと音を立てて台所の扉が開く。そして、ポットを片手にユンファスが私を見て不思議そうな顔をした。


「あ、はい……」

「しょうがないよねぇ、エルシャスはいつものことだし。って言いたいところだけど、今回はそうもいかないんだよね。君も護衛の一人になるんだからやる気出してもらわないと。こーら、起きろー?」


 ユンファスはポットをテーブルの上に置き、ゆさゆさとエルシャスの肩を揺さぶる。


「……やだ……」

「起きてるじゃない。一応言っておくと君が二番目に危なっかしいんだからね」


 一番目は言わずもがな私か。


「君、侍女役だよ? 一番姫に付き従っているはずの立場になるんだからね?」

「……うー」


 顔をしかめるエルシャスに構わず、ユンファスは彼の両肩を掴んで強制的に立たせた。


「姫の役に立つんでしょ」

「……んむぅ……。うん」

「じゃあサボるわけ、ないよねぇ」


 ユンファスはにっこりと笑って、こちらにも視線を向ける。


「勿論、君もね」

「……。わかってます……」


 その後のユンファスの指導は、何故かさきほどよりもスパルタ教育になった気がした。






「……いよいよか」


 ──数日後、早朝。


 私は深い緑のドレスに身を包み──正直、二度と着たくないくらいに面倒くさかったし、滅茶苦茶コルセットがきつい──、鏡の前に座っていた。


「姫、終わったよー。立って、こっちに来てごらん」


 ユンファスの手が髪から離れるのと同時に声をかけられ、私は緩やかに立ち上がる。妖精たちがいる方へ歩みを進め、立ち止まると、


「……ああ。美しいな」


 ルーヴァスの言葉に、カーチェスが「うん、すごく綺麗だよ」と頷き微笑む。


「僕が手伝ったんだから綺麗にならないわけないよね」

「へちっ、ユンファス髪の毛まで弄れるんだね! すごい」

「まあ、編み込みとかは普段から自分でもやってるし」


 というのは、私の髪型についての話である。私が髪はまともにいじったことがないと言うと──ヘアゴムでポニーテールにしたり三つ編みにしたことならあるが、仮にも一国の女王がそれではあまりにもお粗末だろう。しかも、恐らくこの世界を見るにヘアゴムと言うものはなく、リボンできちんとまとめあげられる自信などあるはずもない──ユンファスが「じゃあ僕がやってあげようか?」と言ってくれたのだ。


 かくしてユンファスの手により、私の髪は花やリボンで鮮やかに飾られ、深緑の落ち着いたドレスの効果もあってか、どうにかこうにかそれらしく出来上がったのだった。


 ──ちなみにドレスはどのようにして出来上がったのか全く知らない。作ったのではないかと思われるリリツァスに聞いても、「内緒!」の一点張りだった。


 とにもかくにも皆の協力のお陰で私は、何とかリネッカ王国の女王として出来上がったのである。


 いつものラフな服装ではないことに緊張と少しばかりの新鮮さを感じながら、全員を見回す。すると、とてとてっとエルシャスが私の元まで来た。


「……きれい」

「ありがとうございます。エルシャスも、すごく綺麗です」

「……そうなの?」


 エルシャスがよくわからない様子で首をかしげる。

 エルシャスは以前と同じく髪を黒く染め、控えめな茶色のドレスに身を包んでおり、誰がどこからどう見ても可愛い女の子になっていた。


「リリツァスのお陰ですね。ありがとうございます」

「どういたしまして!」

「……足がすーすーする」

「我慢だよエルシャス! 女の子らしくね!」

「……わかっ……かしこ、まり、ました」

「エルシャス、頑張って下さい~……」


 私がエルシャスにエールを送っていると、冷たい声が横から刺さった。


「何が頑張って下さい~、ですか。最も面倒な立場は貴女でしょう。そもそもエルシャス、ではないでしょうに」

「うっ……え、エルゼ」


 エルゼ、とはエルシャスのこと。エルシャスは妖精の男性名らしく、色々まずいだろうから、女性名を偽名として使うことになったわけだ。


 そして何故か、男性名であることは変わらないものの、ノアフェスとユンファスも偽名を使うことになり、私の頭はもはやパンク寸前である。


「ちゃんと僕らの名前も覚えてる?」

「ユリウス、と、ノアベルト、です」

「はい正解。間違って本当の名前を呼ばないようにね」

「うぅ」


 すぐにでもやらかしそうで本当に怖い。


「まああまり気を張るな。俺たちも支える」

「ありがとうございます、ノア……ベルト」

「……うむ。さて、では……そろそろ参りましょうか」


 ノアフェスはキリリと表情を引き締め、口調をがらりと変えた。


「ええ。では、女王陛下。お手を」


 ユンファスが手を差し出し、私がそれをとろうとした、その時。


「あ……、少し、待ってくれ」


 ルーヴァスがそう声をかけると、つかつかとこちらに歩み寄ってきた。


「……ルーヴァス?」

「我々は共に行けないからな。せめて、これを持っていくがいい」

「……何ですか、これ?」


 ルーヴァスに手渡されたのは、米粒よりさらに小さなキラキラと光る透明な粒がいくつも詰められた、小指の先程の大きさの小瓶だった。


お守り(タリスマン)だ。もしものことがあった時に、あなたを助けてくれるだろう」

「……ありがとう、ございます……」


 私が受け取ると、ルーヴァスは少しだけ微笑んで、下がった。


 そして、


「さあ、では行きなさい。あなたの国へ」





 そうして“家族”に会う為、私は皆の協力の元、迷いの森を発った。

はいこんばんは。

天音です。


……うん、何ヵ月ぶりかな?


久々の投稿です。

まあ今年、というかこれからは昨年よりだいぶ更新できると思っているのですが。


いやあ、7000文字越え!

今回更新をさぼっていただけあってそこそこの文字数になりました。

そして次回から、ようやっとリネッカ王国からコーネリア帝国の方へと旅立つわけですが。

まあ、ある程度は騒ぎを体験してもらいましょう。はは。



さてさて、一応本日はちょっといい告知がありますので、更新が遅れたのを許してくださいね……



以前言っていた、短編小説の販売。

まあ、紙ではなくPDFでの販売ですが――まあ紙にするとバカ高いので、ここはお許しください――正式に決定しました。


と言っても、以前言っていたような設定集やらイラスト原案等は今回は割愛し、純粋に短編のみとなるのですが(ちなみにあのsample通りの話になるとは誰も言っていない。てへ)。

1キャラクターにつきおおよそ1、2万文字を考えてはいますが……まあ、僕のことですので、あてになりません。大体長くなる。あは。

価格の方は300円程度かなと考えてはいますが、文字量によりますね。


まあ、もし気になったら手に取ってやってくださいまし。時間つぶしくらいにはなるでしょう。きっと。多分。maybe。








っていう嘘をね!

まあ、エイプリルフールですからね!

毎年のことですよね!

例え読者の方が読む頃には四月一日でなくても!


あ、睨まないでください、これは恒例のままてんイベント……



というわけで、散文ながら本日はこれにて。





















という嘘。



出します。

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